新型発生初期の「症例定義」は必要だったのか
「検疫や『症例定義』が邪魔をしたのではないか」―。新型インフルエンザ発生初期の4月下旬、厚生労働省は「確定例」や「疑い例」の判断基準を盛り込んだ「症例定義」を都道府県などに通知したが、検疫を除く国内初の感染者となった神戸の高校生に海外渡航歴はなく、まん延地域への滞在や旅行歴を疑い例とした定義には当てはまらなかった。このため、医療関係者の中には同省の初期の対応を疑問視する声もある。9月5日に開かれた日本医師会主催の市民公開講座では、出席した正林督章・新型インフルエンザ対策推進室長に対して厳しい質問が飛んだ。
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公開講座は、「新型インフルエンザ(H1N1)の教訓〜感染拡大を防ぐ〜」と題し、国立病院機構三重病院の庵原俊昭院長、北里大医学部衛生学公衆衛生学講師の和田耕治氏、日医の飯沼雅朗常任理事、正林室長の4人がシンポジストとして参加。新型インフルの発生の経緯や感染予防などについて、それぞれの立場から意見を述べた後、約20分間の質疑応答を行った。
この中で開業医の男性は、「検疫や症例定義が邪魔をしたのではないか。最初の神戸の感染者も、症例定義が非常に邪魔になったと考えている。また、発熱外来が機能しなかったという問題もある。保健所も人員不足で十分に動いていない」と指摘し、正林室長に意見を求めた。
これに対して正林室長は、▽感染症法に基づいて患者を強制的に入院させること▽新型インフルの患者数を把握すること―の2点を指摘し、「症例定義は決めざるを得なかった」と主張。発熱外来については、行動計画上は鳥インフルエンザ(H5N1)を念頭に置いていることを認めた上で、「しかるべき感染防護措置が取れている場所をあらかじめ指定しておけば、待合室で感染を広げないで済むだろうという発想だった」と説明した。また、保健所に関しては、都道府県職員であることなどから、「厚生労働省の職員の立場からすれば、できる限り保健衛生は守りたいので、各自治体で保健所の職員を増やしていただけたらと思う」と述べた。
一方、勤務医の男性は「(簡易検査で)陽性が出ればタミフルを処方するが、陰性で翌日にまた来てもらっても、再び陰性になることもある。統一基準を出してもらうことはできないのか」と質問。これについて正林室長は、「今回のインフルエンザの場合、発症2、3日目でも(簡易検査で)陽性にならない場合がある」とした上で、「(検査結果が陰性でも)状況から考えて新型インフルエンザの可能性が高い場合、個々の先生の判断で新型インフルエンザとして診療することもあると思う。その状況によって対応が全く異なるため、何らかの基準をつくるのは非常に難しい」との考えを示した。
更新:2009/09/07 12:59 キャリアブレイン
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