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経済学はどこで間違えたのか


クルーグマンが、大恐慌以来の経済学の変化を振り返り、もう一度ケインズの直面した問題に立ち戻るべきだと論じている。
As I see it, the economics profession went astray because economists, as a group, mistook beauty, clad in impressive-looking mathematics, for truth. Until the Great Depression, most economists clung to a vision of capitalism as a perfect or nearly perfect system.
新古典派経済学の欠点は、その理論が単純すぎて実証的テストに耐えないため、何が正しいかではなく何が美しいかによって理論が選ばれることだ。ケインズは経済を不合理な「カジノ」と見たが、危機が去ると経済学者は彼の問題意識を忘れ、経済は自動的に均衡に復帰するという学派が勢いを取り戻した。
Friedman made a compelling case against any deliberate effort by government to push unemployment below its “natural” level (currently thought to be about 4.8 percent in the United States): excessively expansionary policies, he predicted, would lead to a combination of inflation and high unemployment - a prediction that was borne out by the stagflation of the 1970s, which greatly advanced the credibility of the anti-Keynesian movement.
フリードマンの「自然失業率」理論は、学問的にも政策的にも大きな成功を収め、ケインズ理論は死んだ。しかしこうした混じりけのない市場経済を信じる「真水」経済学はフリードマンをはるかに超え、超人的な「代表的個人」が永遠の未来までの経済状況を完全に予見して瞬時に市場がクリアされるというシュールリアリスティックな理論を生み出した。
Even so, you might have thought that the differing worldviews of freshwater and saltwater economists would have put them constantly at loggerheads over economic policy. Somewhat surprisingly, however, between around 1985 and 2007 the disputes between freshwater and saltwater economists were mainly about theory, not action.
市場が不完全だと論じる「塩水」学派もいたが、経済政策については彼らの意見も同じだった。財政政策は有害無益で、金融政策がマクロ経済政策と同義になり、経済はFRBによって完全にコントロールできると信じられるようになった。80年代から2000年代にかけて、大平穏(Great Moderation)とよばれる経済の安定した状況が続き、経済学も平穏になった。
But the crisis ended the phony peace. Suddenly the narrow, technocratic policies both sides were willing to accept were no longer sufficient - and the need for a broader policy response brought the old conflicts out into the open, fiercer than ever.
今回の危機は、こうした偽りの平和を破った。ゼロ金利のもとでは、テクノクラティックな金融政策は役に立たないのだ。オバマ政権の基本戦略はケインズ的な財政政策だが、これは真水学派から批判を浴びている。この論争が決着するには時間がかかりそうだが、大事なのは理論と事実が違っているときは事実が正しいということだ。
Larry Summers once began a paper on finance by declaring: “THERE ARE IDIOTS. Look around.” But what kind of idiots are we talking about? Behavioral finance, drawing on the broader movement known as behavioral economics, tries to answer that question.
ありのままの事実を説明する行動経済学が、今後の方向としては有望だろう。それが新古典派のような美しい理論体系になることは期待できないが、サマーズも言ったように「世の中にはバカがたくさんいる」という不都合な真実から経済学は再出発するしかない。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
蛇足 (池田信夫)
2009-09-04 10:58:44
ちなみにゼロ金利のもとでのリフレ=人為的インフレ政策についてはまったく言及せず、財政政策が有効だと書いています:

This is the second time America has been up against the zero lower bound, the previous occasion being the Great Depression. And it was precisely the observation that there’s a lower bound to interest rates that led Keynes to advocate higher government spending: when monetary policy is ineffective and the private sector can’t be persuaded to spend more, the public sector must take its place in supporting the economy. Fiscal stimulus is the Keynesian answer to the kind of depression-type economic situation we’re currently in.

今は亡きリフレ派が、今度は「クルーグマンも池田信夫化した」というのかな。
 
 
 
Unknown (pk-uzawanian)
2009-09-04 19:31:34
リフレ派(インタゲ派)は、フローで考えるから、単なる交換経済ではない貨幣経済は、プロセスの中間に貸借関係が発生することを考慮していない。
「・・・それでは無税国家が可能になる。そんな馬鹿な・・・」
無税国家という事実に近いイメージが得られたのに、即座にその可能性を否定してしまうから、論理的結論に執着したカルトのようになってしまう。
貸借関係の蓄積とその評価というプロセスを考えることが現実に即した思考ではないかと思う。
 
 
 
