機関紙「自由民主」第2380号(平成21年8月4日号)
検証・民主党提出法案(下)
“旧社会党的”発想引き継ぐ

 民主党が「政権交代」を叫んでいる。しかし、本当に同党に政権を任せていいのか。政権選択の選挙が近づいているが、まだまだ、その本質は国民に認識されているとはいえない。政権選択の前に知っておくべき民主党の知られざる素顔に迫る。まずは2回にわたって民主党が提出している議員立法について解説する。


地球温暖化対策基本法案
産業活動に厳しい現実見ない理想論

 2020年に温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減するとの目標を設定している。政府は2005年比15%削減を掲げているが、同案を同年比に換算すると30%削減となり、より踏み込んだ目標となっている。
 環境を守り持続可能な社会を実現することには異論はないが、現実を無視した高い削減目標の設定は、産業活動の低下を招き、ひいては雇用や国民生活に悪影響を及ぼしかねない。現実を見ずに理想論に走った旧社会党の発想と同じだ。
 同法案には、目標達成のための道筋は示されていない。また、総じて産業活動に厳しい内容となっており、この問題の重要なテーマである交通分野での対策や低炭素型の都市・地域づくり、二酸化炭素を相殺する「カーボン・オフセット」の推進などについても明示されていない。
 一方、二酸化炭素を排出しない原子力発電については、わずかな記述にとどまっており、ここにも旧社会党的要素が垣間見える。
 個別策では、温室効果ガスの発生源に課税する「地球温暖化対策税」の創設が盛り込まれているが、その具体的な姿は明らかにされていない。
 同党は「国民の生活第一」としてガソリン税の暫定税率の廃止を主張しているが、環境対策の面からは、明らかに矛盾している。結果的に今以上の「地球温暖化対策税」がガソリンに課せられる可能性もある。
 与党が提出した「低炭素社会づくり推進基本法案」と比べ、社会全体に総合的な取り組みを促す視点が弱く、実効性に欠ける内容といえる。

教職員免許制度改革法案
教員免許の更新制廃止をもくろむ

 教員の養成課程を1年間の教育実習を含む、6年制とする法案。
 平成19年に提出した教員免許に更新制を導入することなどを柱とする教員免許法改正に対する対案として衆院に提出された。
 この時は否決・廃案となったが、参院で多数を握ったことを背景に今年、参院に再提出。わずかな審議時間で可決された。
 同法案が成立すれば10年に1度の講習が義務付けられるが、「更新制」は廃止される。
 教員の資質・能力の向上という美名に隠れ、実は、「更新制」廃止をもくろむ法案といえる。同制度に対する反対が根強い日教組向けの法案にほかならない。

取り調べ可視化法案
バランス感覚欠く性急な人権擁護論

 警察などによる被疑者取り調べの全面的なビデオ録画や録音を義務付ける内容。社民党と共同で提案した
 不適正な取り調べの抑止については、一定の効果が望めるものの、取り調べが重要な役割を果たしている日本では真相解明や真犯人の適正な処罰が難しくなる。
 実際、検察が昨年度の試行実施した際、報復への恐れから、被疑者が真実の供述をためらうことや、供述内容が否認に転じたり、後退するケースが多く見られたほか、関係者のプライバシーを害する問題もあった。捜査への様々な弊害が確認されている。
 また、取り調べが記録装置の利用できる場所に限られるため、その機動性も大きく損なわれる。さらに、録画機材などの経費も膨大になる上、録画場所の確保もしなくてはならない。
 被疑者の人権を守ることは当然だが、一方、取り調べ無力化による治安悪化で人権が侵害されることも避けなければならない。
 旧社会党と同種の、バランス感覚を欠いた性急な人権擁護論が、民主党に引き継がれている。

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