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【国際】旧ソ連の行為を正当化 ロ、歴史認識修正に躍起2009年9月3日 朝刊 【モスクワ=酒井和人】ロシアが、第二次世界大戦時のソ連の行為を正当化し、「抑圧者」とみなす欧米の歴史認識の“修正”に躍起となっている。経済危機が深まる中、民族主義を政権への求心力アップに利用したいメドベージェフ大統領らの思惑があるとみられ、ロシア流官製史観の矛先は、日本との北方領土問題にも向けられている。 「大戦で生み出された地政学的結果を捏造(ねつぞう)しようとの動きがある」 先月二十八日、モスクワのクレムリン(大統領府)で開かれた歴史捏造対策委員会の初会合で、委員長のナルイシキン大統領府長官はこう切り出した。 名指しは避けたが、日本が七月、北方領土を「わが国固有の領土」と明記した改正北方領土問題解決促進特別措置法を成立させたことを念頭に、大戦で得たロシアの国益を死守する考えを示したとみられる。 同委員会は今年五月、大統領直属機関として発足。二十八委員のうち歴史専門家は三人で大半は軍など政権関係者。極めて政治色が強い。北方領土問題のほかバルト諸国などの大戦に関する反ソ連的主張を非難、ロシア国内の小中学校で「正しい歴史」を教えるよう教科書の見直しなどを提言する方針だ。 ロシアは、ナチス・ドイツの侵攻から七十年を迎えたポーランドでの一日の式典で、プーチン首相が「ソ連が欧州をファシズムから解放した」との認識をあらためて表明。先月下旬には国営テレビがソ連参戦を正当化する特番を放送した。 残虐行為を否定し、戦後体制をつくった戦勝国としてのソ連の立場を守る歴史認識の普及は、国民人気を基盤とするロシア双頭政権にとって格好のアピール材料。領土問題での主張の正当性を確保する狙いもありそうだ。 ただ、こうした姿勢が欧州の反発を招くのは確実。英字紙モスクワ・タイムズなどは「国家の支配者の利益に沿った神話を守ろうという行為」「ロシアにとって恩恵より、海外で失う名声の方が大きい」との歴史家らの批判を伝えている。
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