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「参政権」どうなる 本紙記者座談会
2009-09-02
選挙事務所でお手伝い 団員も支持候補の事務所で法定ビラへの証紙貼りなど各種作業を手伝った
本当の正念場はこれからだ

 民団が熱い視線を注ぎ、積極的にかかわった第45回衆議院選挙は終わった。民団はシフトを切り替えて、永住外国人地方参政権付与法案の早期立法化に全力をあげる。参政権運動の今後の展望について、本紙記者が話し合った。

■□
民団が関与の反応は
自発的な活動引き出す

 −−民団が日本の国政選挙に直接かかわったことへの反応は。

 A かなりの団員たちに、韓国籍なのに政治・選挙運動が本当にできるのか、という懸念があった。地方選挙の投票権もないのに、不特定多数への政治的な働きかけが許されるわけがない、という思い込みだ。政治資金の提供を除けば、すべてが日本人と同様にできると知って、目を輝かせた団員は多い。その後の各地の頑張りは、こちらが煽られるほどだった。

 B 同胞の若い女性から「民団新聞の総選挙関連の記事には励まされる。だからこそ、外国人にも選挙運動ができることをもっと強調して欲しい」と電話があった。「参政権獲得運動を誹謗中傷するネット・ウヨクと毎日闘っている。彼らは外国人排斥のために手段を選ばない。民団が違法な運動をしていると騒いでいる」とのことだった。

 民団とはまた別な所で、いろんな形で運動している同胞がいること、民団の選挙支援が注目、監視されていることを改めて痛感させられた。

 C 経済力のある団員は地域の日本人社会でも、まず間違いなく有力者だ。地方選挙には個人的にかかわってきた。むしろ、放っておいてくれなかった、というのが事実だろう。

 それでも、国政選挙には一線を画してきた。今回の組織的な関与は、付与法案が上程されてから11年間も動かない膠着した状況に、今度こそ風穴を開けようとやむにやまれぬ思いからだ。既存の利益関係を断ち切ってまで、付与推進候補に力を注いだ有力者も多い。

 A 「民団がいよいよ動いたか」という声は年配同胞から多かった。「自分の年では今さらだが、孫の代のために何とかして欲しい。最近の民団の動きは頼もしい」とまで言われた。

 C 大手本部の団長たちにも、「今回の総選挙は背水の陣だ。負けたら地元にいられない」「自分の選挙や中央3機関長の選挙より懸命だった」といった緊迫感があった。有力な反対派議員を破って支援候補が当選を確定すると、感極まった支団長もいた。

 B 民団に直接かかわっていない、いわば組織周辺の読者から投稿や電話がいくつかあった。30代の3世は、「初めて選挙に関心が湧いた。日本人の妻は1回も投票に行ったことはないが、今回は必ず行く、親にも兄弟にも依頼する、と張り切っている」と驚くほど高揚していた。

 C 民団が党派を超えて付与賛同候補を支援することを問題にした日本人もいる。政治活動の中核をなす選挙運動においては、特定政党への支持を鮮明にすることが正道だと。一般論では確かにそうだ。

 だが、民団は国政全般への関与とは一線を画し、参政権一本に絞った落選運動ならぬ当選運動という位置づけだ。そこにはもちろん、参政権付与が日本の健全な将来に結びつくとの巨視的な信念があることを知って欲しい。

■□
改めて認識させたか
付与環境整備へ全力…問題意識かつてなく浸透

 −−本題に入ろう。今回の総選挙で地方参政権問題は表立った争点にはなっていない。だが、この問題の存在を日本の政治舞台に改めて認識させ得たのか。

 A 参政権付与に対する長年の思いは、民団が支援した候補たちに十分すり込まれたはずだ。付与反対の政党や候補者たちも民団の動きに神経を尖らせていたし、隠然と圧力をかけてきたケースも各地から報告されている。

 B 日本記者クラブが8月17日に開いた主要6政党の党首討論で、参政権問題がテーマになった。そこで鳩山由紀夫民主党代表は「まさに賛否両論ある。そのなかで意見集約を図っている最中だ」としながらも、「将来のことを考えたとき、もっと前向きに考えるべきときにきているのではないか」と言明した。こうした言質が引き出された意味は大きい。

