県内最大の自民党支持団体の県建設業協会は、知事選で党推薦の小幡政人元国土交通事務次官だけでなく、当選した橋本昌知事にも推薦を出した。党の顔を立てる一方で「選挙に負けたら、この業界は飯が食えない」(業者の一人)という事情を満たす策でもあったが、「建設業は自動的に自民党」という時代ではないことを示すことにもなった。
「県を借金まみれにした」。自民党県議と30年付き合いのある60代の水戸市の業者は橋本氏を強く批判し、小幡氏を支援した。
ただ、業界内の様子は今までの選挙とは全く違った。山口武平県連会長が主導した候補者選定過程や、その後の県連執行部の選挙戦術などをめぐり、自民党への不信感が広がっていた。
自身は小幡氏支持を貫いたが、選挙が終わった今、「オレはどこまで言っても自民党なんだけど、今回は橋本さんと武平さん、どちらにも降りてほしかった」と漏らす。選挙戦を通じて自民党と距離を置きたいと感じた様子が見て取れた。
常陸大宮市の業者は衆院選4区で民主党の高野守氏を公然と支援。高野氏は自民党の梶山弘志氏には及ばなかったが、得票率で約3ポイントの約7000票の差まで迫り、比例代表で復活当選した。
業者は「もともとの自民支持層が、過疎化が進む選挙区の活性化に有効策を打ち出さない党に不満を持ち、予想以上に差が縮まった」と見ている。
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「相手は4年間、選挙区内をくまなく回ってた。目に見える人間か見えない人間かだったら、見える方を選ぶよね」
県内の衆院全選挙区で自民党を支援した農協幹部は、自ら入った3区で農協票が民主党の小泉俊明氏に流れたことを認める。
小泉氏が農家の不満を受け止めるために開いた集会。当初20~30人だった参加者が選挙直前には100人を超え、小泉氏は「やっとみんな声を出して『民主支持』と言えるようになった」と手応えを語っていた。
公明党は8月20日、1区で渋っていた自民党の赤城徳彦氏への推薦を出した。直前に農協政治連盟が1区のみで公明党の比例候補を推薦する異例の手続きを取っており、「事実上のバーター」と受け止められた。にもかかわらず、赤城氏は農村部でも民主党の福島伸享氏に負けた。赤城氏や自民党への不満から、農協内がまとまらなかったことがうかがえる。【高橋慶浩】
毎日新聞 2009年9月6日 地方版