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人口減少は消費を低迷させるだけではない。労働力不足を招き、生産力の縮小を余儀なくさせる。他方、高齢者人口割合の増大は、現役世代の負担を大きくさせるばかりである。少子化は社会の活力を奪い、子どもたちの健全な成長を阻害することも懸念される。
産業革命の本質は、生産物が増加したことではなくて、人口が増加しなかったことだという著者が引用する経済学者の言には異議を唱えたいが、人口減少が社会に貧困をもたらすとはいえない、という予測には大いに賛同する。アダム・スミス以来、経済学は成長を前提に組み立てられてきた。新しい経済学は、人口減少社会においても快適で豊かな社会を実現することができることを示さなければならない。本書が批判を受けるとすれば、人口はどこまでも減少してよいのか、ということに尽きる。人口が増えも減りもしない「静止人口」社会へのシナリオを描くことは困難であろう。この点を除くならば、実現可能で具体的な提案によって、豊かな人口減少社会への行動指針を明確に示してくれたことを、大いに評価したい。(鬼頭 宏)
商品の説明
人口減少の経済学 少子高齢化がニッポンを救う!
日本はデフレスパイラルに入る以前に、別の名前のスパイラルに取りつかれているのではないかと、最近しばしば思う。それは「悲観論のスパイラル」だ。日本の先行きについては、ありとあらゆるメディアで不安な話ばかりが取り上げられる。
悲観論蔓延の直接的な背景は立ち直らない景気だが、その先にはどうやら日本人の「人口減少」と「少子高齢化」に対する懸念があるように思う。人口の増加に支えられた戦後の高い成長を、今後はあきらめなければならないのではないかという恐れ、それに人口減少から予想される国力の低下に対する不安。実際、2004年から日本の人口は減少期に入る。
この本はそうした悲観論を真っ向から否定し、「人口減少にこそ1人当たりの豊かさを飛躍的に上昇させる可能性がある」と指摘する。章立てからして明るい。「人口減少社会で、一人ひとりがもっと大事にされる」「生産性が上昇し、日本経済は発展」「女性・高齢者の参加で一層発展」と続く。悲観論への挑戦という意味では、一石を投じる本である。その意気込みを汲んで書店で手にした。
しかし、楽観論を売りたい気持ちは分かるが、議論がやや荒っぽい。
「日本には、人口が安定的に増加することを前提とした様々な制度がある。それを改革しなければ、人口減少社会がバラ色の未来となるのは難しい」と本質論に触れながら、では今までなぜそれができなかったのかの議論がない。それは「政治の責任」「政府の怠慢」だと指摘するが、ではそれらは今後どうしたらできるのか。
筆者は、改革にさえ成功すれば日本にも活気に満ちた人口減少社会が待っており、その改革とは「常識で考えれば、そうなるしかないようなもの」と述べて、「日本人の知恵はそのような改革を当然のものとして受け入れてくれると信じる」と書いている。しかし、歴代政権とは色合いが違う小泉純一郎政権の下でも改革が遅々として進んでいない印象を強くしているのは私だけだろうか。
恐らく、人口減少社会を真に日本人一人ひとりにとって望ましい社会とするのは、大変な力仕事だろう。時間もかかる。今までの常識をひっくり返し、年金などシステムを変更し、労働力人口の減少に適切に対応し…と続く。成長前提の経済統計の変更も必要だろう。今の日本の統計は、人口も経済規模も拡大する時代を前提としている。
自然体では「人口減少社会」を「バラ色の社会」にするのは難しい。結果はそうなるかもしれないが、そこへのプロセス、力仕事をもっと論じてほしかったと思う。
(住信基礎研究所主席研究員 伊藤 洋一)
(日経ビジネス 2002/01/14 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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