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Communication

所長
神浦元彰
軍事ジャーナリスト
Director
Kamimura Motoaki
Military Analyst

English Column of This Month!VOICE OF Mr.KAMIURA

所長ご挨拶

9月 2009年

第116回

神浦元彰 8月29日(土)に富士演習場(静岡県)で行われる恒例の総合火力演習を見て来ました。若いころは毎年のようにこの演習を取材していましたが、いつもワンパターンの想定についつい飽きてしまったようです。それでも5年に1回ぐらいは取材申請して、演習場に行くよう心がけています。今回の取材も3年ぶりぐらいだと思います。

 今回、新しく登場したのはテキ弾発射です。小銃に空砲を入れ、銃口に取り付けたテキ弾を発射し、扇状に飛翔させ、数百メートル前方で爆発して破裂させます。実はこの兵器は旧日本軍が開発したもので、一時は世界の軍隊が採用していましたが、携帯式の対戦車ロケット砲が普及すると自然に消えていった兵器です。

じつはこのテキ弾ですが、構造が単純で、操作も容易で、極めて安価で、慣れれば障害物の後ろにいる敵も攻撃できます。私は最も小型の迫撃砲のようなものだと思っています。土塁や建物の後ろから射撃してくる敵や、屋上などから撃ってくる敵も攻撃できます。

さらにテキ弾には対人榴弾のほか、照明弾や発煙弾や、対戦車テキ弾も開発されています。装甲の薄い戦車上部に落下(着弾)させ、HEAT効果で戦車内部に高温高圧の燃焼ガスを送り込む攻撃法です。この熱で戦車内部の兵員を殺傷し、積んでいる砲弾などを誘爆発させることができます。

さらにハイテク技術を応用すれば、弾頭部に金属を探知できるミリ波センサーをつけ、落下時に戦車や装甲車を弾自身が感知し、自らの誘導で命中する新兵器に化けることが可能です。また高度数メートルで破裂する信管を付ければ、より広い範囲の制圧が可能になります。古い兵器が新しい技術の応用で新兵器になる実例だと思います。

自衛隊に狙撃銃が復活したように、このテキ弾(発射器)が復活したことを今回の演習で知りました。

それとは別に大きな変化を目撃しました。それは中国人民解放軍の見学者(制服)が多数来場していたことです。私は階段席に設けられた報道用エリアに座っていました。すぐ目の前の右側には防衛大臣が座る席と、外国の駐在武官が座るVIP席があります。その横に中国軍の集団が座っていたのです。人数は正確には数えることができませんでしたが20〜30人ぐらいでしょうか。私は中国語が出来ませんが、わかれば彼らが話す内容を知れる距離です。

全員が制服を着用していましたから、陸軍のほかに海軍や空軍もいることがわかりました。陸軍は左腕の徽章の漢字から北京軍管区、瀋陽軍管区など各軍管区からと、参謀本部などから選抜された者たちのようです。階級は大佐クラスが中心で、中には上級大佐や中佐なども数人いました。

そこで彼らの見学目的ですが、自衛隊の兵器や戦術に関心があるように見えません。彼らの関心は「演習を見せるための演出」です。観客席の仕組みや、演習項目の進行方法、会場のスピーカーで流す解説や音楽、武器の展示方法などです。すなわち軍事演習をショーアップするための演出技術です。

今まで中国軍は秘密主義といわれましたが、本当は人様にお見せできるような状態ではなかったと思います。中国人民解放軍は近代軍とは程遠い内情でした。駐屯地内でブタを飼い、畑を耕して自活し、その中には菓子工場などもあり、さらに兵士の服や靴までも自前で作っていました。その過ちに中国が気がついたのは91年の湾岸戦争です。

ハイテクされていない軍隊がいかに弱いか気がついたのです。そこで中国軍は総勢450万人だった軍の大規模な兵員削減に取り組みます。また軍の兼業ビジネス(事業活動)を禁止して軍事の専門教育を充実させます。その結果、中国軍はやっと人に見せられる軍隊になることができたのです。これは中国が莫大な軍事費を投入する最大の理由でした。

また巨大な軍事組織を持つ中国は、周辺国との摩擦を避けるため、軍隊の演習を見せることで信頼醸成の必要に迫られていたのです。そのための幹部研修が今回の総合火力演習で行われたと推測しました。軍事演習をショーとして一般に見せる点では、総合火力演習は世界一の演出力持っているような気がします。飽きずに何十年も同じことをしているのですから。

10月1日には北京の天安門広場で、大規模な軍事パレードが予定されています。中国軍が見せる軍隊に成長したことを実感できることと思います。今回は2回目の軍事パレードですが、やがて毎年、中国軍の展示演習が各軍管区で行われると予感しました。

