8月も残り3日。終盤を迎えたこの夏は、長雨や日照不足で野菜類の価格が高騰し、夏物商戦も盛り上がらなかった。新型インフルエンザの流行も暮らしにじわりと影響を与えている。一方、ETC(自動料金収受システム)を対象にした高速道路の大幅割引で行楽や帰省にマイカーを使う人は大幅に増えた。去りゆく夏を振り返ると--。
ETC効果で国内レジャーはマイカー利用が「独り勝ち」。お盆期間の高速道路の交通量は前年より14%増加し、30キロ以上の渋滞も2.3倍に増えた。
これに対し、JRグループ6社の7月17日~8月18日の利用者数は前年比90%で、過去最大の落ち込み。JR東日本は「不景気と天候不順が響いた。ETC割引の影響もあるだろう」と分析する。空の便も低調で、お盆期間の利用者が10%減った全日空の担当者は「車で行ける場所を選んだ人が多かったのかも」と話す。
千葉県鴨川市の水族館「鴨川シーワールド」は、入館者数が前年より6%増えた。広報担当者は「8月からETC車が東京湾アクアラインを800円で走れるようになった効果では」とほくほく顔。
同じ千葉県でも勝浦市の海水浴場では、雨が多かった7月中の人出が約4万人と前年より4割も減った。8月以降はやや持ち直したものの、同市観光課は「雨にたたられた」と恨み節。
野菜価格の高騰は家計を直撃した。農水省の17~21日の調査では、レタスは例年より6割高(1キロ当たり642円)▽ジャガイモは5割高(同422円)▽タマネギは3割高(同267円)。
日本一のレタス生産量を誇る長野県川上村を抱えるJA長野八ケ岳の三石博之・農業部次長は「7月は長雨と日照不足。今は逆に干ばつ気味でダブルパンチ」と話す。県園芸畜産課などによると、レタスやキャベツなど露地栽培の野菜に特に影響が出ており、7月後半からの収穫量は平年の約3割減だという。
コメどころ新潟県の水田では、稲穂がほぼ出そろい、実りの季節に入る。県農林水産部によると、お盆時期に晴天が続いたものの、気温が上がらなかったため、平年と比べ実がつくまで時間がかかりそうだという。
家電販売はエコポイント導入の効果が期待されたが、冷夏と不況でエアコン販売が伸び悩み、苦戦を強いられた。ビール類やアイスクリームなど定番商品の売り上げも落ち込む中で、特需に沸いたのが新型インフルエンザの感染予防商品だ。
明治製菓(東京都中央区)では、うがい薬の注文が8月中旬から前年比5倍と急増。広報室は「秋から冬にかけてさらに流行が予想されるので、品薄にならないようにしたい」と話す。大幸薬品(大阪府吹田市)では、空気中に低濃度の二酸化塩素を発生させ、ウイルスを除去する製品が好調。7~9月の売り上げを前年比7.7倍と予測したが「これを上回る出荷状況で、在庫はほぼゼロ」(広報担当者)という。
毎日新聞 2009年8月29日 13時51分(最終更新 8月29日 18時12分)