民主党はインド洋での海上自衛隊による給油活動を憲法違反と断じ、延長反対、中止を主張してきた。しかし、この主張はおろか、自衛隊の洋上活動について、マニフェストでは一切触れていない。
来年1月の給油活動期限切れ後に延長するのか、しないのか。党幹部の間でさえ、「延長しない」と明言する鳩山由紀夫代表に対して、岡田克也幹事長は「単純延長はしない」と含みを残すなど不一致だ。ある新聞インタビューでも「今言うつもりはない」(岡田幹事長)としか答えず、方針を固めていない実情がのぞく。
民主党は最終的にどう扱うのか。給油活動を止めるのか、継続するのか。自衛隊の活動に対する党の考え方・方針を固められず、公に示せないままでは政権運営はできない。
民主党はマニフェストに「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結し、貿易・投資の自由化を進める」と明記した。
しかし、国内の農業者団体などから「日本の農業が壊滅する」「FTA交渉で農畜産物の除外を」などと猛反発され要望を突きつけられると、「米などの主要品目の関税をこれ以上下げる考えはない」(菅直人代表代行)と釈明。一転して、公約を修正する意向まで見せた。
農業の「戸別所得補償制度」を看板に「農業再生」「食料自給率向上」を唱えながら、自己矛盾をさらした格好だ。
民主党は今回のマニフェストに「『地域主権』を確立」と掲げたが、平成19年参院選で「全国300程度の基礎自治体」とした公約は消えていた。基礎自治体の数も示せないままに「地域主権国家」を言うのは無責任だ。
また、民主党はかつて道州制を掲げ、その実現に向けた国と地方の役割分担などを主張していたが、今回のマニフェストに「道州制」の文字はない。道州制をどうするのか、あいまいにした中で、ここにきて小沢一郎代表代行が“道州制論者“橋下徹・大阪府知事と会談した。同党の“道州抜きの国家像“を「政権担当能力なし」と酷評した橋下知事をなだめるためだったのか。とにかく、同党の考え方がはっきりしない。
基礎自治体の数も道州制の導入も示さない。結局、分権後の国と地方の姿さえ示せない政党に地方分権は任せられない。