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【社説】北朝鮮はダム放流前に電話1本できないのか

 6日深夜から臨津江の水量が突然増え、川べりでキャンプをしていた6人が水に流され、行方不明になるという事故が発生した。事故当時雨は降っていなかったが、水位が突然2メートル以上も高くなったという。臨津江の休戦ライン北側にある北朝鮮のダムが、何の予告もなく突然放流を行ったのが原因とみられている。

 北朝鮮には現在、臨津江上流に「4月5日ダム」と「黄江ダム」の二つのダムがあり、とりわけ黄江ダムは貯水量が3億トンから4億トンに達する大型ダムだ。これまで北朝鮮がこれらのダムから水を放流し、韓国側で被害が発生したことは5回ある。幸い過去には漁具の損失などでとどまっていたが、今回はついに心配されていた人命被害が発生してしまった。

 北朝鮮は事故が発生するたびに「自然に水があふれ出した」とか、「貯水量の調節を行うため」などと説明してきた。いずれにしても、韓国側に事前に知らせることぐらいはできたはずだ。南北は2005年、北朝鮮がダムを放流する際には事前に通知するとの点で合意に至ったが、これはそのときだけだった。1年後の06年にはまたも予告なしに放流が行われた。

 今回も、北朝鮮がダムを放流する前に事前に連絡していれば、行方不明者が発生するような事故は防ぐことができたはずだ。あらかじめ連絡することは難しいことではない。現在、南北で利用可能な電話は一つや二つしかないわけでもない。つまり故意であれ無神経であれ、自分たちの行為で韓国側にどのような被害が出るかについて、一切の考慮をしていないと考えざるを得ない。

 1997年の国連総会で採択された「国際水路の非航行利用に関する国連条約」では、隣国に被害が及ぶ可能性のある措置を行う場合には必ず事前に通知しなければならず、もし実際に被害が発生すれば、賠償などを行うために被害を受けた国と協議しなければならない、と明記されている。ところがこれまで北朝鮮は事前に通知を行ったことはなく、損害賠償のための話し合いに応じたこともない。

 臨津江にある北朝鮮のダムは発電用というより、本来の水の流れを別の地域に振り向けて利用するためと考えられている。水路を意図的に変更することも明らかな国際法違反だ。北朝鮮でダムが建設された影響で韓国側に流れ込む水量は大きく減少し、漁業関係者は大きな被害に苦しんでいる。韓国政府も、6人もの行方不明者が出た今回の事故については、北朝鮮に対して国際法に違反する行為を見過ごすことはできないとの点をはっきりと伝える必要がある。また南北で流れる臨津江と北漢江の管理について、北朝鮮側と協議の場を設けることも必要だろう。

 北朝鮮が放流を行ったことに何らかの意図があるのかについては、今のところ断言はできない。しかし黄江ダムと北漢江上流にある金剛山ダムが同時に大量の放流を行った場合には、軍事的な意味合いも当然持つようになる。幸い金剛山ダムの放流による水量の増加に備えた「平和のダム」はすでに完成しており、また黄江ダムの放流に備えたクンナムダムも来年中に完成する。政府は北朝鮮がいかなる行動を行ったとしても、それらに対応できる万全の備えをしておかなければならない。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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