【ワシントン草野和彦】アフガニスタン駐留米軍のマクリスタル司令官が8月31日、現地情勢報告書を示したことを受け、オバマ政権は追加増派の是非の検討に入る。米世論に配慮し慎重にならざるを得ないとの見方が支配的だが、現場サイドからすれば勝利のために追加増派は不可欠でオバマ大統領は苦しい選択を迫られている。
「現場を訪れたほぼすべての専門家が3~8旅団(最大4万人)規模の増加(の必要性)を話題にした」。司令官の専門家チームの一員、米戦略国際問題研究所(CSIS)のコーデスマン氏は31日付ワシントン・ポスト紙への寄稿で指摘した。
報告書には米軍の追加増派は記されておらず、司令官は改めて追加増派を提言する見通し。
その根拠になるとされるのが、アフガン治安部隊の増強だ。報告書では増強規模を当初予定の約22万人からほぼ倍増させると言及したとの報道があり、その訓練や増強終了までの治安維持のためにも米軍が必要となる。
2万1000人の米軍増派を含むアフガン包括戦略の発表から既に5カ月が経過した。だがギブス大統領報道官は31日、「この戦争は何年間もないがしろにされた」と述べ、依然として治安悪化の責任を前政権に転嫁している。
世論調査では米国民の半数以上が「戦う価値がない」とアフガン戦争を位置付け、医療保険導入を巡り、大統領自身への支持率も50%にまで低下した。一方、2万1000人の増派は年末までに終了し、駐留米軍は6万8000人規模になるが、それでも成果が上がらない場合、大統領は窮地に追い込まれそうだ。
コーデスマン氏は、追加増派を含む新たな「投資」をしない場合、「ブッシュ前大統領のように、戦時で失敗した大統領になるだろう」と警告している。
毎日新聞 2009年9月2日 東京夕刊