2008年上半期報 2008年(平成20年)1月〜6月 |
倒産件数は6022件、前年同期比11.6%の増加 負債総額は3兆194億6400万円、前年同期比17.4%の増加 |
---|
注)集計対象は法的整理のみ。ただし、2005年4月以降、集計対象を変更したことで、2001年上半期〜2005年上半期の数値との単純比較はできない。2005年上半期以前の数値は参考値として掲載している。
注)集計対象は法的整理のみ。ただし、2005年4月以降、集計対象を変更したことで、2001年上半期〜2005年上半期の数値との単純比較はできない。2005年上半期以前の数値は参考値として掲載している。
倒産件数 | 6022件 | 負債総額 | 3兆194億6400万円 |
---|
前 期 比 | 件数 | 8.2%増 | 2007年下半期 | 5565件 |
---|---|---|---|---|
負債 | 3.4%増 | 2007年下半期 | 2兆9191億7400万円 | |
前年同期比 | 件数 | 11.6%増 | 2007年上半期 | 5394件 |
負債 | 17.4%増 | 2007年上半期 | 2兆5725億5400万円 |
■件数
ポイント 6000件を突破、前年同期比11.6%の増加
2008年上半期の倒産件数は6022件となり、前年同期(5394件)を11.6%(628件)上回った。下記グラフから分かるように、集計対象変更後の2005年下半期以降、一貫して件数は増加しており、2008年上半期は6000件を超える高水準となった。
要因・背景 構造不況が続く建設業に加え、原料高関連の倒産が急増
1 景気減速を受け、「不況型倒産」が増加
2 原料高関連の倒産が235件に急増、すでに2007年の年間合計(229件)を上回る
3 公共工事削減、脱談合、原料高に苦しむ建設業の倒産が増加
■負債総額
ポイント 前年同期比17.4%の増加
2008年上半期の負債総額は3兆194億6400万円で、前年同期(2兆5725億5400万円)を17.4%(4469億1000万円)上回った。負債50億円以上の倒産は104件(前年同期75件)発生し、前年同期比38.7%の増加。
要因・背景 不動産業の“大型倒産ラッシュ”、地場大手・中堅クラスの倒産も散発
1 不動産市場の急減速により、中堅以下のマンション・戸建分譲業者や建て売り業者などの資金調達環境が悪化。不動産業者の“大型倒産ラッシュ”が発生
2 建設、小売業を中心とする地場大手・中堅クラスの倒産が散発
■業種別
ポイント すべての業種で前年同期比増加
業種別に見ると、7業種すべてで前年同期比増加となった。資金調達環境の悪化や販売不振が顕著な不動産業(201件、前年同期比+7.5%)や、構造不況が続く建設業(1633件、同+16.2%)、原油高騰の影響が深刻な運輸・通信業(216件、同+20.7%)の倒産増加が目立った。
要因・背景 原料高の影響を受け、内需関連の幅広い業種で倒産増加
1 不動産業・・・サブプライム問題による資金調達環境の悪化、販売不振から業界環境急変
2 建設業・・・公共工事削減、脱談合、原料高に、法改正と不動産市場の急減速が追い打ち
3 運輸・通信業・・・原油高騰が加速し、経営に深刻な影響
■主因別
ポイント 「不況型倒産」が大幅増加
主因別の内訳を見ると、「不況型倒産」の合計は4711件となり、前年同期を14.3%上回った。構成比は78.2%と高まり、2006年上半期(72.0%)以降、半期ベースで一貫して増加した。
要因・背景 景気減速、原料高から収益環境が悪化
1 原料高が加速し、価格転嫁できない中小・零細企業の収益環境が悪化
2 不動産市場が急減速し、販売不振、資金繰り悪化に苦しむ不動産業者が増加
■規模別
ポイント 小規模倒産が中心、中堅クラスの倒産増加も目立つ
