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注目されるTwitter、記者が感じるその魅力とは

2009年9月1日

写真ITジャーナリストの津田大介氏

写真CNET Japanの永井美智子記者

写真津田氏や永井記者と、Twitterの「つぶやき」実況について語る朝日新聞社デジタルビジネスセンターのマッキー

写真マッキーのTwitter中継を元に、CNETスタッフが描いてくれた想像イラスト

「いま何をしているか」を140字でつぶやきあう、Twitter(http://twitter.com/)というサービスが注目を集めている。PCや携帯電話を使ってどこからでも書き込めるほか、知らない相手とでも簡単につながれる気軽さが人気を集めているようだ。

最近では企業の活用も進んでおり、米国ではDellやPePsiなど、日本では日本オラクルや福助などが公式アカウントを開設している。朝日新聞社(@asahi@asahicom)やCNET Japan(@cnet_japan@cnet_editorial)もそれぞれTwitterで情報を発信している。

Twitterの魅力はどんなところにあるのだろうか。6月10日に開催されたサッカー日本代表ワールドカップ予選の様子をTwitterで実況し、注目を集めた朝日新聞社の「マッキー」と、個人でもTwitterを使っているCNET Japanの永井美智子記者が語った。なお、モデレーターは、文部科学省文化審議会の委員会の様子をTwitterで中継するなどして1万人以上のフォロワー(読者)を持つITジャーナリストの津田大介氏が務めた。

●プロが集う朝日新聞、新しいもの好きのCNET Japan

津田:まずはお二人のプロフィールを教えて下さい。

マッキー:私は朝日新聞社デジタルメディア本部(現デジタルビジネスセンター)に所属しており、現在2年目です。デジタルメディア本部で、新入社員がそのまま配属されるのは私が初めてになります。普段はasahi.comに掲載する記事の取材や執筆のほか、動画の撮影、コラム記事の入稿、HTMLタグ組みなど、いろいろな業務をしています。

永井:私はIT関連の出版社でのアルバイトを経て、2003年のCNET Japanスタート時にシーネットネットワークスジャパン(現:朝日インタラクティブ)に入社しました。現在はCNET Japanの記者として、通信業界やモバイル関連分野を担当しています。

津田:9月1日付けで、朝日新聞社は「CNET Japan」などのメディア事業をシーネットネットワークスジャパンから継承したわけですが、お互いの社風についてはどう感じますか。

マッキー:1つの企業の中に、複数の会社があるような感じですね。たとえば朝日新聞に掲載された記事をasahi.comに掲載したいと思っても、許可を取るのは結構大変です(笑)。入社前は社員全員が1つの同じ方向に向かって仕事をしているのだろう、と想像していたのですが、実際はプロフェッショナルが集まっている会社で、それぞれがプライドを持って仕事をしている分、1つの目的に向かって全員がまい進しているという感じではありません。

永井:シーネットは米国の100%子会社だったのですが、編集方針などについては各国に任せるというスタンスを取っていたので、外資系というよりは日本企業的な文化を持っています。ただ、新しいことが好きな社員が多く、米国で起きている最新のITトレンドなどにはいち早く飛びつく人間が多いですね。

●朝日新聞がTwitterで「つぶやき」始めた

津田:マッキーさんは、Twitterでサッカー日本代表の試合をリアルタイムに報じていましたが、あれはどういう経緯だったのですか。

マッキー:私が部内で最も突出して若いから、というのが担当に選ばれた理由だそうです。私だけが20代で、あとは40歳前後が多いので。

もともとはTwitterに投資しているデジタルガレージの方と弊社の人間が仲良かったということでアカウントを作っていただいたのですが、そのときにちょうど日本代表の試合があったので、「何かその時間中に発言してみて」と言われたんです。

「私でいいの?」「こわいよー」とずっと言ってたんですが、始めてみたら意外と盛り上がって、暴走しちゃって……。

津田:ネット上の反応も、最初は「朝日新聞がこんなことをやってるよ」という冷めた反応だったのが、途中からどんどん変わっていって、肯定的になっていきましたよね。例えば休憩に入ったところを間違えて「試合終了」と言ってしまったことが、逆に「どじっ子で面白い」と言われたりとか。Twitterに書き込んでいるときはどんな気持ちだったんですか?

マッキー:楽しい気持ちが倍増しましたね。試合も楽しいし、ほかのユーザーの方がだんだん認めてくれるようになったので嬉しくて、相乗効果でテンションが上がっちゃってました。

津田:試合が終わったときはどう思いました?

マッキー:「やっちゃった……」、「どうしよう、会社でどう思われているんだろう」と。でも、そんな風に思っていることをTwitter上で出したら負けだ、とも思っていました(笑)。暴走しちゃった自分には落ち込みましたね。

津田:でも、そういう普通の女の子の反応が、朝日新聞の公式アカウントで流れているというギャップが面白かったんでしょうね。マッキーさんはもともとブログなどのインターネットサービスは使っていたんですか?

