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日本が変わる:民主、強まる小沢色(その1) 「党に主導権」懸念

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 民主党の鳩山由紀夫代表が3日、連立政権の要となる党幹事長に小沢一郎代表代行を起用したのは、月内の政権発足や来夏の参院選をにらみ、党運営全般を小沢氏に委ね、政権運営に専念するためだ。ただ、強固な党内基盤を持つ幹事長の誕生で、党内には新政権の「二重権力構造」を懸念する声も出ており、鳩山氏は「もろ刃の剣」を抱え込むことになった。【田中成之、佐藤丈一】

 鳩山氏は3日夜、党本部で記者団に対し、小沢氏の幹事長起用について「幹事長は党務なので、政府の中に入って仕事をするわけではない。二重構造にはならない」と強調。鳩山氏によると、同日夜の会談で、小沢氏は政府が決める政策にはかかわらないと明言したという。鳩山氏周辺は「『党は小沢氏に任せる、ただし政府のほうは鳩山氏がリーダーシップを持つ』という意味だ」と解説した。

 与党第1党の幹事長に、18年ぶりに復帰する小沢氏がまず取り組むのは、連立政権樹立に向けた社民、国民新両党との協議だ。外交・安全保障政策を巡り、民主、社民両党間の開きは埋まらず、調整は難航しているのが実情。小沢氏は衆院選での選挙協力を通じ、社民、国民新両党とのパイプを持っており、小沢氏が仕切ることへの期待感も出ている。

 民主党が大勝した衆院選後、小沢氏の党内基盤はさらに強まった。308議席のうち、ほぼ半数を占める新人の多くが小沢氏の影響を受けており、党内では「小沢チルドレン」とまで称される。小沢氏の幹事長就任により、党内の小沢シフトに拍車がかかるのは必至で、「党の重しになる」(中堅)との声が出ている。

 一方で、民主党内には「権力の二重構造」を懸念する声もくすぶる。鳩山氏は自民党政権の反省を踏まえ、政府と与党の二元的な政策決定を見直す意向。しかし、小沢氏が幹事長に就任することで、政府と与党との力関係が変わり、政権運営の主導権が、首相官邸から与党に移る恐れも否定できない。政権移行チームが結成されなかったことについても党内では「小沢氏がストップをかけた」というのがもっぱらの見方だ。

 これまでの小沢氏は結果的に、与党内から政権に大きな影響力を及ぼす傾向があった。89年に自民党幹事長に就任すると、当時の竹下派の数の力を背景に閣外から海部内閣を操縦。93年から94年の非自民連立政権では、新生党代表幹事として与党代表者会議を取り仕切り、「二重権力支配」と言われた。

 99年の自民・自由・公明連立政権でも、自由党党首として連立政権を揺さぶった。いずれの時も、小沢氏の強引で説明不足な手法が感情的な反発を招き、政権運営を不安定化させた。06年4月に民主党代表に就任して以降は、「二重権力」状態を作りようがなく、党内の反小沢系議員は「小沢氏は代表の座に閉じこめられている」と指摘した。

 小沢氏の懸念材料は、西松建設の違法献金事件だ。小沢氏の公設第1秘書で資金管理団体「陸山会」の会計責任者が今年3月、東京地検特捜部に政治資金規正法違反容疑で逮捕、起訴された。小沢氏は同事件を踏まえ、今年5月に代表を辞任。小沢氏が入閣に触手を伸ばさないのは、こうした背景もあるとみられる。「政治とカネ」を巡っては、鳩山氏も個人献金の虚偽記載問題があり、党のナンバー1とナンバー2が問題を抱えた形での新政権発足となる。自民党など野党が批判を強めるのは確実だ。

 ◇角栄氏直伝「数こそ力」

 小沢氏の政治哲学は「数こそ力」だ。小沢氏の師匠、田中角栄元首相はロッキード事件後、復権を目指し、派閥膨張に躍起になった。若き日の小沢氏は、田中氏の権力掌握ぶりを学んだ。田中派は最大141人。田中派を引き継いだ竹下派も120人近い勢力を誇った。小沢氏は田中氏にかわいがられ、竹下派の実力者だった金丸信元副総裁からも強い信頼を受けた。

 小沢氏は竹下派会長代行時代、同派のメンバーを200人まで増やし、その勢力を元に自民党を割り、政界再編を果たそうと考えたことがあった。竹下派200人構想は失敗したが、当時の公明党、民社党を補完勢力にして、93年の政界再編(自民党下野、細川政権成立)につなげた。小沢氏は今回の衆院選で、多くの新人を当選させた。衆院当選3回以下の「一新会」(約30人)と参院議員を合わせると100人は超える。鳩山グループが40人、菅直人氏のグループが30人程度であることを考えると、小沢氏の掌握ぶりがうかがえる。

毎日新聞 2009年9月4日 東京朝刊

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