ニュース:地方 RSS feed
選挙を振り返って 丹羽文生・拓殖大海外事情研究所助教
政権交代が実現した今回の衆院選。都内でも民主は圧倒的な力を見せ、前回の郵政選挙とは真逆の結果となったのはなぜか−。拓殖大海外事情研究所助教で政治学が専門の丹羽文生氏に聞いた。(聞き手 安岡一成)
−−衆院選を振り返って
「容易に政権選択ができてこそ本来の議会制民主主義。今回は二大政党時代への芽がはっきり見えた」
−−民主勝利のポイントは
「前回の選挙では『郵政民営化』と叫ぶだけで自民が勝った。これを『政権交代』に置き換えただけ。自民は民主の土俵に引きずり込まれた。PR動画にしても、麻生太郎首相の演説にしても中傷一色で、野党になる準備をしていたとしか思えない」
−−勝利の功労者は
「小沢一郎氏。論争が好きで選挙活動にふまじめだった党を筋肉質にした。具体的には、抜き打ちで事務所を訪問したり、師匠の故・田中角栄氏直伝の『戸別訪問3万軒、つじ説法5万回』のどぶ板活動をたたき込んだり、勝てそうな候補に資金を傾斜配分したり」
−−マニフェストにはバラマキが目立った
「有権者の多くが『子ども手当て、公立高校の無償化、高速道路の無料化』などのバラマキに飛びついた。そういう政治は田中氏がやってきたこと。民主がこれを始めたのは前回の参院選からで、小沢氏が表に出たころと一致する。昔の自民政治を今、民主がやり始めた。有権者にも厳しい監視が求められる」
−−東京の選挙で最大のポイントは
「都議選の影響が大きかった。象徴的なのが1区と12区。1区は与謝野馨氏が千代田選挙区でベテラン都議を落としたことが響いた。(太田昭宏公明党代表が敗れた)12区は、都議選大敗の余波で自民の都議・区議の動きが鈍かった。公明支持者も都議選でエネルギーを使い果たしていた」
−−ほかの特徴は
「大物ぞろいの東京で、無名の民主新人が軒並み勝った。党も予想外のはず。地元への利益誘導をやめ、二大政党制下における政策を軸とした選挙を目指すなら、基本的に候補は党のマニフェストのスポークスマンであればいい。しかし、民主候補の中にはスローガンを連呼したり握手をするだけでスポークスマンにすらなっていない人もいた」
−−今後の政界予測を
「勝負師の小沢氏が政権を裏で操るなら、弱った自民をたたきつぶし、政界再編をやるために来年夏に衆議院を解散して、衆参ダブル選に持ち込む可能性がある。スリリングな1年はもう始まっている」