マッキー:使っていました。ブログもSNSも、新しいサービスが出たらすぐ試して。インターネットが好きで、中学2年生のころから使っています。Twitterも最初に話題になった2007年ごろに自分でアカウントを開設していました。ただ、使い方がよく分からなくて、中継の話が来たので久々に使ってみたという感じです。

津田:ああいった形の実況は続けたいと思いますか?

マッキー:続けたいとは思います。ただ、同じことばかりやっても飽きられるし、うちの部署には面白い人や、いろいろな分野に精通している人がいるので、記者個人としていろんな人が出てくるといいと思いますね。

●Twitterは属人性の強いメディア

津田:CNETではTwitterをどのように活用していますか?

永井:まだTwitterをどう使ったらいいか定めきれていないところがあるのですが、編集部のアカウントを作ってイベントの様子を実況したり、記者がそれぞれ自分のアカウントを開設したりしています。8月29日に自社で開催したイベント「CJIC Innovation Conference 2009」ではCNET Japanの記者が持ち回りで講演の内容を中継し、ハッシュタグを使ってイベントの来場者やTwitterを見た人が感想を言い合えるようにして、大きな反響を頂きました。ただ、少人数で運営しているメディアなので、Twitterに常に1人が張り付いてコミュニケーションをするわけにはいかないというところが難しいですね。

私自身はもともとプライベートなアカウントを持っていて、自分で書いた記事を宣伝するためにもう1つ本名のアカウントを作成しました。今でも実は2つのアカウントを使っていて、本名を出しているほうはCNETの記者として発言したいことや記事に関連すること、プライベートのほうは「お腹空いた」など、下らないことを喋っていることが多いです。

津田:今までの報道機関は記者の名前や顔を出さなかったけれども、ネット媒体では記者のキャラクターが明らかになった方が好まれるという傾向があって、それを両社ともやっていますよね。

Twitterは特に属人性の強いメディアで、発信者とすごく結びついているので、例えばマッキーさんが朝日新聞のアカウントでつぶやくことによって、「新聞記者も人間なんだ。記事の向こうに人間がいる」ということが伝わりつつあるように思います。

マッキー:新聞記者って、(外部からは)見えにくいですもんね。でも、それはすごくもったいないと思います。個人的には、本社や地方にいる人も含めて新聞記事を書いている人たちがみんなTwitterをやったらどんなに面白いだろうかと思いますね。

津田:140字という制限の中に収めてきちんと意味を伝えるというのは、新聞記者の方はきっと上手ですよね。いままでネットでは字数が制限されるという要素があまりなかったと思うんですが、言いたいことを圧縮して伝えようとすると、言葉の持つ力が強くなるんですよね。Twitterはそれを意図せずできるので、面白いんだと思います。

もちろん、記者がTwitterをするのは難しい部分もあると思います。原稿を書くときは客観的に書こうとしますが、Twitterでは思ったことを短く強めに書いたりするので、どうしても突っ込みどころが出てくる。そうなると、きちんと書いた商業的な原稿に対しても色眼鏡で見られてしまうことがないとは言えませんから。

ただ、「この人はこういう考え方に基づいてでこういうことを書いているんだな」というように記事の読み方が変わる可能性もありますよね。お二人はどんなところにTwitterの魅力を感じていますか。

●Twitterは人と人の距離を縮める

永井:普段取材では会えないような、企業の現場にいる人の生の声が聞けるのは楽しいですね。それから、以前海外取材に行ったときに一人で夜中に仕事をしていて「さみしいんです」と言ったら、知らない人がたくさんリアクションをしてくれて、「ネットって温かいなぁ」と思いました(笑)

ほかにも、「父親の誕生日プレゼント何がいいかな」と尋ねたら、いろいろなアドバイスをもらいました。知らない人とでも、気軽にコミュニケーションできるところはTwitterの魅力の1つだと思います。

津田:Q&Aサービスとしてすごく良いですよね。例えば「渋谷でどこかいいお店ある?」と聞くといろいろな人が教えてくれたり。もちろん、悪意あるコメントもありますが、たくさんの人がつぶやいて流れていくので、悪意のあるものもすぐに流れていくから、そういうものもあまり引きずりにくい感じは受けますね。

マッキー:私は、友だちと会ったときに話が早いというのは感じます。例えば、Twitterで映画の話を書いていると、「週末何してた?」ではなくて「週末見た映画どうだった?」というところから話が始まる。

津田:初対面の人でも、Twitterでつながっていると昔から友達だったかのような感じになれますよね。

永井:社内のコミュニケーションツールとしても使えると思います。以前、会社で頂いたお菓子の賞味期限が切れそうだったのでTwitterでつぶやいたところ、社内の人が見ていて翌日にはきれいになくなっていました(笑)

マッキー:駅の伝言板みたいですね。知らない人も書いているし、知っている人のメッセージもあって、みんなで見て楽しむという。

津田:9月からCNET Japanも朝日新聞グループに入ったことですし、今後はTwitterでも何か両社が一緒にできると良いですね。

マッキー:そうですね。たとえばあるイベントに対して、朝日新聞はこう見る、CNET Japanはこう見る、というのがTwitter上で見られると面白いですね。

永井:取材でも連携できるといいですね。お互い強みを持つ分野も違うと思うので、補いうような形になれたらと思います。

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