本書の著者は、北海道及び東京で公立小・中学校の教諭、教頭、校長を歴任し、平成八年からは埼玉県の私立狭山ヶ丘高校の校長を務めてゐる。また民間教育臨調の協力委員も務め、マスメディアにもよく登場してゐるので、御存じの方も多からう。 氏は本書の中で、子供たちや教育者の意識の問題のみならず、義務教育制や六・三・三制など教育制度面、教育基本法など法律面の問題に亙って論を披瀝してゐる。長年教育現場でさまざまな問題に直面し、それに取り組んできた氏の言葉には重みがある。氏は単に現場の立場から、教育現場を正常化させることのみを考へてゐるのではない。「我が国を強力な平和国家として存立させ続けるだけの教育力を回復させたい」との一念で教育の再生に取り組んでゐるのである。 「人は生まれながらにして人間であるのではない。周囲のすべての方々の優しさ、厳しさに包まれて『人間にして頂いた』のである。『人間になるのではなく、人間にするのだ』という根本理念を見失ったところに戦後の教育荒廃は始まった」とは氏が本書の中に記してゐる言葉である。過去をネガティブにしか顧みない、根本理念を見失った教育がおこなはれてゐる以上、道義国家日本の再生はあり得ない。本書は教育に携はる方々のみならず、多くの方々にぜひとも手にとって戴きたい一冊である。 〈1680円、明成社刊。ブックス鎮守の杜取扱書籍〉 (神社本庁録事・平尾朝典)
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