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売れる「わが闘争」漫画版 苦言も「歴史資料」の声も(1/3ページ)

2009年9月6日7時30分

写真:「わが闘争」のほか、「蟹工船」や「破戒」などが「まんがで読破」のシリーズになっている。編集者の円尾公佑さん「わが闘争」のほか、「蟹工船」や「破戒」などが「まんがで読破」のシリーズになっている。編集者の円尾公佑さん

 独裁者アドルフ・ヒトラーの著書「わが闘争」。この漫画版が日本で発行され、売れている。いまも出版が禁じられているドイツには批判の声もあるが、出版元は「内容を検証してほしい」と話す。これまでも知る権利や民族的配慮をめぐって議論が起きたいわくつきの本だが、再び論争の種になりそうだ。

 漫画版「わが闘争」は、出版社イースト・プレス(東京都)が昨年11月、古典作品を漫画化する「まんがで読破」シリーズの一つとして発行した。原作を基に構成とセリフを編集者が考え、作画は制作会社に発注。ヒトラーの生い立ちからナチス結党、「わが闘争」執筆までの経緯と反ユダヤの主張が、190ページの劇画で描かれる。

 編集担当の円尾(まるお)公佑さん(32)は「有名な本だが、読んだ人は少ない。どんな思想があれほどの悲劇を生んだのか、『悪魔』で片付けられるヒトラーの人間の部分を知る材料になると思った」と企画の理由を話す。「人間失格」「ファウスト」「資本論」などが並ぶ全43作のシリーズの中では異色。「売れると期待していなかった」が、わずか半年で、シリーズの平均部数3万5千部を上回る4万5千部が売れた。「これまでに出版を批判する声は直接届いていない」という。

 海外メディアも注目し、昨年末以来、英BBCや米CNNなどが報道した。フィナンシャル・タイムズ・ドイツ版で2月に記事を書いた東アジア特派員、マーティン・コリングさんは「漫画化はリスクはあるが、新しい発想。多くの人が手に取り、批判的に検証することは意義がある」と一定の評価をする。

 ただ、ネット上などでは「出版は無神経」「ネオナチを喜ばす」「有害図書扱いはかえって魅力を生む」といった賛否の議論も起きている。

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