この人物のオモテとウラ　「昼の顔」卒業

●今後は長女とともに本業復帰？

　テレビ朝日の昼の情報番組「ワイド！スクランブル」（月〜金曜午前１１時２５分）の司会を務める大和田獏（５８）が、今秋で番組を卒業する。１９９８年１０月から大下容子アナウンサーと共に２代目司会者に就任、１０年以上にわたって“お昼の顔”として活躍してきた。

　記念すべき第１回放送が、和歌山毒物カレー事件の林真須美の逮捕という緊急ニュース。当時、本人は「もう無我夢中で初っぱなから生放送の洗礼を受けました」と苦笑していた。「話がきた時に本当に僕でいいのかと。実は司会を始める前はワイドショーのイメージは好きじゃなかった」とも。

　舞台やドラマで幅広く活躍していた大和田に、司会者として白羽の矢が立ったのは、女優・岡江久美子との理想的な夫婦像と、温かな雰囲気を買われたから。その狙いはズバリ的中。それまで迷走を続けていた同局の昼枠が、主婦層の取り込みに成功し、視聴率１０％前後を記録。フジテレビ「笑っていいとも！」（月〜金曜正午）、日本テレビ「午後は○○おもいッきりテレビ」（当時、月〜金曜正午）の２大ライバルを超える日もあった。

　大和田は５０年生まれ。福井県敦賀市出身で敦賀の実業家大和田荘七の子孫にあたる。名古屋市立大学経済学部卒業。大学では学生演劇をやっていたが、テレビ制作志望だった。ＣＢＣ（中部日本放送）の試験を受けられることになり、紹介してくれた方への挨拶で局まで出向いた時に、たまたまドラマのプロデューサーを紹介され、トントン拍子に昼ドラに出演。ところが肝心の就職試験に落ちたため、局の人から「役者をやりなさい」と、東京のプロダクションを紹介されたのだという。

　芸名の「獏」は、作家の花登筺さんに「人に夢を与えられる役者になれ」という意味で付けてもらったもの。７６年、東宝映画「あにいもうと」で映画デビュー。７８年からＮＨＫ「連想ゲーム」に岡江らと出演して人気を博し、７９年テレビ朝日のドラマ「いのち燃ゆる日々」で岡江と再び共演、それがきっかけで交際開始、８３年結婚、長女誕生。その長女も最近は舞台で活躍している。

　順風満帆に見えるが、上京して事務所に入って間もない頃、いきなりホサレた。「番組の改編期に社長に軽い調子で“今度の番組は何？”って聞いたことが怒りを買ってしまったんですね。“次はありますか？”でしたね。決して甘く考えてたわけじゃないけど、慢心してたんでしょうね」（かつてのインタビューより）。その後社長と連絡が取れなくなり、大和田が詫（わ）びを入れてやっと許してもらえたという。

　尊敬している役者は故・山岡久乃。３０代の頃、舞台「幸福」で共演した時に褒めてもらいたくて「なにくそ」と食らいついた。公演後、その山岡に「よかったわよ」と声をかけられ、うれしかったという。

「亡くなった時は本当にがっくり。お葬式がちょうど『ワイド！スクランブル』の生放送と重なって出席できず、スタジオからお悔やみの言葉を伝えたことが思い出されます」（同）

　昼の顔として定着し貢献度も高い大和田が、番組を去るのは寂しい限り。

「長い間お疲れさまでした」と言いたい。

（日刊ゲンダイ2009年9月2日掲載）