■狼になりたい - 第6回  ≪ベテラン原画モグラ所沢さんの苦悩≫

第6回  ≪ベテラン原画モグラ所沢さんの苦悩≫

カテゴリ : 
狼になりたい
執筆 : 
芦田豊雄 2009-3-29 20:18
 もしかしたら、アニメーション別パートの人達もこのエッセイを読んでくれているかもしれない。
 そして。
 「アニメーターの事ばかりで俺達はどうなんだ?」
 「日本のアニメーションを守るなら、全パートの問題だろう?」
 等の意見があるだろう。
 正論である。
 しかし、この正論を追求し、各パートの意見を調整し、協会の立ち上げに向うとしたら、私の力ではどれだけの時間を費やすか、想像もできない。
 ことわって置くが「私の力では」である。
 そして、私達アニメーターが別パートに手を突っ込む事は「余計なお世話」と思う人も多いだろう。
 だが将来、各パートの集まりが出来れば、我々も話をさせて頂くし、協力も出来るだろう。

 アニメーターの話に戻る。
 改革をするには数の力が必要なのは誰でも判る。
 100人より1000人を数えた方が理想に近付ける。
 JAniCAは数が欲しい。
 しかし、一緒にやってもらうには「意志」が必要である。
 なんでもいいから「入って下さい」はナシだ。
 「すぐに得する事があるかも。だから入る」もナシだ。
 そんな簡単な話は地球上に存在しない。
 JAniCAは「意志」を持つアニメーター、演出の加入を待つ。

 さて、ベテラン原画マン所沢さんの話だ。
 その昔、原画マンは背景原図(レイアウト)を描き、即、原画に入っていけた。
 リテークは原画完成後に戻ってきた。
 所沢さんは優れた原画マンであるため、1日5〜6cutの原画を描けた。
 リテークもほとんどなかった。
 作画監督は、そんな原画に修正などを入れれば良かった。
 そして、色の付いたフィルムで、その後の作業は進んで行った。

 しかし、先に描いた状況の中で、1日5〜6cutの原画が描けるであろうか!
 (尚、所沢さんは月産平均60cutで、4本の仕事をかけ持ちでやっている。そうしないと生活が成り立たないからだ)
 私、芦田も、今の状況では1日2cut。朝10時から夜の11時までやって、1日2cutくらいだろう。
 ※「俺の方が早いぞ!芦田はダメだなー」などと、論点ズレ夫君はやめてね(笑)
 所沢さんは家庭を持っているため、一ヶ月30日全て机に座っている訳にはいかない。
 いや独身でもそうか。
 所沢さんには小学生の子供があいる。
 家族サービスも必要である。
 したがい月に2日ほど休み、一ヶ月に28日働く。
 1日2cutで7000円。
 28日間で196000円。
 時給換算540円弱。
 50歳代。
 優れた技術で日本のアニメーションを支えてきた所沢さんが時給540円である。
 アニメーターだって、正月や盆には2日程の休みはとるし、打ち合わせにも時間をとられるし、病気もする。それは数字に入っていない。
 読んだ人はそれ等を入れて計算してみてほしい。

 さてここでツッコミを入れる人がいるだろう。
 「所沢は1日13時間なんて働いてないだろう!」
 果たして、これはスルドイツッコミなのか!?

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