負債額別に見ると、負債1億円未満の中小・零細企業の倒産は3563件で、前年同期を10.7%(343件)上回り、構成比は59.2%。一方、不動産業や地場大手企業の倒産も散発し、負債50億円以上の倒産は104件発生、前年同期比38.7%(29件)の増加となった。資本金別に見ると、資本金1000万円未満(1904件、前年同期比+12.0%)の小規模倒産が引き続き高水準。
要因・背景 中小・零細企業に加え、不動産業の大型倒産が急増
1 原料高が一段と加速し、価格転嫁できない中小・零細企業の倒産が増加
2 サブプライム問題発生後の業界環境の急変で、不動産業の大型倒産が急増
■地域別
ポイント 四国を除く8地域で前年同期比増加
地域別に見ると、9地域中8地域で前年同期を上回った。このうち中国(325件、前年同期比+56.3%)では前年同期比50%を超える大幅増加。近畿(1594件、同+9.4%)も増加が続く。一方、四国(128件、同▲5.9%)は前期比、前年同期比ともに減少となった。
要因・背景 中国は建設業・小売業、都市圏は小売業・サ−ビス業の倒産が目立つ
1 中国は、建設業、原料高・競争激化から小売業の倒産が高水準
2 都市圏では、原料高や消費低迷を受け小売業やサービス業の倒産が目立つ
■態様別
ポイント 会社更生法が大幅増加
態様別に見ると、破産は5426件(前年同期4869件)で前年同期比11.4%(557件)の増加となり、全体の倒産件数を押し上げる大きな要因となった。会社更生法は12件(同6件)に急増、民事再生法(393件)も前年同期比22.4%の大幅増加となった。
要因・背景
1 破産は、少額管財手続きの浸透により申し立て件数が増加
2 会社更生法は、権利関係の複雑な案件処理、経営責任明確化への要請などから全国的に増加
■業歴別
ポイント 業歴の浅い企業の倒産が増加
業歴別に見ると、業歴10年未満の倒産は1378件(前年同期1114件)発生し、前年同期比23.7%の大幅増加となった。一方、業歴30年以上の「老舗倒産」は1771件発生し、構成比は29.4%で全体の3割に迫る高水準が続いている。
要因・背景
1 資産背景に乏しい業歴の浅い企業の資金調達環境が悪化
2 過剰債務と本業不振により「老舗倒産」が高水準で推移
■上場企業倒産
2008年上半期は、巨額の粉飾決算が明らかとなったニイウスコー(株)(負債408億円、東京都、民事再生法、4月)や、反社会的勢力との関係が取り沙汰された(株)スルガコーポレーション(同620億円、神奈川県、民事再生法、6月)など6件(前年同期1件)に急増した。
個別事例を見ると、巨額粉飾や法令違反行為、“反社取引”などの発覚から、金融機関の継続支援を得られず、短期間で倒産するケースが目立っている。
近年の上場企業倒産は、2002年(29件)をピークに2006年(2件)まで、私的再建スキームの浸透などの影響を受け、減少を続けてきた。しかし、2008年は上半期だけで2007年の年間合計(6件)に並び、4年ぶりに2ケタの件数となる可能性が高い。
■大型倒産
2008年上半期の大型倒産で負債額トップは、旧・日本興業銀行系列の不動産会社、ケイアール不動産(株)(負債1677億6300万円、東京都、特別清算、4月)。次いで、2007年8月に倒産した麻布建物(株)の100%出資子会社、六本木開発(株)(同1340億円、東京都、破産、2月)。
負債上位の業種を見ると、ゴルフ場経営やバブル期前後に膨らんだ債務整理による案件に加え、近藤産業(株)(負債322億5800万円、大阪府、破産、5月)や、(株)レイコフ(同276億円、大阪府、破産、3月)など、不動産市場の急減速を背景とする資金調達環境の悪化から行き詰まる不動産業の大型倒産が急増。このほか、昭和ナミレイ(株)(同374億円、大阪府、民事再生法、6月)、(株)アリサカ(同213億3200万円、宮崎県、会社更生法、5月)など、地場大手・中堅企業の大型倒産が散発した。
