2009年9月2日22時13分
女性が始めたネット署名のページ。「DV家庭の子供たちを守りたい!〜お母さん、勇気を出して」と呼びかけている(オンライン署名サイト「署名TV」のページから)
「DV(ドメスティックバイオレンス)被害の相談窓口を、加害者の目につきにくい、生理用品の外装フィルムに記載いただけませんでしょうか」。兵庫県の女性(47)は生理用品を売る東京の大手メーカーに、こんな手紙を書き続けている。自身もDV被害者。それは、当時15歳の長男が元夫に殺害されるという最悪の結末で終止符を打った。1人で背負い込まず、だれかに相談していたら……後悔してもしきれない思いが背中を押す。
元夫は03年3月、長男を刃渡り約11センチのサバイバルナイフで刺し殺し、殺人罪で懲役12年の判決を受けた。
以前はごく普通の仲の良い家族だった。食卓には笑い声が響き、年に数回は旅行に行った。だが元夫は仕事などが原因で神経症になり、ささいなことで逆上するようになる。12年前から4年間、DVの被害を受け続けた。
「全部お前のせいやっ」。たまに殴られることもあったが、病気が原因で、自分が至らないのが悪いと思った。だが元夫の行動はエスカレートした。夕食が5分遅れた、車の中にツメ切りがない、バイクの免許試験に落ちた……怒鳴り、家の物を壊し、手がつけられない。
恐怖に耐えきれなくなり家を出た。だが13歳だった長男は「パパのそばにいてあげたい」と残った。長男は何度か「ママと一緒に暮らしたい」と伝えてきた。元夫から「包丁、買うた」と脅されていた。長男を奪ったら、どんなことになるかわからないとおびえた。
そして高校入学目前、長男は殺された。死後、元夫が長男に日常的な暴力を加えていたことを知る。長男は最後までそれを口にしなかった。
昨年秋。山梨県であったDV防止のシンポジウムで長男の被害を紹介してほしいと頼まれ、写真などを提供した。見に行くと、DVについて説明したパネルがあった。「加害者に心を支配されることもある。怖いと感じたら、それがDV」。ドキッとした。まさに、私や。自分を押し殺し、元夫におびえ続けたのはDVそのものではないか。