アメリカの大学で大学生が銃を撃って32人を次々に撃ち殺すという事件が16日起きました。
普通の大学生がどうして拳銃をもっているのでしょう。
アメリカでは、一般の家に猟銃やけん銃があるのは、珍しいことではありません。州によって違いますが、年齢などの条件をクリアすれば、普通の人でも銃をもてるのです。
今回銃を撃ったのは、韓国人のチョ・スンヒ容疑者です。チョ容疑者は、銃の店やインターネットで、普通に銃を手に入れていました。
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アメリカでは、どうしてこんなに簡単に銃が手に入るのか。それはアメリカの国の歴史と関係しているのです。
300年以上前、イギリスからやってきた人たちによって、アメリカの国作りがはじまりました。人々は西へ西へと移り住んでいきました。
そのころは役所も警察もありません。だから、人々は家族を守るため、銃を持って危険と立ち向かったのです。
こうした伝統があるので、自分たちを守るために、銃を持つのは当然だ、と思う人がアメリカでは多いのです。
その後つくられたアメリカの憲法には、こう書かれています。「人民が武器を持つ権利を侵してはならない」。
つまり、国民が銃を持つ権利は、憲法で認められていると考えるアメリカ人が多いのです。
こうした伝統をもつアメリカ。今では役所もでき、警察官もちゃんといます。
でも、銃を持つという伝統や、憲法が認めていると考える人が多いので、普通の人が銃を持つのはごく当たり前のことなのです。人口3億人のアメリカで、一般の人が持っている銃の数は、2億丁に上ります。銃で殺される人の数は、毎年1万人以上います。ちなみに、日本では去年、銃で殺害された人は2人でした。
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そして、今回のように学校で銃が撃たれるという事件も珍しくありません。
たとえば1999年、コロラド州のコロンバイン高校で、生徒2人が銃を乱射し、生徒13人が死亡するという事件がおきました。
2000年にはミシガン州の小学校で、小学1年生が同級生を撃ち殺すという事件もおきました。
最近では、去年ペンシルベニア州で、男が銃を乱射し生徒5人が亡くなっています。
今回、バージニア工科大学では、32人が射殺されました。これまでアメリカの学校で起きた銃の事件としては、もっとも被害が大きい事件となりました。
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銃を持つ権利があると考える人が多いアメリカですが、こんな事件が起きるたびに、銃が出回らないようルールを厳しくすべきだという意見が強くなります。そして国に、もっと厳しいルールを作るよう求める運動も起きてはいます。
でも、銃をもつルールを厳しく制限するということは、実はなかなか進みません。
銃を持つという伝統があるからなのですが、全米ライフル協会という、銃を持っている人たちの団体が、銃の規制に反対しているからという理由もあるのです。300万人の会員がいるこの団体は、「銃を持つのは国民の権利だ。人を殺すのは銃ではない。人が人を殺すのだ」と主張しています。そして大統領をはじめ、政治家たちに働きかけて、銃の制限が進まないよう活発に活動しています。
銃をもつことに賛成する議員の選挙は応援し、反対する議員は応援しないのです。だからこの団体はとても力をもっているのです。
ただ、この事件を受けて、アメリカでは銃を規制しようという声も大きくなってきています。
銃を規制する動きがどれだけ広がるのか、注目されているのです。