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卵か先か、鶏が先か。

スウェットの上下の間から、Tシャツを出したままトーストと、きゅうりとキャベツのスライスに胡麻ドレをかけた適当サラダを食べる男が朝からそんなことを言ってきた。

目玉焼きの目玉が潰れたバージョンを焼きながら、私は野菜ジュースを飲む。今日は派遣のバイトの日なのに、寝坊してしまった。



「なー、俺はニワトリが先だと思うね。だって、親だもん。メグはどー思う?」



遅刻しそうなのに、誰かさんの朝ごはんまで作ってるというのにこの男。
ベジータみたいな頭しやがって。どんな風に寝たらそんな寝癖が付くんだよ!大体、その鶏の親も最初は卵だっつの。




「親だって最初は卵だよ?だからどっちが先でどっちが後かわかんないから謎なんじゃないの?っていうか、私もう時間やばいし。ノリ、出掛けるならメールしといてね。はい、目玉焼き!」

「目玉ねーじゃん。」

「うるさい。行ってきます!」


大学5回生のくせに焦る様子もない憲之にイライラしながらも、ほっとけない私は貧乏クジを引いてしまった女なんだろうか。












電車を乗り継いで、都心まで出向く。初めて行く土地なので方向がイマイチわからない。ビルを抜けると、スクランブル交差点に出た。地図を見ると、どうやらこのまま渡ってまっすぐ行けば着きそうだ。
信号が変わると、一斉に道路の中心へ人が群がる。せわしない顔つきで、自分以外には皆無関心という感じ。
横断歩道を渡りながら、ふと、ノリが言っていた鶏の話を思い出した。

卵ができて、それを産むことができるのだから鶏が先なのかなぁ・・

卵か、鶏か、で考えるからややこしいんだよ。例えば、親がユカリって名前で、生まれた卵から出てきたヒヨコが、サユリって名前だとする。
サユリを産んだのはユカリで、ユカリが母親なんだからユカリの方が先ってことになる。
・・・・でもユカリもヒヨコだったし、その母親がいるから・・・・・ユカリはサユリより先だけど、ユカリの前にはユカリママがいるし・・・サユリも卵を産んだら・・・・うん、まぁ名前はケイコでいいや。ケイコよりサユリの方が先だから・・・・・・・ぁぁぁぁ・・・・
結局、一緒か、答えは出ない。
個体レベルで考えたら、どっちが先かは言えるけど、生態系で考えたら答えは出ません。ってこと?




でも、ノリはなんで鶏が先。って答えが出たんだろう・・・。
親だから。とか言ってたな・・よく大学受かったもんだ・・・。
覚えてたら帰ってからもう一回聞いてみるか。
















昼休憩に携帯を見たら、憲之からメールが入っていた。
<ジムいく>
簡潔で、気持ちが良い。男は皆、そうらしい。















夕方帰宅すると、憲之はまだ帰っていなかった。
途中で買った惣菜をレンジで温めて、冷凍して小分けにしてある1膳分のごはんも解凍して1人で食べた。
遠出で疲れたので今日は早く休もう。

憲之にはビールといつものチーかまを買ってある。















目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
珍しく憲之がキッチンにいる。
テーブルにはビールの空き缶とチーかまの残骸がそのままに、朝食用の食器がスタンバっている。空き缶を片付けながら、何を作っているのか聞くと、「目玉の潰れていない目玉焼き」だそうだ。





「ノリ、昨日の鶏の話だけど、なんで鶏が先だと思うの?」



「・・・・・・え?だって、俺かーちゃんから産まれてるもん。この世はみんなさー、かーちゃんが先じゃん。」



「・・・・そうだね・・・」
妙に納得してしまった。それとも呆れたのかよくわからないが、それは正解かもしれない、と思った。








昨日、交差点で無機質な顔した人達とすれ違ったけど、みんなお母さんから産まれてきてるんだ。と、なぜかそんなことを考えた。











「ほい。できた。」




目の前のフライパンからお皿に移されたのは、焦げ焦げのスクランブルエッグだった。

「卵を5個フライパンに割ったら、途中で潰したくなって、ぐちゃぐちゃにした。牛乳飲んでたら、底にひっついてなかなか取れなくてさ。でも食えると思うよ。」












せっかくかーちゃんから産まれて来た卵だから、残さず食べてあげなきゃ。
かーちゃん説を唱える博士は、こんがり美味しそうに焼けたトーストをほおばっている。卵は、メグにあげる。と。




貧乏クジもまんざらハズレではないような気もした。






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