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変革の内実

2009年9月4日0時2分

 民主党がこれほど大勝したのは、思い切った「変革」を求める国民の意思の表れだろう。次の課題は新政権がどのような変革の内実をめざすかである。

 マニフェストの中にはまだ見えていない国民の負担もある。なぜその痛みを分かち合うのかを納得させるような、将来ビジョン―国の志を立てる必要がある。米国のかつてのケネディ大統領のように、国民の国に対する貢献の志を引き出すことが本当の戦略である。

 生活を楽にする、という願いだけではすぐ限界にくる。多くの人々が「この国に生まれて良かった」と思えるような国づくりの目標が必要である。ポピュリズムの前提には、快苦に左右され他者依存で、志も乏しい人間像があるが、それでは人間を低く見過ぎている。またそのような生き方を助長する政策なら財政は破綻(はたん)する。

 しかし、現実の一人ひとりは違う。誠実さ、他に尽くす思いやりや助け合い、そして自然に対する畏敬(いけい)の念などを秘めている。そうした願いや志から生まれる可能性をもっと引き出さなければもったいない。「子育て支援」の政策も、これまでのポピュリズムを越えるこうした本来の人間観や哲学を柱として打ち出されるかどうかで、結果は変わる。

 また、成長戦略に関連して、輸出に比重を置き過ぎたことを転換し、国民に所得を渡して消費を増やし内需を振興する考え方も出ている。しかし、その是非よりも大切なのは人々や社会の痛みや必要に応えて、一人ひとりが生き生きと働けるようにする政治の意志であろう。それにはお金のことだけで事態を解決しようとしてきた発想を超えることが政策担当者にも、また経営者などにも求められる。(瞬)

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 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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