2009年9月3日7時19分
仲間が集まって暮らすアパートの前で話し合うロヒンギャの人たち。野菜も自分たちで作って食事の足しにする=群馬県館林市、樫山写す
「日本では食べていけない。ミャンマー(ビルマ)に戻れば迫害される」。軍事政権から逃れ、日本で難民認定申請をしている少数民族「ロヒンギャ」の人たちが群馬県館林市で身を寄せ合って暮らしている。自動車部品工場などで得た収入を分け合ってきたが、不況で仕事を失う人が急増。「そろそろ限界」と悲鳴があがる。体を壊す人も出始めた。
ミャンマーの軍事政権はロヒンギャを国民とは認めず、パスポートも作れない。資産没収や強制労働も頻繁で、家を焼き払われることもあるという。
日本に逃れて来るロヒンギャの多くは、まず徒歩や船で近隣国に密入国。そこで稼ぐなどした金でブローカーから偽造パスポートを買い、90年代初め以降、成田空港などから入国してきた。館林へはブローカーから知らされた連絡先を頼って集まるようになったという。現在、約200人が住む。
日本での難民認定への道は険しい。現在申請中の人は60人で、今まで認められたのは11人だけ。母国でデモに参加したことで、何度も拘束され、家族が警察に連行された経験を持つソールウィンさん(37)は00年に日本に来たが、最近、申請を却下された。「退去命令の前に、もっと状況に耳を傾けてほしい」
「せめて働く資格があれば」と在日ビルマ・ロヒンギャ人協会のゾーミントゥッ会長(37)は話す。多くは就業資格を持たないが、それでも今までは職を得られた。しかし、04年から「不法滞在者を半減させる」という法務省の方針で、雇い主に対する入管の指導が厳しくなった。
拍車をかけたのが昨秋からの経済危機だ。就労資格を持つ人さえ解雇され、毎日の食事を晩1回で我慢する人も少なくない。金銭や食糧のサポートをしている難民支援協会(東京)は「腎臓結石を患う人が目立つが、病院に行く金がない」という。