新たな収益源を模索する動き……揺れ続ける新聞業界
広告や部数の減少などを背景に、米国と日本の新聞業界に“逆風”が吹いている。新たな収益源を模索するため、携帯電話や専用端末への配信など、有料サービスを構築する動きが本格化しそうだ。
景気後退による広告の激減や無料インターネットサイトでのニュース閲覧の普及による部数減などを背景に、米国と日本の新聞業界が揺れている。頼みのネット事業の飛躍を目指し、携帯電話や専用端末への配信など有料サービスの構築を模索する動きが本格化しそうだ。
厳しい経営環境
フィラデルフィア州を中心に20の新聞を発行するジャーナル・レジスター、イリノイ州で59紙を発行するサンタイムズ・メディア・グループなど今年に入り、米国では地方紙の経営破綻(はたん)が相次いでいる。
大手紙も例外ではなく、ニューヨーク・タイムズは今年1〜3月期決算で7446万ドル(約72億円)の最終赤字に陥った。今月上旬、傘下のボストン・グローブ紙の廃刊を見送る一方、社員の給与カットなどさらなる経費削減に乗り出す方針を決めるなど、業績悪化の流れに歯止めがかからない。
国内では全国紙5社のうち、朝日新聞社と毎日新聞社が単体業績で営業赤字に転落、毎日新聞は最終損益でも15年ぶりの赤字となった。日本経済新聞社の場合、景気悪化で経済情報を求める読者が増え、「部数は堅調」(広報グループ)だったものの、広告収入の落ち込みで利益を減らした。産業経済新聞社も、夕刊フジやサンケイスポーツの販売部数減少が響いた。
業績悪化の理由は、広告収入の激減にある。電通によると国内の新聞広告市場は2000年の1兆2474億円をピークに減少。昨年秋の金融危機をきっかけに、企業が広告出稿を抑制したことで08年には前年比12.5%減の8276億円に落ち込んだ。
新たな広告収入を見込んだネットのニュース配信も広告単価が下がり、着実に収益をあげるには至っていない。
“起死回生”を目指す各社が力を注ぐのは、有料の記事配信が簡単な携帯電話向けの記事配信だ。朝日新聞はテレビ朝日、KDDI(au)と共同でニュース配信サービス「EZニュースEX」を11日に開始。自社サイトで約70万人の会員数を2〜3年後をめどに1000万人まで増やす計画だ。
日経新聞は1月、日経産業新聞の携帯サイトを月額利用料2100円で立ち上げたほか、産経新聞も米アップルの「iPhone」向けに新聞全体の電子データを配信するサービスの有料化を検討している。
米で安く端末提供
米国での報道によると、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどは、長期の購読契約を前提にアマゾン社の開発した「キンドル」と呼ばれる電子端末を廉価に提供するサービスを今夏にも始めるという。
こうした取り組みについて、野村総合研究所情報・通信コンサルティング部の阿波村聡主任コンサルタントは「単に紙媒体をネットに置き換える意識では小さなパイを奪い合う」と指摘。専門性の高い情報に、別途情報料を徴収することや、記事に対応した携帯広告の配信など複合的な収益モデルが不可欠としている。
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