裁判員初の「性犯罪」審理、5人が被告人質問
青森地裁(小川賢司裁判長)で行われている全国3件目の裁判員裁判の公判は2日午後、被告人質問が行われ、男性5人、女性1人の裁判員のうち、5人が田嶋靖広被告(22)に質問した。
裁判員では初めての性犯罪の審理。女性裁判員が被告の行動に率直な疑問を投げかけるなど、市民感覚を生かしたやりとりが展開された。
◆女性裁判員、率直な疑問投げかけ◆
田嶋被告は窃盗目的で女性宅に侵入し、帰宅した女性に包丁を突きつけて乱暴、現金を奪ったうえでけがを負わせたなどとして、強盗
裁判員が被告人質問を行ったのは、この日の閉廷間際。弁護側、検察側双方の質問が終わった後で休憩となり、裁判員と裁判官3人は中間評議のため法廷を出た。17分後、裁判員らとともに法廷に戻った小川裁判長は再開を告げ、「裁判員から質問ありますか」と左右を見回した。
男性の「裁判員1番」がすかさず手を挙げ、4事件のうち、最初に起こった強盗強姦事件前の被告の行動を確認した。さらに「裁判員6番」の質問に続き、「裁判員2番」が3、4番目の事件で「手錠とニット帽を用意して、なぜ包丁を用意しなかったのか」と質問。田嶋被告は「頭がそこまで働いていないというのか、用意しようとは考えが働かなかった」と答えた。
続いたのは女性の「裁判員5番」。最初の強盗強姦事件で室内を物色中に被害者が帰宅した際、「どうして逃げなかったのですか」と穏やかな口調で質問した。田嶋被告は「今考えれば逃げられたが、急に人が帰ってきて足がすくんで扉に隠れた」と説明。すると、女性裁判員は「その時逃げていたら、Aさん(被害者の女性)の事件はなかったと思うのにねえ……」と悲しそうな表情で言葉を継いだ。田嶋被告は、黙ってうなずいた。
検察側は短期間で4事件を審理してもらうため、法定刑が重い強盗強姦事件2件に重点を置き、合計2時間半にわたって書証の取り調べを行った。窃盗と窃盗未遂事件は、証拠を絞り込んで20分の取り調べにとどめるメリハリをつけた。
◆男女で理解が異なる恐れ…女性団体◆
女性問題に取り組む団体のメンバーや専門家も、裁判に高い関心を寄せた。
女性被害者を支援する青森市のNPO法人「ウィメンズネット青森」のメンバーの女性(45)は公判を傍聴。裁判員に犯行状況を再現した写真を示したことについて、量刑を決める上で必要な情報としながらも、「被害者の心情を考えると、どこまで出すべきか判断は難しい」と話した。
さらに、公判で朗読された被告の供述調書で、被害女性の言動を「生意気」と感じたとした部分を挙げ、「女性ならあり得ないと思っても、男性だったら被告の気持ちが理解できてしまうかもしれない」と、性別によって受け止め方の異なる恐れがあることを懸念。「裁判員は男女同数に近いほうがいいのではないか」と指摘する。
性犯罪やDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者を保護するなどの活動を続ける最大の目的は、「二次被害」の防止。佐藤恵子副理事長(60)は「裁判員の前で何度も被害状況を読み上げられ、詳細に再現されれば、被害女性は再び傷ついてしまう」と心配する。
また、傍聴席にいた中京大法科大学院・柳本祐加子准教授(ジェンダー法学)は、被害者のプライバシーにかかわる証拠調べなどが、裁判官や裁判員の前のモニターのみに映されたことについて「被害者を守るという点では評価する」とした。一方で、「事件を再現する写真などは裁判員に与える負担が大きい。性犯罪を制度の対象から外すことも検討すべきだ」と話した。
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