2009年09月02日
今回はフジテレビ開局50周年と手塚治虫生誕80周年を記念したアニメ大作「ジャングル大帝」を試写。声優初挑戦の時任三郎、松嶋菜々子ら豪華キャストを迎え、脚本は人気放送作家の鈴木おさむが担当。原作の手塚ワールドに新たな要素を盛り込んで、家族の愛や友情、環境破壊への警鐘を描く。
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すっきりと、わかりやすい物語展開を楽しみながら、あれこれ考えた。環境破壊、人類と動物の共存、地球の未来…。いっぱい思いが巡る。
マンガ、アニメで数々の名作、傑作を描き出した手塚治虫の代表作の一つ「ジャングル大帝」。フジテレビで最初に放送されたのは、1965年。本格的長編カラーアニメシリーズとして日本で初めて放送した当のフジテレビが今回、近未来の世界という設定で、新たに作品化したものだ。
地球環境の悪化で、森が消え、人間は新たに人工の「ネオジャングル」を作った。多くの動物たちを移し、監視して、体調を管理した上で過ごさせる。動物たちは不満も感じているが、白いライオンの王、パンジャは他に暮らしやすい場所がない以上、ここを新しいジャングルとして生きていこうと考える。その子レオと、動物の言葉のわかる少年が出会い、自分たちのことばかり考える人間たちと向き合う…。
パンジャの時任三郎、妻エライザの松嶋菜々子ら、声優陣が合っている。ドルフじいさんの小倉智昭もいい味を出している。
総選挙が終わった直後、政権交代へと進む喧騒の中にある今というタイミングだからだろうか。レオの成長、それを一歩引いて見守るパンジャの姿を見ていて、子どもたちの未来、社会を率いる真のリーダー、父親とは、本当の勇気とは、本当の強さとは…と、今の日本に引きつけて、見てしまう。
うんと真面目に言えば、不況で、ジャングルがごとき弱肉強食の様相を呈する世界の中、大切な人とともに安全、安心に生きていくとはどういうことか。手塚さんの思いを根底に据えつつ、今日性を持って訴えかけているように映った。
そのような形で新たな作品が生み出されたことに、あらためて、手塚治虫という土俵の広さ、幹の太さを感じる。
(秋山衆一)
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■番組公式サイト→「ジャングル大帝」