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なっとく法律相談  2007年11月 8日 更新

貸している土地から相手が立退いてくれない!

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Q.

父が叔母(自分の妹)夫婦に無料で土地を貸しています。「夫が定年したら土地を更地にして出て行く」と口約束をしていますが、約20年経過した現在において、全く出て行く気配がありません。父はこの土地を取り戻すことはできるでしょうか?なお、土地の固定資産税は父が払い続けています。
また、叔母夫婦とは全く話にならない状態ですので専門家を入れて話をつけたいと考えていますが、こういった場合の専門家は弁護士なのでしょうか?

(20代:女性)

A.

 土地を引渡してもらえるかを検討する前に、まずはあなたの父と叔母夫婦の間で締結された契約がどのようなものであるかを確認します。
 本件のあなたの父と叔母夫婦の間の合意事項は、(A)父が無償で土地を叔母夫婦に貸し与えること、(B)叔母夫婦は(更地にして出て行くという記述から)土地上に建物を建てて居住し、夫が定年したら更地にして土地を返すことです。このような合意のことを、民法は『使用貸借契約』(民法593条)として規定しています。使用貸借契約が締結された場合、借主は契約で定めた時期に借用物を返還しなければなりません(民法597条1項)。したがって、あなたの父と叔母夫婦が約束したとおり、叔母夫婦は、夫が定年したら土地を更地にしてあなたの父に返還しなければなりません。

 以上の結論に対し、相談文からはあなたの次のような疑問が推測されます。(1)父と叔母夫婦の契約は口約束だが、それでも問題はないのか、(2)叔母夫婦は土地に家を建てて住んでいる場合、借地借家法の適用によって返還要求が拒まれたりしないのか、(3)約20年経過しているが、時効取得されることはないか。以下、順にお答えします。

 まず(1)についてですが、使用貸借契約は合意によって成立する契約(諾成契約)であるため、合意が口頭によるか契約書によるかは契約の成否やその内容に影響を与えません。ただし、契約内容について争いとなった場合、裁判では「言った、言っていない」という点が争われるでしょうから、契約書を作成していた場合に比べて立証の困難を受けることになります。

 次に(2)についてですが、借地借家法は「賃料を賃借人が支払う、建物の賃貸借」について適用される法律ですから(借地借家法1条)、無償の使用貸借契約で土地を貸した場合には適用されません。

 最後に(3)についてですが、これについては(I)契約締結時から約20年経過している場合と(II)夫の定年から20年経過している場合が考えられます。
取得時効が成立するためには「所有の意思」をもって他人の物を占有する必要があり(民法162条)、ここにいう「所有の意思」の有無は占有取得原因(それを占有するに至った原因)から客観的に判断されます。そのため、(I)の場合、叔母夫婦による本件土地の占有は借りることを原因に開始していますので、叔母夫婦に「所有の意思」が認められることはありません。一方、(II)の場合、現在の叔母夫婦による土地の占有は権限のない不法占拠となりますので、叔母夫婦による所有の意思が客観的に見てとれるような事情(たとえば、明渡請求を受けたにも関わらずあえて不法占拠を続けているなど)があるときには、その時点から叔母夫婦による取得時効が進行している可能性があります。ただ、この場合であっても、所有者ならば当然支払うべき固定資産税はあなたの父が支払っているので、叔母夫婦に「所有の意思」が認められることはないと考えられます。不安ならば、配達記録郵便等を使い、改めて叔母夫婦に明け渡しの請求をしておけば時効の進行を中断させることができます(民法147条)。

 なお、話に入ってもらう専門家には誰が適任かについてですが、(a)本件使用貸借契約は随分昔に口頭でなされているとのことですから、その事実関係をめぐって訴訟に発展する可能性があること、(b)本件問題には法律上の問題点が含まれているので、法律家(法律を解釈・適用できる資格を有する者)であってはじめて信頼できる適切なアドバイスを期待できることから、まさに弁護士が適任だと思われます。

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