きょうの社説 2009年9月4日

◎高搭乗率の台湾便 運航時間も改善できないか
 小松−台湾便の8月の搭乗率(速報値)が91%に達した。これは就航以来最高の数字 であり、新型インフルエンザの影響などでいったん延期された台湾からのツアーが戻ったという特殊要因を考慮しても、驚異的と言える。就航から1年3カ月、新しい定期便を安定軌道に乗せるという第1段階はクリアしたとみてよいだろう。これを機会に運航時間の改善を働き掛けてはどうか。

 小松―台湾便は現在、台北発の便が午後6時に小松着、小松発の便が午後9時半に台北 着というダイヤで運航されている。石川の人々が台北に到着しても、その日は何もできず、ただ宿泊先に向かうだけで終わってしまう。台湾の人々が小松に到着しても、空港近辺の観光地に立ち寄ることすら難しいのが現状である。

 小松―台湾便の利用者の多くは台湾からの観光客であり、航空会社としては、そちらに 配慮したダイヤを組まざるを得ないという事情は理解できる。ただ、たとえば発着時間を多少前倒しするなどして、台湾の利用者の利便性をそれほど損なわず、石川の利用者の利便性を高めることもできるのではないか。航空会社に対して、最大限の工夫を要請してほしい。

 昨年6月から就航した小松−台湾便の1年目の搭乗率は70%を超えた。国際定期便と しては間違いなく合格点が付けられる数字であり、同時期に就航したにもかかわらず、搭乗率が予想を大きく下回り、10月から運休することが決まっている宮崎−台湾便とは対照的な好調ぶりである。2年目も、6月は新型インフルエンザの流行懸念で5割台後半まで落ち込んだとはいえ、7、8月はそれを取り戻して余りある勢いである。

 搭乗率91%という数字はあくまでも1カ月の平均であり、個別に見れば100%近く に達した便もあろう。もしかしたら、飛行機の予約が取れなくて行き先を変更したり、旅行をあきらめたりした観光客がいたかもしれない。そうした要因による「取りこぼし」があったとすれば、もったいないと言わざるを得ない。そろそろ増便を求めることも視野に入れておく必要があろう。

◎五輪の開催地評価 次期政権も支援表明を
 2016年夏季五輪候補都市の評価報告書で、東京はまずまずの評価を受けたものの、 頭一つ抜け出したという感触は得られなかった。1次選考では、「世界一コンパクトな会場配置」をうたう開催計画が高い評価を受け、トップ通過を果たしたが、それ以降、差を広げることができたとは言い難い。現段階では東京を含む4都市がほぼ横一線で並んでいると見てよいのではないか。

 開催地が決まる10月2日の国際オリンピック委員会(IOC)総会まで1カ月を切っ た。民主党は五輪の東京招致を目指す国会決議に賛成し、超党派のオリンピック日本招致推進議員連盟にも同党議員が加わっている。民主党を軸とした新政権も引き続き、国家レベルの支援を惜しまぬ姿勢を内外に示してほしい。

 世界同時不況と同時進行での招致活動は世論喚起が難しく、多額の財政負担を心配する 声もある。それでも不透明感が漂う時代には、閉塞感を打ち破る大きな夢がほしい。東京五輪はまさに国民共通の夢になりうる国家的イベントであり、願ってもない景気刺激策になるはずだ。2014年度末までに北陸新幹線金沢開業が予定される北陸にとっても、五輪開催に伴う経済効果は大きいだろう。

 東京の懸念材料は、報告書が指摘した住民支持率の低さである。55・5%という数字 はマドリードの84・9%、リオデジャネイロの84・5%、シカゴの67・3%に大きく見劣りする。この支持率は2月のIOC調査によるもので、4月に招致委が行った電話調査では、全国で81%に上ったというが、国内でいささか盛り上がりに欠ける印象があるのは残念だ。

 また、1次選考の総合評価では最下位だったリオデジャネイロが予想以上の高い評価を 受けたほか、リオデジャネイロとマドリードが、先に落選した方が残った候補地を支持するとの相互協定を結んだという報道もあり、ライバルの追い上げが気になる。

 招致レースを制するのは、これから1カ月のロビー活動にかかっている。「オール日本 」の誘致活動に全力投球してほしい。