 C 候補者に対する朝日新聞と東大の共同調査に、参政権問題に関する項目があった。この問題での大掛かりな意識調査としては、2000年11月の同じ朝日新聞の全国世論調査以来ということになる。

 産経新聞も8月28日付で読者アンケートを行った。約1万8500人から回答があり、9割超が反対だったと同紙ならではの数値を発表した。「週刊新潮」の8月13・20夏季特大号には民主党の支持団体の筆頭に民団の名をあげて、地方参政権付与は「中国人・韓国人による政治」であり、「これらが日本国民のための政治でしょうか?」といった「意見広告」も載った。

 B 産経新聞の意図的な企画や一部週刊誌を使っての謀略宣伝、ネット・ウヨクの書き込みなどを含めて、参政権問題が隠然とした争点だったことは明らかだ。賛成・反対を問わず、相当範囲で意識する対象になったと考えていい。

 A 民団は地方議会での意見書採択、マスコミ・知識人への働きかけ、大規模な集会・デモの敢行など世論喚起を図る一方で、日本の主要政党や各議員に要望活動を展開してきた。もちろん韓国の政府にも直接協力を要請するばかりか、韓国がアジアで初めて定住外国人に地方参政権を付与する道まで開いた。

 多様な活動を展開してきたにもかかわらず、国政選挙に際して候補者の段階から接触し、参政権への態度を確かめ、当選するよう組織的にバックアップしたのは初めてだ。民団の影響力と参政権への問題意識の浸透は堅実な広がりを持ったと言える。

■□
楽観論も生まれたが
民主の姿勢に期待

 −−安定多数を確保した民主党を中心とする「連立政権」が誕生する。参政権の付与に賛同する議員も増えた。地方参政権獲得は確実になった、という楽観論が生まれても不思議はない。

 A 「民主党政策集 INDEX2009」には、「民主党は結党時の『基本政策』に『定住外国人の地方参政権などを早期に実現する』と掲げており、この方針は今後とも引き続き維持していきます」と明記されている。このような政党が308議席を確保した意味はやはり大きい。

 これまでの閉塞感を打破し新しい地平を臨む位置に立てた。展望が開けると逆に、身が引き締まるものだ。全国の幹部は今からが本当の正念場だと覚悟している。

 B 民主党の執権によって、かつてない好条件が生まれたのは事実だ。公明、共産、社民の各党も基本姿勢に変わりはない。しかし、楽観が許される状況ではないだろう。肝心の民主が党内に少なくない反対勢力を抱えている上に、新人が143人と増え所帯が大きくなった分、統制がとりにくくなることも考えられる。

 C 主要6政党の党首討論会での鳩山代表の言明を待つまでもなく、民主党の首脳陣はこれまで一貫して、民団に対して直接、付与に全力を尽くす旨の約束を繰り返してきた。

 結束力については未知数だが、同党は党論として付与推進を確定しているだけでなく、何よりも首脳陣がこぞって付与の立場で一貫しているのは何より心強い。期待することが大切だ。

■□
政局との兼ね合いは
根強い反対勢力 実現してこそ歴史的政権交代

 −−民主党内部の結束と連立与党間の連携の行方が今から注目されている。政局によっては地方参政権問題が登場する余地は狭まる。

 A 自民党は選挙期間中、民主党との違いを強調するためか、保守・タカ派色をより鮮明にした。投票日当日の各紙に載った自民党の全面広告は「日本を壊すな」と大書されていた。

 景気を後退させ日本経済を壊すな、特定の労働組合の思想に従う「偏った政策」を許すな、信念なき安保政策で、国民の生命を危機にさらしてはいけない、といった調子だった。参政権に対しても「日本を壊すな」と言って猛然と反対してくる可能性は排除できない。

 C 民主党もこれまでと立ち位置が違ってくる。与党になれば攻めよりは守りに軸足が移り、野党の時の果敢さが弱まることはあり得る。

 しかし、民主党は1998年10月に、公明党(当時は新党平和)と付与法案を共同提案した。その法案は公明党の全面的な協力によって作成されたものだ。民主党には最初の提案政党としてのメンツ、公明党との連携という実績もある。何より党論がある。

