写真:チャプリン来岐の様子、当時の通訳から取材
通訳を務めた辻種子さん(左)を取材する大野裕之さん=岐阜市、長良川鵜飼の観覧船上

 世界の喜劇王チャールズ・チャプリン研究の第一人者で、「日本チャップリン協会」会長の大野裕之さん(34)=京都市左京区=が1日夜、岐阜市を訪れ、1961年にチャプリンが来岐した際、通訳を務めた辻種子さん(88)=岐阜市明神町=から当時の様子を直接取材した。

 今年はチャプリン生誕120周年で岐阜市制120周年。親日家だったチャプリンは生前4回来日し、36年5月と61年7月の2度、長良川鵜飼を観賞するなど、岐阜市ともゆかりが深い。

 大野さんは本紙記事で、通訳としてチャプリンを案内した辻さんのことを知ったのがきっかけで、この日、辻さんに会いに来た。

 2人は長良川鵜飼を観覧船に乗って観賞。辻さんは61年にチャプリンを鵜匠宅に案内した際、鵜匠から「鵜飼の映画を作って」と頼まれたチャプリンが、にやっと笑って横を向き「昔は素朴で優雅だったのに商業的でショーのようになり、随分変わってしまったね。シークレットだよ」と言い、辻さんが訳さなかった逸話や鵜飼の道具に興味を示したことなどを語った。

 大野さんは「美の本質に鋭かったチャプリンは、戦前のかがり火だけの明るさだった素朴な鵜飼が好きだった。今夜初めて鵜飼を見て、彼が鵜飼を愛していたことがよく分かりました」と、当時に思いをはせていた。

 10月3日には、チャプリンの無声映画などを生演奏と生吹き替えで演出する「声優口演ライブwith山下洋輔」が、岐阜市の長良川国際会議場で開かれ、大野さんも駆けつける予定。