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−透析導入時の社会保障−
 透析を導入したら医療費はどれくらいかかるのか、ご存じですか。
 透析導入時の医療費や利用できる福祉サービスなどについて簡単にみてみましょう。

●透析に関わる医療援助
 人工透析は外来透析で1ヶ月約40万円もかかるとても高額な治療です。 ですが、健康保険法を根拠規定とした医療保険の「高額療養費」の特例が適用になるので、1ヶ月に1万円 になります(所得の多い方は2万円)。この制度を利用するには、加入している健康保険の窓口で手続きをし、「特定疾病療養受療証」を発行してもらいます。
 原則 申請した月の1日に遡り有効となりますが、健康保険組合によっては異なる場合がります。また、自己負担分の1万円(2万円)は医療提供施設別・入院・外来別となりますので、場合によっては1ケ月分の医療費負担が2万円〜4万円になることもあります。
(入院時の食事代などは自己負担です。)

 次に、更生医療について。更生医療は、身体障害者が障害を軽減し、生活上の便宜を増すことを目的とした制度で、1972年(昭和47年)から透析患者は身体障害者福祉法の対象となり、障害の程度が認定基準に達すると、「身体障害者手帳」を取得することが可能となりました。
これにより、透析医療にも更生医療給付が適応となり、自己負担分の更なる軽減が受けられるようになりました。(公費負担)(図1)

 なお、2006年4月からは「障害者自立支援法」の施行により、更生医療制度は
「自立支援医療」として新しい枠組みの中へ統合され、世帯の所得状況に応じて自己負担額が設定されるようになりました。


 さらに、都道府県や市町村による心身障害者医療費支給制度が設けられており、健康保険の自己負担分について支給が受けられます。
 しかしながら、この制度は都道府県や市町村によって助成内容が異なります。

 また、老人保健の場合でも、1ヶ月の自己負担限度額が公費負担となります(図2)。
65歳以上の方や、40歳以上で糖尿病性腎症の方は介護認定を受けた上で 介護保険を利用することもできます。

 医療保険の高額療養費特例の利用も、公費負担の利用も複雑な手続きが必要です。
またそれぞれの必要書類や提出先なども違います。
病院には「医療ソーシャルワーカー」という福祉の専門家がおりますので、気軽に相談して便利な仕組みを上手に利用しましょう。
 

●身体障害者(1級)に該当

 慢性腎不全により透析を導入すればたいていの方は身体障害者手帳(1級)に該当します。また、腎臓を移植したあとでも、免疫抑制剤などを飲んでいれば身体障害者手帳の対象になります。

 身体障害者手帳(以下手帳)とは、身体障害者であることを証明するものですが、透析を導入したら自動的に手帳が送られてくるわけではありません。前の項で述べた「公費負担」を利用する場合にも、手帳が必要になるので、本人の住民票がある市区町村の福祉担当窓口に申請をし、手帳を発行してもらいましょう。申請の仕方についても、医療ソーシャルワーカーや各自治体の福祉担当窓口に相談しましょう。

 <関連サイト>
 高額療養費制度お助けガイド (http://www.az-oncology.jp/guide/index.html)

●利用できる福祉サービス
 身体障害者手帳を提示することによって、次のような福祉サービスを利用することができます。
@特別障害者手当や児童扶養手当の受け取り(ただし各手当に条件あり)、A交通機関(タクシー、鉄道、バス、飛行機、有料道路など)の料金割引、B駐車禁止区域での駐車許可証の発行、C福祉定期預貯金の利用、など。

 また、次のような税の減免も利用できます。 @所得税の控除、A相続税の控除、B預貯金・国公債の非課税、C住民税の控除、D自動車(軽も含む)税や自動車取得税の免除・減免、ENHK受信料の減額など です。

 ※上記福祉サービスは、身体障害者等級・種別・所得・居住地の福祉制度により若干異なる部分があります。詳しくは居住地各自治体の福祉担当窓口ヘ問い合わせ・確認の必要があります。 (全腎協 高齢透析者のためのハンドブックから引用)

◇患者会の成果◇
 今回紹介した福祉制度は、初めから誰もが利用できた訳ではありません。
1967年、透析に健康保険が適用されました。そこで当時の透析患者たちは全国各地で「患者会」を結成し、透析医療の進歩を促したり、国や地方自治体の制度を改善してきたのです。

 「金の切れ目が、命の切れ目」といわれた時代に、まさに命がけの運動の成果によって、1972年の「医療費自己負担を公費負担(更生医療)」 も 「身体障害者手帳の交付」 も、患者会の活動で得た成果です。


●透析導入された皆さまへ
 現在の医療制度 や 治療環境が、「当たり前ではない」ことがお分り頂けましたでしょうか。
 これらの医療制度を支えるためにも、透析を導入したら患者会への入会を検討してほしいのです。
 患者会に入るだけで、患者会活動への貢献になります。 また、先人の方々への
恩返しという面もあります。
 現在 透析をしている多くの諸先輩方から教えられることがたくさんあるはずです。


<参考資料>
●身体障害者福祉法
1.目的
身体障害者福祉法が障害者福祉の実施のうえで中心となっている.身体障害者の更生を援助し,その更生に必要な保護を行い,生活の安定に寄与し,福祉の増進を図ることを目的としている.

2.身体障害者手帳
 各種の福祉処置が受けやすいように手帳が交付される.この手帳の交付を受けていることが,その対象要件となっていることがほとんどです.
 障害の範囲は,視覚障害,聴覚・言語障害,肢体不自由,内部障害に分類される.障害等級は,1〜6級に分類される.透析患者など,内部障害については等級は1,3,4級のみとなって います.
例:内部障害の腎機能障害における認定基準と等級
 

腎臓機能障害認定基準

障害者等級

4級

3級

1級

腎機能検査

血清クレアチニン値
3.0mg/dL以上,5.0mg/dL未満
内因性クレアチニンクリアランス値 20mL/分以上,30mL/分未満

血清クレアチニン値
5.0mg/dL以上,8.0mg/dL未満
内因性クレアチニンクリアランス値
10mL/分以上,20mL/分未満

血清クレアチニン値 8.0mg/dL以上
内因性クレアチニンクリアランス値
10mL/分未満

生活活動能力

家庭内での普通の日常生活活動,または社会でのきわめて温和な日常生活活動については支障はないが,それ以上の活動は著しく制限されるか,または下欄の所見のうちいずれか二つ以上の所見のあるもの

家庭内でのきわめて温和な日常生活活動には支障はないが,それ以上の活動は著しく制限されるか,または下欄の所見とうち,いずれか二つ以上の所見があるもの

自己の身辺の日常生活活動が著しく制限されるか,または血液浄化を目的とした治療を必要とするもの,もしくはきわめて近い将来に治療が必要となるもの

その他

・腎不全に基づく末梢神経症
・腎不全に基づく消化器症状
・水分電解質異常
・腎不全に基づく精神症状
・レントゲン上の骨異栄養症
・腎性貧血
・代謝性アシドーシス
・重篤な高血圧症
・腎疾患に直接関連するその他の症状

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手続きの方法:
  県の指定医の診断を受け,「身体障害者診断書・意見書」を作成してもらうこと.
   (全ての医師が指定医ではない)
  指定医が記入した診断書,写真,印鑑を添えて、住民登録のある居住地の市町村役場 障害福祉課などに申請.  申請後,1〜2ヶ月で手帳を受け取ることができる.

  障害者手帳が交付されると、透析導入前でも(3,4級)、都道府県・市町村によっては医療費助成が受けられます.

 


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