■注目の倒産動向
原料高関連 235件に急増、すでに2007年の年間合計(229件)を上回る
2008年上半期の原料高関連の倒産は235件(前年同期93件)に急増し、前年同期比152.7%の大幅増加で、すでに2007年の年間合計(229件)を上回る高水準。NY原油先物相場(WTI、期近)が6月下旬に一時1バレル=140ドルを突破するなど原油高に歯止めがかからない。鋼材価格、食品価格の高止まりも続くなか、大企業では販売価格に転嫁する動きが広がってきた。しかし、中小・零細業者は価格転嫁が困難な企業が多く、収益環境は一層厳しさを増している。
改正建築基準法関連 施行1年間の累計で100件を突破
改正建築基準法関連の倒産は、2007年6月の施行から1年間の累計で105件となった(2007年10月から集計開始)。法改正による建築確認審査の遅滞により、住宅着工戸数が大幅に減少。建設、不動産業のみならず、周辺の内需関連業界にまで影響が広がった。2008年に入り、法改正の影響は緩和してきたとの見方もある一方、法改正直後の無理な資金計画がたたり、ここにきて資金繰りに行き詰まるケースが後を絶たない。
ホテル・旅館経営業者 前年同期比26.5%の大幅増加
2008年上半期のホテル・旅館経営業者の倒産は62件(前年同期49件)となり、前年同期比26.5%(13件)の大幅増加となった。地元観光客の減少から集客が伸び悩むなか、団体旅行から個人旅行への“消費者の旅行形態の変化”に対応できず、事業継続を断念する老舗旅館が相次いだ。また、過去の設備投資時の借入金が重荷となり、老朽化した施設に対して十分な新規投資ができないまま客離れをさらに招く、という負の連鎖に苦しむ事例も散見された。
広告業者 前年同期比17.0%の増加
2008年上半期の広告業者の倒産は55件(前年同期47件)となり、前年同期比17.0%(8件)の増加となった。景気動向や企業の経費削減の動向に左右されやすく、小規模な業者が乱立する広告業界。国内景気全般の減速などを背景として、規制強化が続く消費者金融を中心に広告需要が減退するなか、負債額1億円に満たない零細業者が多数倒産に追い込まれた。2008年に入り、広告業の売上全体が減少に転じるなか、厳しい経営環境が続いた。
今後の見通し
■6月の景気DI、4ヵ月連続で悪化し5年ぶりの低水準
2008年6月の景気動向指数(景気DI:0〜100、50が判断の分かれ目)は、前月比1.4ポイント減の32.7となり4ヵ月連続で悪化した。4月以降、悪化幅は拡大を続けており、2003年6月(30.8)以来5年ぶりの低水準となった。
■原油・素材価格が一段と高騰、企業の収益環境が悪化し個人消費も脆弱に
NY原油先物相場(WTI)が6月下旬に一時1バレル=140ドルを突破し、年初から4割上昇した。内需が弱いなか、企業の収益環境は厳しさを増しており、中小企業ほど価格転嫁が困難となって規模間格差は過去最大に広がった。
一方、これまで企業努力によって高騰する仕入れ価格の吸収を図ってきたものの、体力が限界に達している企業も多く、食料品など生活必需品の値上げが相次いだ。これが消費者の買い控えにつながる悪循環に陥っており、個人消費の動向を反映する「小売」が10業界別で最低の「建設」に近い水準まで悪化し、脆弱な個人消費が顕著となった。
■サブプライム問題で外需が減速、けん引役の「製造」や「東海」が最低水準に
サブプライム問題による米景気の停滞によって、国内でも幅広く景況感が悪化した。好調な外需によって日本の景気回復をけん引してきた「製造」は、2003年6月以来5年ぶりの低水準となり、自動車関連が低調で設備投資意欲が悪化傾向にある「東海」においても、同じく5年ぶりの水準に落ち込んだ。
