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北放流水難事故:「水攻め」で韓国側に圧力か(下)

 北朝鮮の今回の措置は国際法にも触れる。97年の国連総会で採択された「国際水路の非航行利用に関する条約」は「特定の水路国が他の水路国に不利な効果を与えるような措置を取ったり、それを許可する場合には、必ず適切な時期に事前通知を行わなければならない」(第12条)「損害が発生した場合には被害を与える状況を除去し、補償を行うため、被害国と協議を行わなければならない」(第7条)とクギを刺している。国連に加盟する北朝鮮は当然この条約の適用を受ける。

 だとすれば、北朝鮮はなぜとんでもないことをしたのか。大統領府(青瓦台)関係者は「最近北朝鮮はあらゆる融和攻勢を取ったが、非核化優先という韓国政府の『原則』が揺るがなかったため、新たな圧力カードを取り出した可能性がある」と指摘した。また、国策シンクタンクの研究員は「北朝鮮が『ミス』によるものだったとして、今後の防止策に関する交渉や(対策を講じるための)何らかの代価を求めてくる可能性も排除できない」と分析した。

 京畿大の南柱洪(ナム・ジュホン)教授は「北朝鮮内部は足並みがそろっていない印象がある。離散家族再開を契機として、コメや肥料を求めようとする北朝鮮が水攻めで人を殺すというのはタイミングが合わない。金剛山の観光客銃撃事件のように北朝鮮内部の意思決定過程に乱れがみられる」と語った。北朝鮮のダムは民間ではなく野戦軍が管理しているため、「軍の訓練過程で突然放流が必要な状況が生じたのではないか。該当地域の軍による突発的な決定だったことも考えられる」(韓国軍消息筋)との見方もある。

 ダムに技術的な問題があった可能性も指摘されている。韓国政府筋は「黄江ダムは07年10月から貯水を開始したが、ダムに水を満たしたところ、亀裂などの問題が見つかり、補修のために放流を行った可能性もある」との見方を示した。

 韓国政府関係者は「北朝鮮のダムに異常がないかどうかはもちろん、北朝鮮が故意に放流を行ったのかどうかなどあらゆる状況を排除せず、鋭意注視している。金剛山での観光客銃撃事件に対する公式謝罪がない状況で、再び民間人に被害が出ており、北朝鮮は放流の原因に関する説明と謝罪を行うべきだ」と語った。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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