原文
http://www.nytimes.com/2009/08/27/opinion/27iht-edhatoyama.html

718 名無しさん@十周年 sage ▼ New!2009/08/27(木) 17:51:00 ID:aG2QhvTL0
>>23
暇つぶしに全訳したアホがここにいるぞ。


日本の新たな道

冷静終了後、日本は継続的に市場原理主義の風に打ちのめされてきた。それはアメリカの主導した運動であり、より一般的にはグローバリゼーションと呼ばれるものである。その資本主義の原理主義的な追求のなかで、人々は目的ではなく手段として扱われ、そのため人間の尊厳は失われた。

無制限の市場原理主義と金融資本主義を終わらせ、モラルと寛容性の欠如から、我が国民の収入と財産を守るためにはどうしたらよいか? そういう問題に我々は今直面している。フランスの「自由・平等・友愛」のスローガンにみられるように、今こそ我々は自由に内在する危険を緩和する友愛の精神に立ち返らなければならない。

私の意味するところでは、友愛は、現在のグローバル化を強要する資本主義の行き過ぎを調整することを目的とする原理であり、我々の伝統を通じて育まれてきた地域的な経済の様式を活かす原理である。

現在の経済危機はアメリカ型の自由市場経済の考えかたに基づいてきたことの結果であり、すべての国は慣例と経済を統治する規制をグローバル・スタンダード(というよりもむしろ、アメリカのスタンダード)に合わせることを余儀なくされてきた。

日本ではグローバリゼーションにむけた動きをどれだけ進めるべきかについて、意見が分かれている。グローバリズムを積極的に採用し、なにもかもを市場の命じる通りに任せておけばいいと主張する者もいれば、より抑制的な手段を好み、社会的なセイフティーネットを広げ、我々の伝統的な経済活動を保護するべきよう努力すべきとする者もいる。
小泉純一郎氏の首相任期(2001-2006年)以来、自民党は前者の立場を強調してきたが、我々民主党はより後者の立場に拠ってきた。

746 名無しさん@十周年 sage ▼ New!2009/08/27(木) 17:53:11 ID:aG2QhvTL0
718続き。
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どんな国の経済秩序も長い年月をかけて構築されてきたものであり、それは、その国の伝統や習慣や国民の生活様式の影響を反映している。しかしグローバリズムは非経済的な価値や環境問題や資源的制約の問題などを全く考慮せずに進行してきた。

もし我々が冷戦終了後の日本社会の変化を振り返るとするならば、グローバル経済が伝統的な経済活動を害し、地域社会を破壊してきたと言ってもなんら誇張はないと私は信じる。

市場理論の立場からは、人々は単に人件費でしかない。しかし現実世界では人々は地域社会を支持する骨組みであり、それぞれの伝統や文化や習慣を有する物理的実体である。個人は職を確保し、地域社会のなかで一定の役割を占め、それぞれの家族の生活を維持していゆくことで人間としての尊厳を得る。

友愛の原理のもとで、我々は政策を実現するだけではなく、人々の生活と安全に直結する農業や環境や医療のような分野でグローバリズムの宥和を図るだろう。

政治家としての我々の責任は、グローバリズムの進行で投げやられた非経済的な価値に注意を向けなおすことにある。
我々は人間同士のつながりを再生紙、自然と環境をより一層考慮して、福祉・医療のシステムを再構築し、よりよい教育と育児扶助を実現し、偏在した富を再配分するために働かなければならない。

友愛の理念から導かれるもう一つの国家目標は、東アジア共同体の構築である。もちろん日米の安全保障協定は日本の外交の基礎(※1)であることに変わりはない。

しかし、同時に、我々はアジアに位置する国家としてのアイデンティティを忘れてはならない。活力を増大している東アジア地方が、日本の基本的な活動範囲であると信じている。安定した経済協力と地域安全保障の枠組みを構築する努力を継続しなければならない。

772 名無しさん@十周年 sage ▼ New!2009/08/27(木) 17:55:30 ID:aG2QhvTL0
718 746続き。
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金融危機は多くの者にアメリカの一方的軍縮論の時代が終わりを告げたことを暗示している。そしてそれは基軸通貨としてのドルの安定性への疑念を増大させている。

私は同時に金融危機とイラク戦争の失敗の結果として、アメリカの主導してきたグローバリズムの時代が終わり、多極化の時代に向けて動いているを感じる。しかし現在のところアメリカのかわりに支配的な立場に立つべき国は存在していないし、ドルにかわって基軸通貨になるべき通貨も存在していない。アメリカの影響力は低下したけれども、その軍事力・経済力はこれから20年から30年に渡り世界をリードしてゆくだろう。

最近の動向は明らかに中国が世界をリードする経済国のひとつとなるであろうことを示しており、またその軍事力も増大を続けている。中国経済の規模は近い将来に日本をしのぐだろう。

政治的・経済的な独立を保ち、世界における支配的な立場を維持しようと努めるアメリカと、それにとってかわる道を探そうとしている中国とのあいだで、日本が国益を確保するにはどうすべきであろうか?

