「大相撲秋場所」(13日初日、両国国技館)
大相撲の横綱朝青龍(28)=高砂=が2日、格下相手に大苦戦した。出げいこ先の東京・墨田区内の春日野部屋で東前頭筆頭の栃ノ心(21)=春日野=と三番げいこを行ったが、6番取って3勝3敗と調子が上がらず。春日野親方(元関脇栃乃和歌)や、相撲解説者の舞の海秀平氏から心配する声が上がるなど、4場所ぶりの優勝へ暗雲が垂れこめた。
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負けるたびに朝青龍は冷静さを失っていった。グルジア出身の栃ノ心を土俵に迎えた1番目。右下手、左上手を許し、なすすべなく寄り切られた。格下相手の力負けに「ああ、クソッ」と絶叫。悔しさをあらわにした。その後も勝ち、負け、勝ち、負け…。夏巡業中に痛めた右ひざの影響からか、地力の違いを見せられずにいた。
3敗目は、寄って出たところを上手投げで転がされる屈辱的な内容で、「もう一丁」とリベンジマッチを要求。出し投げで相手の体勢を崩すと、左足でローキックまがいの「けかえし」を繰り出す必死の連続攻撃をみせた。栃ノ心の首投げに乗じてすくい投げを合わせ、辛うじて五分の星で三番けいこを終えた。
スピードや技では横綱に分があったものの、がっぷり四つに組まれると腰が浮いてしまう場面も。見守った春日野親方は「横綱も力がない。基礎的なけいこをやらないと。誰しも力は落ちるけど、なだらかに落ちないと。急だよ。右肩下がりだ」と酷評した。
厳しい意見を浴びせてきた舞の海氏も取材で訪れていたが、酷評どころか「白鵬関が盤石で(優勝は)厳しい。もうひと踏ん張りしてほしい」と同情する始末。横綱との会話はなかったが「マスコミにたたかれ『かわいそう』となれば(朝青龍も)燃えますよ」と、言いたい放題だった。
本格的なけいこ2日目にして、散々な朝青龍。けいこ後には春日野親方から「栃ノ心、力付いた?」と声をかけられ、笑顔で「だいぶ付きましたよ」と大人の対応をしてみせたが、もちろん本音は正反対。報道陣には付け人を通じ「お前らに話すことはない」と言い残し、足早に立ち去った。