2009年7月10日6時9分
民主党は、北方領土問題で従来採ってきた「早期一括返還」の方針を軟化させ、ロシアが四島は日本に属すると認めれば段階的返還などもありうるという政府の姿勢を引き継ぐ方針を固めた。早期一括返還を求めるだけでは事態の打開は難しいためで、鳩山代表の意向をふまえて柔軟姿勢を採ることにした。
政府の方針は「四島の日本への帰属が確認されれば実際の返還の時期や態様については柔軟に対応する」(3月の麻生首相の国会答弁)というもの。一方、民主党の09年版政策集の原案には、これまでと同様「早期一括返還」と記されており、政権交代すればロシアとの交渉がいっそう厳しくなる可能性があった。
だが、鳩山代表は7日の記者会見で「四島の主権を認めることを前提に、返還がどのような形になるかは柔軟であって結構だ。政府とそれほど変わりがない」と発言。5月の代表選での公約でも「全面返還を目指す」と記すにとどめており、政策集の表現も変わる可能性がある。
鳩山氏は北海道選出で、祖父は56年に日ソ国交回復を実現した鳩山一郎首相。北方領土問題では、北海道で民主党が選挙協力する新党大地の鈴木宗男代表とも連携する。鈴木氏も現政府と同じ立場から鳩山氏に助言しており、「(鳩山氏は)『鈴木さんの考えでいい。現実的で弾力的な交渉しかない』と言ってくれている」と語っている。
ただ、鈴木氏が自民党にいた当時、二島先行返還を唱えたことに外務省内で反発が起き、対ロ交渉が混乱した経緯がある。民主党政権が実現した場合、鳩山氏が鈴木氏をどう処遇するかも焦点となる。(松田京平)