これは日本だけではなく、アジアの中小諸国にとっては共通の関心事となる問題である。彼らはアメリカの軍事力が地域の安定のために効果的に機能することを希望しているが、同時にアメリカの政治的・経済的な行き過ぎが抑止されるように望んでもいる。彼らはまた、中国の経済開発が秩序ある方法で進むことが保証され、隣国の中国によってもたらされる軍事的脅威が、減少してゆくことを望んでいる。これらは地域的統合の主要な要因となる。

今日、マルクス主義やグローバリズムにみられるような超国家的な政策や経済哲学は、良かれ悪しかれ後退し、多くの国々でナショナリズムが再び大きな影響をもち始めるだろう。

我々が国家間協力の新たな構造を構築していこうとするなかで、我々はナショナリズムの行き過ぎを克服し、ルールに則った経済協力や安全保障を確保する道を探らなければならない。

798 名無しさん@十周年 sage ▼ New!2009/08/27(木) 17:57:43 ID:aG2QhvTL0
718 746 772続き
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ヨーロッパと異なり、規模も、経済発展の段階も、政治制度もそれぞれ異なる国々のあいだでは、短い期間のうちに経済の統合を実現するのは不可能だろう。しかし、日本に始まり、韓国・台湾香港が続き、その後、アセアンと中国が達成した急速な経済発展の自然的な拡大の中では、それでもなお地域通貨の統合にむけた動きを望むべきである。通貨統合の基礎をつくるのに不可欠な安全保障の永続する枠組みを構築するのに努力を惜しむべきではない。

アジア共通通貨を創設するには10年以上かかるだろう。個別的通貨を政治的に徐々に統合していくにはさらに長い時間がかかる。

アセアン、中国(香港を含む)、韓国、台湾はいまや世界のGDPの4分の1を占める。東アジア地域の経済力と、相互依存的な協力関係はより広く、深く、成長しつつある。地域的な経済ブロックを形成するうえで必要な枠組みはすでに用意されている。

他方、国家安全保障の利害衝突や、それと同じくらい歴史的・文化的な摩擦により、数知れない難しい政治的な問題があると認識せざるをえない。軍事力の増大は、たとえば日本や中国や、日本と中国のあいだにみられるような縄張り争いの問題は、一対一の交渉では解決できない。これらの問題を一対一で議論すればするほど、感情をあおりナショナリズムを強化する危険を高めることになる。

そこで私は、やや逆説的に、地域統合の障害となっているこれらの問題は、より大きな地域の統合に向けた動きによってしか本当に解決することはできないのではないかと提案する。EUの経験は、我々に地域統合が縄張り争いを緩和してくれることを示してくれたからだ。

私は地域統合と共同的な安全保障が日本国憲法が提唱する平和主義とこくさ協調主義を実現する道筋となると確信している。それは日本の政治・経済の独立を守り、アメリカと中国のあいだで我々の利益を追及する適切な方法でもある。


830 名無しさん@十周年 sage ▼ New!2009/08/27(木) 18:00:57 ID:aG2QhvTL0
718 746 772 798続き。 (これで最後)
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85年前に「汎ヨーロッパ主義」を著し、ヨーロッパ共同体運動のさきがけとなったを最初に提唱したクーデンホーフ・カレルギー伯爵(私の祖父鳩山一郎は彼の「反人間的な全体主義者の国家」(※2)という本を日本語に翻訳している)の言葉を引用して締めくくりたい。

「偉大な歴史上のアイデアは、すべてユートピアの夢想から、現実のものになった。その特定のアイデアがユートピアの夢にとどまるか、それとも現実のものになるかは、どれだけ多くの人々がその理想を信じ、そしてそのために動くことができたかによって定まる」


注について:
※1
BasisではなくConerstoneという表現を用いている。
これは「日米関係だけが基礎じゃないぞ」というニュアンスを含むものと考えられる。

※2
"The Totalitarian State Against Man,"
鳩山一郎氏による日本語訳のタイトルは「自由と人生」。


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