カナロコ鉄道ノート
かながわの鉄道をもっとおもしろく―。鉄道をこよなく愛する神奈川新聞の記者が、神奈川にゆかりのある鉄道の話題を紹介します。2006年秋から続いた「鉄道ブログ」をリニューアル。コラムだけではなく、現場の取材や体験をもとにした、より読み応えのある特集記事をお届けします。更新は毎月2回程度の予定。記者たちの鉄道ノートがつむぐ「読み物」をどうぞお楽しみください。
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ナンダロ標識、なんだろね
「流れるぞ!」
この標識(写真)は何でしょう。
JR桜木町駅の上下線ホームの間にある中線(2・3番線)。京浜東北線や横浜線の桜木町行き電車がここで終着となり、そのまま折り返していく。写真で言えば、右側から入線してきた電車が、左側の線路を伝って上り線に戻っていく。標識は、そのホーム(2番線)の横浜駅寄りの端に、針金でくくりつけてあります。
長さ1メートル近い鉄板で、白地に赤いペンキ。「流れるぞ」という文句はいかにも散文的、直情的。厳格さと歴史性に裏付けられた数々の鉄道標識の中では型破りです。ところが、言葉は分かりやすくとも、意味するところはよく分かりません。
あるとき、通りかかった運転士さんに聞いてみました。
「何が流れるのですか」
「ブレーキが甘いと電車が動く心配があるんです」
どうやら、この折り返し線は水平(L=レベル)ではなく、少し勾配があるらしいのです。制動が効いていないと電車が自然に動き出す恐れがある。実際、そんなことがあっては困るけれど。
JR東日本横浜支社の説明では、上り方向に3・5パーミル下がっていて、その注意喚起のために国鉄時代から取り付けられているのだといいます。もちろん正規の標識ではありません。
では、そんな注意喚起の看板が、なぜ横浜駅寄りのホーム端にあるのでしょうか。制動確認を運転士に呼び掛けるなら電車到着時が肝心なのだから、標識も反対側、つまり関内駅寄りの車両止めの方にあるべきではないでしょうか。
同支社によれば、運転席のキーはブレーキが掛かった状態でないと抜けない仕組みだから到着時は大丈夫だそうです。「流れる」心配はむしろ、その後。運転士が折り返し先頭車となる最後尾車両に移ってきて、出発の準備をするときに油断が生じがちになるというのです。
写真左側には停車中の電車があります。ぴくりともしません。本当に「流れ」たりするのかなあ。いつもそう思います。
もう一つ。
今度の写真にはいろいろな標識が並んでいますが、それらの中で、「よいか」と読める縦書き看板があります。字が薄くなって読み取りづらいのですが、その上に「特通」と朱書されています。つまり「特通よいか」というわけです。これも、なんのこっちゃ。
設置場所はJR東神奈川駅の横浜線発着ホーム(2番線)で、大口駅寄りの先端にあります。赤枠で囲んで、さも大事そうな呼び掛けですが、「よいか」と言われてもこっちには分かりません。
あるとき、通りかかった車掌さんに聞いてみました。
「何がよいというのですか」
「さあ、私は運転士ではないので知りません」
同支社の説明。横浜線の電車が快速運用となって出発する際に、運転士に「特快通過」なるボタンを押すよう促す標識なのだそうです。
横浜線の205系電車は各駅停車と快速の二つの種別をこなしていますが、各駅停車と快速の運用では当然、踏切などの通過スピードも違ってくる個所があります。その違いの出ることをあらかじめ運行システムに知らせておく必要があるといいます。
それが運転席にある「特快通過ボタン」。なんでも、押し忘れると踏切通過の際に不具合を起こして電車が止まる場合もあるとかないとか。大切な動作とあって関係者が万全を期して設けたもの。だから、これも正規の標識ではありません。
うーん、そう言われてもピンとこない。どなたかご存じの方がありましたら「特快通過ボタン」の意味と仕組みを教えてください。
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さとたか
[2008/01/26 09:38:27]
些細な指摘ではありますが、「運転手」ではなく、「運転士」と書いてくださいませんでしょうか。
新聞記者さんには正しい呼び名にしていただきたいと思います
さきがけ
[2008/01/26 22:49:46]
確かに運転士ですね。
意味合いも運転手と運転士では大きく違いますね。
>新聞記者さんには正しい呼び名にしていただきたいと思います
よく人身事故や踏切事故で電車にひかれるとか電車がひいたとありますが、その表現があっているのかどうか気になります。
福江裕幸
[2008/01/28 14:29:56]
ご指摘、ありがとうございます。決して些細なことではありませんね。
うっかりでした。頭からその言葉がなぜか、ぽかっと抜けていました。恥ずかしい。
早速「運転手→運転士」と本文を訂正させていただきました。
闇夜の黒猫
[2008/01/28 17:29:17]
例えば、快速通過駅の脇に踏切がある場合、各停なら駅に到着してから遮断機を下せば良いが、通過の場合はかなり前から下ろさないとならない。駅ホームの到着・通過表示も変えないとならない。それを制御するシステムにおいて、今度通る車両がどちらかを切り分ける為のスイッチ・・かと思います。操作を間違えると、快速なのに、各駅にとまらないとならない羽目になる場合もあるかと思います。
福江裕幸
[2008/01/28 18:10:49]
闇夜の黒猫さん、ヒントをありがとうございます。
私もそう考えます。
そのボタンは見たことありませんが、支社の説明では、プッシュホンのように並んだボタンのうちの一つとか。押し忘れって皆無なんでしょうか。
さとたか
[2008/01/28 21:21:49]
福江裕幸様
差し出がましい指摘で失礼しました。
「運転士」という職名に使命感と誇りをもっている人も多数おりますので、あえて書かせていただきました。ありがとうございます。
福江裕幸
[2008/01/29 19:21:58]
ブログって新聞づくりの現場と違って校閲セクションを経ないこともあって、自らのジやら、不勉強やら、うっかりやらがそのまま出てしまいますね。
そこが怖い。また同時にスリリングでもあります。
さとたかさん、いえいえ、失礼だなんてそんな。どうぞまた、ミスったらご指摘ください。
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