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【経済】

補正の6割 交付決定済み 民主の凍結方針に省庁困惑

2009年9月5日 朝刊

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 経済対策の一環として、政府が二〇〇九年度補正予算に約四兆三千億円を計上した四十六の基金の行方が不透明になってきた。民主党は「無駄な支出が含まれている」として一部の執行を凍結して公約実現の財源へ充てる方針だが、約六割に当たる約二兆五千億円は既に地方自治体や関係団体へ執行(交付決定)済みとみられ、各省庁は対応に苦慮している。 (小松田健一)

 民主党が特に問題視するのは、職業訓練や生活費給付で失業者を支援する「緊急人材育成・就職支援基金」(七千億円)と、別の農家へ農地を貸し出した農家に助成金を支給し、農業生産の効率化を図る「農地集積加速化基金」(二千九百七十九億円)。だが、両基金とも全額の交付を決定済みだ。

 民主党は緊急人材育成・就職支援基金について、実施主体の「中央職業能力開発協会」が厚生労働省所管の団体で、天下りを受け入れていることをやり玉に挙げる。しかし、既に一部の訓練者へ生活費を給付するなど制度は始動しており、厚労省は「雇用対策という観点からぜひお願いしたい」(水田邦雄次官)と、継続を強く求めている。

 民主党は、農地集積加速化基金も「農家の所得を改善しない限り農地集積は進まず、効果が乏しい」と批判するが、農林水産省は八月二十五日、受け皿団体の「全国担い手育成総合支援協議会」へ全額を交付済み。今後は市町村を通じて農家へ支払う予定で、取り消しとなれば混乱が生じそうだ。

 経済産業省は所管する四つの基金(計千四百二十億円)すべての交付を決めた。このうち、八月二十一日には中小企業の資金繰り支援を目的にした「第二種信用基金」の二百五十億円全額を関係法人へ支払った。

 補助金適正化法には交付決定を取り消すことができる規定があるものの、今回のケースが該当するかは不明。経産省は「国が約束を破ることになる」(会計課)と戸惑う。農水省の井出道雄次官も「財務省が方針を示さないと軽々には(執行停止を)できない」と、同省の判断を仰ぐ構え。

 財務省は民主党の意向を受け、現時点の執行状況を調査する一方、執行を停止したり、返還を求める場合にどのような問題があるかの検討に入った。同省幹部は「常識として国会の議決を経て相手へ渡した金を、やっぱり返してくれとは言えない」と、思わぬ難題に困り顔だ。

 

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