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政権交代:地域経済はどう変わるか/中 全国最低賃金800円

 ◇社長「会社吹っ飛ぶ」--「消費減に歯止め」評価も

 現在の1年間の利益が3000万円程度なのに、約3900万円も人件費が増える--。

 福岡市でビルメンテナンス会社を経営する男性社長(61)は、民主党のマニフェスト(政権公約)に基づいて試算した結果に頭を抱えた。「ワーキングプア(働く貧困層)の脱却支援」のため、全ての労働者を対象に「全国最低賃金」として800円想定を掲げた。

 日給や時給で給与が決まる同社の正社員・パートは合計で約600人。全員の給与を時給に換算した場合、平均で約750円になる。もし800円まで引き上げられれば、利益が人件費の増加分で軽く吹き飛ぶ計算だ。

 特に昨年秋のリーマン・ショック以降、取引先の業況が悪化。契約価格の引き下げを求められることも多くなった。男性社長は「人件費の上昇分を価格に上乗せできればいいが、今の経済状況ではまず無理。うちのような中小企業では、それこそ会社が吹っ飛んでしまう」と困惑を隠さない。

 08年度の福岡県の最低賃金は1時間675円と、全国平均(703円)を下回る。全国で最も低いのは鹿児島、宮崎、沖縄県の627円だ。低所得者層への配慮から各地で今月末以降、09年度の最低賃金が引き上げられる見通しだが、九州・沖縄・山口では引き上げ幅が1~5円にとどまる。

 民主党は「全国最低賃金」の設定時期を明示していないが、短期間で800円まで上がれば、過去にない上昇スピードになるのは確実だ。「最低賃金の全国平均1000円を目指す」ともうたっており、民主党の支持母体の連合は「勤労者生活の安定・安心を確保し、個人消費の落ち込みに歯止めをかける必要がある」と引き上げ方針を評価する。

 ただ、すでに過去最悪となっている完全失業率(7月、5・7%)がさらに上昇するのではとの懸念もある。九州大の今井亮一准教授(労働経済学)は「疲弊が進む地方経済の実情を考えると、『全国最低賃金』の設定は企業側が人件費負担に耐えられないのではないか。パートの多い小売業など労働集約型産業で特に雇用が急激に減りかねず、失業率が上昇する恐れがある」と指摘している。【桐山友一】

毎日新聞 2009年9月3日 西部朝刊

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