■倒産件数6022件、景気減速の影響で増加基調強まる
2008年上半期の倒産は6022件発生し、前年同期の5394件を628件上回り、11.6%の増加となった。月別推移をみても、ほぼ一貫して前年を上回り、3月(1127件)、4月(1013件)、6月(1065件)と、1000件超えを3度記録。景気減速の影響から、倒産は2008年に入り増加基調を強めた。負債総額も3兆194億6400万円となり、前年同期比17.4%の増加。負債額が膨らんだ主な要因は、1不動産業の“大型倒産ラッシュ”、2地場大手・中堅クラスの建設、小売業者の倒産散発にあり、負債50億円以上の倒産が104件(前年同期75件)に増加した。
■不動産、建設、運輸・通信の3業種で、倒産増加目立つ
業種別では、不動産業の倒産増加が目立った。2008年に入り、サブプライム問題の影響による資金調達環境の悪化や販売不振が顕著となり、中堅以下のマンション・戸建分譲業者や建て売り業者の倒産が続発。とくに6月は46件に急増し、2006年3月(55件)に次ぐ過去2番目の高水準となった。不動産市場の急減速の影響は、構造不況が続く建設業者にも広がった。公共工事削減、脱談合、原料高、建築基準法改正による着工遅れの“四重苦”の状況にさらに追い打ちをかけ、前年同期比16.2%の増加となり、全体の件数を押し上げた。また、原油高騰の影響が深刻な運輸・通信業も、前年同期比20.7%の大幅増加となった。
■「不況型倒産」の増加続く、足元経済の減速を裏付け
主因別では、販売不振、業界不振などを主な原因とする「不況型倒産」の構成比が、78.2%となった。2006年上半期(72.0%)以降、2006年下半期(75.7%)→2007年上半期(76.4%)→2007年下半期(77.7%)と、一貫して「不況型倒産」の構成比が高まっており、足元経済の減速を裏付けた。また、原料高関連の倒産が235件発生し、すでに2007年の年間合計(229件)を上回る高水準となった。規模別では、収益基盤の弱い中小・零細企業の倒産が依然として中心ではあるものの、負債数十億円規模の中堅クラスの倒産増加も目立った。
■上場倒産が6件に急増、うち3件が不祥事発覚から短期間で倒産
こうしたなか、上場企業倒産が6件に急増した。上半期だけで2007年の件数(6件)に並んだうえ、7月5日に地場大手ゼネコンの真柄建設(株)(石川県)の倒産が判明し、2008年は4年ぶりに2ケタの件数となる可能性が高い。最近の上場企業倒産の特徴は、架空循環取引の発覚で倒産した(株)アイ・エックス・アイ(2007年1月)以来、巨額粉飾や法令違反などの不祥事発覚から短期間で倒産するパターン。2008年上半期では、ニイウスコー(株)(4月)、(株)アリサカ(5月)、(株)スルガコーポレーション(6月)がこのケースに該当する。背景には厳格監査を進める監査法人の存在が大きく、同様のパターンで倒産する事例が今後も続くとみられる。
■2008年下半期にかけても高水準で推移する見通し
2002年2月から続く戦後最長の景気回復局面は、終わりを迎えつつある。景気減速の影響は多方面に及び、外需減退や原料高で収益環境が一段と悪化しているうえ、金融機関の中小企業向け融資も昨年秋から減少に転じている。貸し倒れの拡大を懸念する銀行が融資先の選別をさらに強めており、中小企業の資金繰り悪化が懸念される。ガソリンや食料品など、原料高を最終製品に転嫁する動きが広がるなか、個人消費の一段の悪化も避けられない。これらの要因は、現状の倒産件数を押し上げる建設、小売、サービスなどの“内需関連業種”への影響が大きい。不動産市場の急減速の影響は、当面拡大していくことが予想されるうえ、外需減退による輸出不振と原料高の進行で製造業の倒産が増加する可能性もある。この結果、2008年下半期にかけても倒産は、上半期以上に増加基調を強めながら高水準で推移する見通しである。