火星環境だより
火星環境だより
本年1月、米航空宇宙局(NASA)の火星無人探査車「スピリット」が火星の地表に降り立ちました。かつて火星表面に大量に水が存在した痕跡を見つけ、生命が存在した可能性を探ることを目的としています。地球環境とは全く違う世界が広がる火星。今回は、Q&A形式で『火星環境』をご紹介します。私たちが住む地球の環境と比べてみると面白いのではないでしょうか。
Q 火星はどうして赤く見えるの?
A 火星は赤い砂で覆われています。この赤い砂は酸化鉄(鉄さび)が主成分で、大気中の酸素により酸化したと考えられています。
Q 火星の大気中の成分は?
A 火星の大気のほとんどは二酸化炭素(約95%)です。そのほか、窒素(2.7%)、アルゴン(1.6%)、酸素(0.13%)などで構成されています。火星の北極と南極が白く見えるのは、大気中の二酸化炭素が凍ってドライアイスになっているためです。また、気圧が非常に低く、地球の約200分の1しかありません。
Q 火星の1日は何時間? 1年は何日?
A 1日は24時間37分で、地球とあまり変わりません。1年は687日です。火星が太陽の周りを地球より外側で回っているため、地球より長くなっています。
Q 火星にも四季はあるの?
A あります。火星の地軸は地球と同じくらいの角度で傾いており、太陽の周りを回ることにより季節に変化が現れます。季節ごとの星座も見られるでしょう。ただし、太陽からの距離が、太陽・地球間の約1.5倍あるため、平均気温はマイナス55度と極寒の地となっています。それでも夏の日中にはプラス27度くらいまで気温が上昇します。最低気温は約マイナス130度と寒暖の差が激しいのですが、これは、火星の大地が砂漠のように乾燥していて放射冷却が起こることが原因です。
Q 火星の重力は地球と比べてどれくらい?
A 地球の約3分の1(約38%)です。ちなみに火星で最も高い山「オリンポス山」は標高約2万4,000メートル(エベレスト山の3倍)もあります。そのほかにも険しい地形がたくさん存在するのですが、これは重力が小さいためにこれほど高い山や険しい地形でも崩壊しないからと考えられます。
Q 火星に水は存在するのですか?
A 火星表面の地形の侵食の状態から見て、大昔はたくさんの水があり、川として流れていたと考えられています。火山活動が活発だった時期には、火山ガスの温室効果で気温も高く、液体の水が存在していました。その後、火山活動が終わり、重力が小さいために大気ガスが宇宙空間に逃げ出して薄くなり、気温が下がったため、水は凍りついて、地下に永久凍土の形で残っていると考えられています。
Q 火星人はいるの?
A 火星人というと、頭が大きく、手足が細長いタコのような生物を思い浮かべますが、これはイギリスのSF作家H.G.ウェルズの小説『宇宙戦争』(1898)に登場する火星人のイメージが広まったものです。この火星人登場の背景には、火星の「運河」があります。「火星の表面に見えるたくさんの筋模様は人工の運河だ。このような運河を建設・管理することができる、高い知性を持った生物がいるはずだ」と、あるアメリカ人が主張したのが「火星人」誕生の発端です。
その後、20世紀も終わりになって、火星探査機による調査が始まりましたが、これまでのところ火星人はもとよりバクテリアのような微生物の存在すら確認できていません。しかし、1996年に地球に落ちてきた火星起源のいん石から、古代火星のバクテリアの化石のようなものが発見され、生命の発見に再び関心が高まっています。
このように火星の環境は非常に厳しく、とても生物が住めるようなところではないように思われます。これに比べ、私たちの地球は多くの動植物が生存し、豊かな自然に恵まれています。広大な宇宙の中で、さまざまな好条件が重なり、非常に長い年月をかけて出来上がった水の惑星・地球。その豊かな地球環境を、今後も大切に守っていきたいものです。
丸紅グループ誌『M-SPIRIT』No.20(2004年3月発行)より