中国の経済専門家は中国経済が日本経済を今年度末に追い抜くと予測したが、これは侮れない予測である。
今までの中国経済は、コピー構造がこびりついており、著作権問題やIT情報強制開示問題などで度々クローズアップされてきたが、最近は、独自開発の動きが目立ってきているのである。
例えば、自動車産業。円安バブル時代に我が国日本経済の牽引力であったが、この自動車産業の今年1−3月までの販売台数で比べると、日本が123万台で、アメリカが220万台と低迷したのに対し、中国の自動車市販売台数は267万台とアメリカを抜き、世界一に躍り出たのである。
今年の通年予測でも、中国が1100万台に迫り、アメリカから首位奪還をするとの予測が立っている。
もちろん、中国の自動車産業では、上海VWのようにフォルクスワーゲンとの合弁企業が7割を占めているが、庶民にも低価格で車を供給する民族系メーカーが追い上げており、これが、強気の中国自動車産業を支えている。
現実に、先月の上海モーターショーで一段、注目を浴びたのは、民族系メーカーの奇瑞の『QQ』であった。
これだけではない。
世界知的所有権機関の年間発表でも、企業別特許出願件数で1位だったのは、中国の華為技術であった。
昨年の出願件数は1737件と世界一に輝いたのである。
このランキングにはその他にも中国系企業の名前が散見でき、中国の経済構造が、コピーから開発に変わったことが伺える。
今までのコピー産業での利点とはズバリ、人件費の低さであった。
ところが、2004年から人件費が高騰し、法定最低金賃も、上海市などで月額15000円と跳ね上がり始めた。
もはや、労働集約産業に固執するだけでは、中国経済は世界の流れに取り残されてしまうと中国自身が悟ったのである。
ちなみに、同じく労働集約産業を『ものづくり』と称し、後生大事にしている我が国とて他人事ではない。
さて、中国は、この危機感から、独自開発すなわち、より高付加価値産業への移転を計ったのである。
そして、この成果がやはくも、今年から見え始めているのである。
アメリカの没落もエコカーなどの低燃費車の開発に遅れが出たからで、日本経済の没落も派遣や外国人研修生などの安価な労働力を利用しないと自動車産業が保てない構造的問題に起因している。
もちろん、両国でも構造改革を求める声は出ていたが、パターナリズムによって押しつぶされた。
もはや、この国の経済が中国に追い抜かれるのは早晩であろう。
我が国は早急に、労働集約産業から高付加価値産業に乗り移るべきで、麻生官僚内閣の日本政策投資銀行や低金利政策などによるゾンビ企業延命措置は中国を利するだけだ。
我が国は必要な社会的インフラ整備が遅れる一方で、不必要な社会的インフラ整備ばかりが進むため、アジアから取り残されている。アジアの物流ハブを 目指して、北九州市には日本海側で唯一、大型コンテナ船が寄港できる水深15メートルの岸壁と荷役設備を持ち、24時間稼働港として05年にオープンした 『ひびきコンテナターミナル』があるが、釜山や上海などでは、90年代後半から国策として24時間化で、アジアの物流拠点になっており、我が国はボロ負け状態である。港だけでなく、空の玄関口である空港も、アジア全体の集配拠点の座はフィリピンに奪われており、広州にもライバル空港ができるというのに、夜間飛行制限、貨物や滑走路のスペース不足で遅れをとっている。これでは、アジア・ゲートウェイ構想どころではない。
そして、今度は、中国国務院が3月に2020年までに上海の金融センター構想をぶち上げ、金融インフラ整備のために香港に負けず劣らずの力を注いでいる。このため、中国人民銀行が地域の相互流動性支援を促進するために韓国などとスワップ協定を結ぶなどし、人民元の国際化に力を注いでいるのである。
以前、当方は、『スイスVSオバマ』で述べたが、スイスなどの既存のタックスヘイブンはEUとアメリカの包囲網で、顧客情報公開を進めるなどし、富裕層が資産を動かし始めている。その向かい先が、アジアなのである。ちなみに、現在では11兆5000億ドルの個人資産が集中し、世界貿易の6割がタックスヘイブンを通過している。このうち100億スイスフランがスイスからシンガポールに流れ、ベトナムが後追いしていると言われる。
金融立国になる上で、この膨大な個人資産に目をつけない訳にはいけない。しかし、我が国の場合、金融機関と行政との関係が密接すぎるし、金融鎖国の面が強く、ものづくり思考で、金融=マネーゲームと見られているため、一筋縄では解決しないだろう。
これでは、当然だが、ベトナムやシンガポール、上海などの新たな金融センターにマネーが集まり、物流だけでなく、金融でも我が国はアジアで遅れをとるだろう。
以前も書いたが、2005年に、アジア一の大学の座を北京大学が東京大学から奪い、今年の暮れあたりにはGDP比で中国に抜かれると予測がたっている。得意のものづくりは、中国の安価な労働力の前には非力で、金融力さえ、中国に追い抜かれそうである。
今こそ、我が国は早急に、金融改革を進め、アジア一の金融大国を目指すことで、生き残りをかけるべきである。もはや、アジア経済倍増に向けた成長戦略のように、日本がアジアを助ける余裕すらなくなる前に、改革をするべきだ。
by libertarian0606
バカ保守見っけ!