ここから本文エリア

現在位置:asahi.comマイタウン岩手> 記事

民主 巧妙な戦略で圧倒

2009年09月02日

写真

投開票の翌日、会見で喜びを語る工藤堅太郎代表(左)=31日、盛岡市大通の民主党県連

写真

 総選挙の翌日、盛岡市の民主党県連で選挙を総括する記者会見に臨んだ工藤堅太郎・県連代表が上機嫌で切り出した。

 「県内を制覇させていただいたことで、小沢代表代行にも顔向けできる。政権交代につながったと思えば大変よかった」

 民主党県連が進めてきた「全県制覇」戦略が成功し、民主党が初めて県内の全選挙区で議席を独占した。

 「制覇」のために必要なのは、自民党の鈴木俊一氏が父・善幸氏の代からの地盤を守る岩手2区の奪取だった。小沢一郎氏も「2区で勝つことは、政権交代に等しい」と語り、「最重点区」として「人、モノ、金のすべてを投入」する作戦を採った。

 2区で二度目の挑戦となった畑浩治氏には支持者回りと街頭活動に専念させ、4人の県内選出の参院議員に担当地区を割りあてて、秘書、後援会などを総動員した。一方で自民党の鈴木俊一氏陣営は、ほぼ独力での選挙活動。「多勢に無勢」(同氏秘書)の状況は明らかだった。

 だめ押しとなったのは、公示直前に擁立を決めた2人の比例単独候補だ。

 民主党が比例区でも得票を伸ばすのが予想されたため、「比例候補をリストアップせよ」との党本部からの要請を受け県連が決めたのは、岩手2区内でともに首長と県議を経験した2人――元宮古市長の菊池長右エ門氏(75)と、元雫石町長の川口民一氏(78)だった。

 2人はすでに首長と県議の職からは引退したが、それぞれの地域で今も影響力を持つ。単なる「支援者」ではなく候補者としてフル回転することで、票の上積みが期待できた。

 いずれも候補者としては高齢だが、実はそれも計算に入っていた。ある民主党関係者は「若いと、次の選挙で処遇を巡りもめるかもしれない。でもあの年なら、仮に当選が1回限りでも文句は出ない」。菊池氏は当選後、「最後のご奉公と思ってがんばりたい」とあいさつした。

 「政権交代の風」が吹く中で、民主党は政策でも有権者の支持を集めていた=グラフ。そこに鈴木陣営関係者も「天才的だ」と舌を巻いた2人の擁立で、宮古市と雫石町で畑氏の得票が鈴木氏を逆転。勝利に結びつけた。

 県内の衆参両院議員9人はすべて民主党となり、岩手は名実ともに「民主王国」となった。国政でも政権交代の実現で「国政と県政のねじれ」も解消される形だ。工藤代表は「こんなに楽しい選挙はなかった」と満面の笑みを見せた。

 「民主一色」に懸念の声もある。元自民党県連幹事長の谷藤裕明・盛岡市長は1日の定例記者会見で、自民党の国会議員がいなくなったことに「幅広く理解を求めていく上ではバランスを欠く」と警戒感を示した。

 沿岸部の自治体幹部は「今まで省庁への陳情は鈴木さんにお願いしていたのだが、今後どうすればいいか。様子を見るしかない」。

 ある民主党県連幹部は言う。「鈴木さんを応援した人たちは、これから警戒しなければいけないでしょうね」

PR情報
朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

マイタウン地域情報

ここから広告です

広告終わり