「日銀、ゴラァ」が笑えますw (石水喜夫さんって、誰…?)
2009-09-04 22:25:42
>貨幣経済は、プロセスの中間に貸借関係が発生する

逆に言うと、「できるだけ、貸借をせずに済むようにする」という一つの含意も引き出せる訳でして。政府発行の不換紙幣や債権(信用創造)を使わずに、株式を使うとか



それはともかく:
>「日銀、ゴラァ」の気持ちがにじみ出ています。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/07/post-7c8a.html
 
 
 
行動経済学と実験経済学 (瀬久原志太郎)
2009-09-04 22:42:41
両者がありのままの事実を説明できるかどうか、私は懐疑的です。

結局、社会心理学の後追いになるだけではないでしょうか?
すなわち、人間行動の不合理性や不条理に焦点が当てられ、それが強調されるだけで、経済学が長年指摘してきたウルトラ合理主義の反動になるだけのような気がします。
 
 
 
研究者は数学に取り憑かれやすい (Retired Scientist)
2009-09-05 00:32:25
航空、電気、生体物理を研究後引退し、新しい事を始めようと経済理論の本を読んで笑ってしまったのですが、殆どが制御理論で開発された非線形システム解析手法の焼き直しでした。確かに数式や定理は大変印象的で、何かすばらしい理論をやっている印象を素人に与えますが、実際の経済にはまるで関係の無い数式を無理矢理経済に関係のある事に使ってみようとしただけです。

非線形制御理論はそもそも非常に非線形な運動方程式を持つ航空機やロケット操縦の為に編み出された数学ですから、出発点は物理的な微分、偏微分、積分方程式です。だから経済システムとは全く無関係なものを一部の経済学者はむりやり取り入れようとしたわけです。つまり、良く切れる道具があるから何でも切って見よう、という態度で、紙を切るハサミで鋼鉄を切ろうとするようなものです。

こういった学者は経済に限らず他の分野でも沢山居ります。数式が対象とする現象を忠実に描写しているかどうかを先ず確かめもせず、解き方が解っている数式があるから、それを無理矢理に自分の研究対象にあてはめようとするのです。その挙げ句、解が得られたと有頂天になっていろいろな解釈を試みる訳です。問題は、そういう全く意味のない研究をする学者が政治力を使って何も知らない素人を騙し、嘘の学問を広める所にあります。

元の数式が対象となる現象と無関係ならば、出てくる結論はどんなに立派に見えても全て嘘です。現在の理論経済学とはそういうものだという事を知ってください。
 
 
 
Re: 「日銀、ゴラァ」が笑えますw (池田信夫)
2009-09-05 00:41:47
これは本当に笑えますね。

<急激な円高は、輸出主導による経済成長を困難なものとし、我が国の産業の中で比較優位の位置を占める輸出産業に打撃を与え、ひいては我が国経済の生産性を低下させることも懸念される>

為替レートと生産性には何の関係もない。こういうふうに長期と短期の要因の区別がつかないのが、官僚社会主義にもリフレ派にも共通の病気です。日銀が生産性を高めることができると、厚労省の官僚は本気で信じてるんだろうか。このナンセンスな文章に天下り氏は「ほとんど「日銀、ゴラァ」の気持ちがにじみ出ています」とコメントしているけど、為替介入するのは財務省だって知らないのかな。日銀の低金利政策は円安の原因だったんだけど。

・・・というように二重三重に間違っていて、正しい部分はほとんどない。これが厚生労働省の白書なんだから、霞ヶ関が「日本のシンクタンク」というのも幻想です。財務省と経産省の一部以外は、この程度の公務員試験でも落ちるような学力しかないのです。
 
 
 
Unknown (pk-uzawanian)
2009-09-05 08:29:34
経済学は、交換の体系を研究する学問であるよりも、
B/S群の生態を研究する学問であると考えたほうが良いと思います。B/Sは、地理や市場の特性で様々なグループに分けられます。産業連関表は地理の情報は伝えませんが、各々のB/Sを接している市場で分類しています。
地理は、都市やそれ以外、あるいは産業別の地理的な特性に関わるでしょう。
B/Sは誰が何を欲するか、どういう資産構成を望んでいるかに誘導されます。資産構成は、環境への適応が主目的でしょうが、嗜好もあるでしょう。
今回のような危機は、交換だけを追っていても判らないと思います。異常は察知できるでしょうが。
やはりストック・B/Sで考えないと説明できないと思います
 
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