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【集う】「金田伊功を送る会」(8月30日、東京・杉並公会堂)
■故人の人柄 楽しい思い出に笑い声
政権交代が確実となった夜、東京の杉並公会堂には、日本を代表する多くのアニメ関係者が集まっていた。7月21日に心筋梗塞(こうそく)のため57歳で亡くなった金田伊功(かなだ・よしのり)さんを送る会。ファンを含む約1100人が客席を埋め、伝説のアニメーターの足跡に思いをめぐらせた。
「銀河鉄道999」「風の谷のナウシカ」「サイボーグ009」…。スクリーンには故人の携わった名作が流され、友人らが懐かしい挿話を語っていく。司会を務めたアニメ研究団体「アニドウ」代表のなみきたかしさん(57)は開会のあいさつで「37年間の付き合い。円熟の時を迎えるところだったのに残念」と無念さをにじませた。
金田さんの原画は多くの人を強くひきつけた。親交のあったアニメ研究家の氷川竜介さんは遠近を強調した構図など独創的な作画技法について解説。「アニメーターのスター。業界に才能を集めた」と賛辞を贈った。
「新世紀エヴァンゲリオン」の監督で「ナウシカ」で仕事をともにした庵野秀明さん(49)も魅了された一人。「金田さん、早過ぎます。もっと新しい原画を見せてもらいたかったです。ぼくも金田さんの作画にひかれてアニメーターになった一人です。本当にあこがれでした」と、遺影を見つめた。
故人の人柄なのだろう。悲しみの声の一方で、楽しい思い出話に客席からは笑い声がわき起こる。体を激しく揺すりながらアニメソングを熱唱するプライベート映像が流れたときは、誰もが声を上げて笑った。
「笑わせるのが好きな人でした。皆さんも明るく送ってあげてください」。妻の牧子さん(45)が悲しみを和らげるように謝意を述べた。「送る」というよりは、旧友との「再会」を喜ぶような。そんな温かな雰囲気が会場を包んだ。(堀晃和)