横浜市都筑区の交差点で6月、女性看護師3人が乗用車同士の衝突の巻き添えで死亡した事故から3カ月。遺族ら約50人が5日、事故現場や周辺で、車を運転していた私立大1年の少年=自動車運転過失致死傷罪で起訴=に対し、より法定刑が重い危険運転致死傷罪の適用を求める署名活動を行った。
市営地下鉄センター南駅前では、そろいの黄色いポロシャツ姿の遺族らが横断幕を背に署名を呼びかけた。夜勤明けで参加した元同僚の女性看護師もいた。
亡くなった加藤智子さん(43)の義兄、可児直行さんは「検察庁の消極的な判断で、この事故が危険運転(致死傷罪)にならなかったら、悪例を作り後に続く人たちも同じ思いをする」と訴えた。集まった署名は横浜地裁などに提出する。
99年11月に同罪導入のきっかけになった東名高速道のトラック追突事故で娘2人を失った、千葉市の井上保孝さん夫妻ら交通事故遺族も協力した。01年12月に飲酒運転の車に娘(当時19歳)をひき逃げされた正林信子さん(59)は「事故で気持ちの整理がつかない時、井上さんが精神的にも支えてくださった。他の方も支えてあげられたら」と話した。
署名した都筑区の会社員、白井博さん(61)は「一般の人の感覚に沿うように(法律を)見直すべきでは」と話していた。
署名活動は6日も午前10時から行う。署名用紙は可児さんのホームページ(http://nkani.ecnet.jp)でも入手できる。【山田麻未】
横浜地検は7月、少年の供述などから「ことさら赤信号を無視したと認定するのは困難」と判断し、危険運転致死傷罪での起訴を見送った。
遺族や県警によると、少年は事故当時、赤信号で止まっていた車を追い越し、時速約70キロで交差点に進入した。免許取得後1カ月で、数日前に右足の指をけがしたため、左足で車のペダルを踏んでいたほか、サンダル履きで運転していた。
可児さんら遺族は、こうした運転時の状況を悪質として、少年の逮捕時から「これが危険運転でなければ、何が危険運転に当たるのか」と同罪の適用を求めてきた。
県警も3人が死亡するという結果を重くみて捜査してきたが、捜査幹部は左足での運転などについて「危険運転致死傷罪の要件には結びつかない」と、同罪適用の難しさを指摘する。今後の裁判については「普段と違う状況で運転していたことは、情状面で悪質とされる可能性はあるだろう」と話している。【中島和哉】
毎日新聞 2009年9月6日 地方版