2009年9月7日3時1分
宗教家が100万円で販売した「ご神体」。上面に自分のDNA情報を入力したとされる電子チップがはってある
「病気が治る」と称し、自分のDNA情報を添付したとする「ご神体」という置物を販売して得た所得を申告しなかったとして、金沢市の宗教家の男性(62)が金沢国税局から約10億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。重加算税を含む追徴税額は約5億3千万円に上るという。非課税となる宗教法人の所得を装ったと認定されたとみられる。
宗教家らによれば、「ご神体」は高さ約30センチ、幅約10センチの柱状のクリスタル製。04年に製作し、1体あたり100万円で国内や香港、シンガポールなど海外の信者らに計約1100体を販売した。
宗教家を身近に感じられるようにと信者たちが考案。宗教家の口の中の粘液から解析したDNA情報を電子チップに入力し、接着剤で「ご神体」の上面にはり付けたという。1体あたりの原価は本体が約3万7千円、チップが約8千円だが、宗教家らは「東京の分析機関にDNA解析を依頼した費用が数千万円かかった」と話している。販売した約6割の代金は未回収だという。
信者の一人は朝日新聞の取材に対し、「ご神体は先生(宗教家)の分身で、触ると先生のエネルギーが伝わり、免疫力が高まって病気が治る。値段は信者で決めた」と話した。
宗教家は06年春ごろから、宗教法人の買収を計画。同年夏、買収交渉をしていた京都府内の宗教法人の「門主」名義で預金口座をつくり、「ご神体」や宗教家の写真などの販売収入の振込先にしたが、実際は買収しなかった。
このため金沢国税局は、非課税となる宗教法人の公益事業による収入とは認められず、諸経費を除いた数年間の所得約10億円について、宗教家の個人所得として税務申告すべきだったと指摘。宗教法人の所得を装った悪質な所得隠しと認定したとみられる。所得の大半が「ご神体」の販売によるものだったとされる。