 A この問題で忘れてならないのは、主要政党のなかで、党として参政権にあからさまに反対する、あるいは反対できる政党は、本来なら、自民党を含めて存在しないということだ。

 B その通り。99年10月には自民党、自由党、公明党のいわゆる自自公連立政権の政策合意があった。2000年1月には自民、公明、保守の3党がやはり政策合意をし、保守党が自民に吸収された後の自公連立でも、その政策合意は有効だった。04年2月に与党の公明党が単独で提案した際には、自民党はそれを事前に了解している。政治道義から言えば自民党も反対できる立場ではない。

アジア重視実体化にも

 A 結局は、強烈なインパクトをどう与えるか、にかかる。日本は今、問題を抱え過ぎている。失業率が最悪を記録するなかで景気対策や雇用格差の解消、老人介護や子育ての支援、医療や年金制度の蘇生、地方の活力振興、そして財源確保など急ぐものばかりだ。

 地方参政権は反対・抵抗勢力が根強く、付与したからと言って内政上の大きな得点にはならない。要するに、難問山積の国政にあって、割が合わない課題と受けとめられかねない。民主党が一部世論の反発や党内葛藤を覚悟のうえで、推進できるよう民団としても環境を整えることだ。

 B 別な言い方をすれば、特別政策であるがゆえに、大胆に打って出ることも可能だろう。アジアを重視し東アジア共同体構想を掲げる民主党としては、日本がアジアのリーダーの一員となる姿勢を鮮明にする意味でも、地方参政権付与は重要なメッセージになるはずだ。歴史的と言われる政権交代を象徴することにもなろう。

 C 話はちょっと飛ぶが、李明博大統領は光復節慶祝辞で冒頭、国民、北側同胞、在外国民に次いで初めて「100万の外国人住民の皆さん」と呼びかけた。5年前、定住外国人に地方参政権を付与したこと、つい最近外国人住民が100万人を突破したことを十分に意識した言葉だ。

 さらに李大統領は、韓国は近い将来、世界の人口の半分と自由貿易協定(FTA)を結ぶ唯一の通商国家となる。民族だけを優先する狭い視野から脱し、世界を地平として新しい歴史を創る、と強調した。生意気を言わせてもらえば、日本もこうした発想に耳を傾けるべきではないか。

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民団 どう動くべきか
賛成議員の上積み急ぐ

 −−政局についてあれこれ論じるのは本紙の立場ではないとしても、新勢力図がどのような力学を生み出すのか、鋭意注視しながら、参政権早期獲得へ動かねばならない。

 A 本紙の暫定集計によれば、今回の選挙の結果、付与賛成の議員は250人を数え、反対派は133人にとどまった。賛成派は最終的に、少なくとも280人は超える展望だ。すべての議員の態度をニュアンスまでしっかり汲み取りながら、賛成議員のいっそうの上積みが急がれる。

 B 東北の選挙区で民団が積極的に推した民主党議員は、民団とのつながりがかねてから強く、参政権に積極賛成で知られている。だが、その議員は選挙直前、「慎重に進めたい」として民団に理解を求めた。「政界の混乱も予想される。政権を取っても直ちに実現できるかどうか。戦略・戦術を立てて、不毛の論争にならないようにしたい」という微妙な言い回しだった。

 C いよいよ本番となれば、賛成・反対・中立について、きめ細かな確認が必要になる。積極賛成でも妨害を排してまでやる覚悟なのか、中立というが実はどうなのか、とりあえずの、あるいはカモフラージュの態度ではないのか、反対でも党議拘束がかかればそれに従うのか、などだ。

 −−新政権の登場によって、参政権問題は日本の針路との関連で論議されるのかに注目したい。これは本紙が常々主張してきたことだ。日本にとって、地方参政権問題はメインディッシュでないことはもちろん、前菜でもデザートでもないだろう。だが、日本という家庭が絶やしてはならない糠漬けの、その糠床を豊かにする隠し味のようなものだと思う。全国の民団幹部らは新議員との日常的な交流を深め、参政権付与に対する姿勢をより確かなものにするよう、すでに動いている。法案の早期提出と立法化に向けて勢いをつけたい。

(2009.9.2 民団新聞)
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