それから、まさか中国軍の見学者の中で気がついた人はいないと思いますが、観客席の端ではクーラーボックスの冷えたビールを飲み、お花見のように弁当を広げた集団が何組もいました。そんなことを中国ですれば刑務所行きでしょうね。

最高に面白かったのは、演習が終わって観客席から帰るとき、中国軍の制服の一団が見学に来た自衛隊員の人ごみに揉まれている光景でした。私は階段席の上から見て、大勢の自衛隊員と中国軍幹部の集団が、混ざって出口に流れる光景につい笑ってしまいました。29日は研修演習の日で多くの自衛官が見学に来ていたのです。

笑ったのは自衛隊員と中国軍幹部が互いに違和感をまったく持っていなかったからです。これを中国脅威論の方が見れば腰を抜かす光景だったと思います。

中国を含め演習を視察した外国の駐在武官の方は、自衛隊が準備した2台の大型観光バスで送迎されいましたが、中国軍の研修団は別の扱いでした。外国武官は武官として丁寧な扱いを受けていました。中国軍の研修団は自由にさせている分、自衛隊は丁寧な接待もしていない感じでした。私はその対応でいいと思います。

今日の海自の新型ヘリ空母建造(来年度概算要求)は中国軍の脅威論を意識したという記事では、なんでもかんでも中国脅威論では、我々の正常な判断を狂わすことになると痛感しました。

                       つづく

                                                   9月1日 
以前の所長挨拶はファイル(文書倉庫)にあります。

著書紹介

「面白いほどよくわかる 世界の軍隊と兵器」
05年1月30日 発売  日本文芸社刊  1400円(税別)  

この本を私の著書と呼ぶことはできない。大部分は軍事ジャーナリストの芦川 淳さんと、軍事フォト・ジャーナリストの菊池雅之さんが書いた本である。二人とも、将来は日本を代表する軍事通になる素質を持っている人である。  この本で私の担当は、監修と第7章の「新しい日本の防衛政策」を書いた。私としては高校生レベルの軍事入門書として読んで頂きたいと考えていた。しかし意外なことだが、若い新聞記者やテレビ関係の報道ディレクターが読んでいた。私のところに取材に来る前に、この本を読んできましたと話す人が多くいた。今までは、軍事とは関係のないところに生き、仕事柄、初めて軍事の世界に触れる人には都合のいい本だったようだ。
 出版社に聞けば、やはり売れているようで、早々と半年で軍事本では珍しい重版になった。ともすれば私たちは軍事の専門家として、高度な内容の本を書きたがる傾向がある。社会に自分を認めて欲しいという欲求があるからだと思う。しかし世の中が求めているのは、確かな基礎知識に基づいた初級クラスの軍事解説本も忘れてはいけないと気が付いた。  これから軍事を勉強してみたいと興味を持った方にお勧めしたい1冊である。 
『戦争の科学』(監修)
03年9月10日 発売  主婦の友社刊  3000円 (税別) 

5月のある日、主婦の友社の編集者が訪ねてきて、「この本を翻訳して、日本でも出版したいと思います。ぜひ協力してください」と話した。原題は『SCIENCE GOES TO WAR』である。すでに下訳ができていて、読んでみると戦争というより兵器の歴史書だった。まずは日本語訳の間違いを訂正するために原書と突合せながら読んでみた。するとこの和訳が実に上手い。いやむしろ上手すぎると思った。言葉を訂正するどころか、逆に、言葉の使い方に感心しながら読んだ。翻訳はまったく問題がなかった。ところが原書には、今の時代では必須のRMA(軍事革命)の記述がなかった。そこで、「この本のタイトルでRMAの項目がなければ欠陥品になります」と編集者に話した。そこで最後の解説の部分として、RMAを書き加えることになった。それを私が担当することになった。
 「高校生にわかるように書きます」と言って、もっともわかり易いRMAの解説を書いた。それから原書にはないイラストを友人の長谷川正治氏を紹介した。ぜひとも図説のイラストが必要と思ったからだ。これで8月末に完成した。訳者の茂木健さんに脱帽した。
「北朝鮮消滅―金王朝崩壊の衝撃、到来する破局」
03年3月1日 発売  イースト・プレス社刊  1500円(税別)

 北朝鮮という国を軍事的な視点で見ると、今までは異常な体制支配で隠された部分から、真の姿が浮かび上がってきた。なぜアメリカは北朝鮮を軍事攻撃できないのか。韓国の太陽政策はなぜ生まれたのか。日本と北朝鮮の国交正常化はなぜ進展しないのか。
 そもそも北朝鮮の軍事力とはどうなのか。テポドンやノドンが日本に飛来する可能性はあるのか。そして、北朝鮮をめぐる中国やロシアの対応に隠された真意はどこにあるのか。
 イラク戦争でフセイン独裁体制が米英の軍事力で倒された今こそ、この本が解き明かす北朝鮮の真実が近未来を予測します。
 この本は1500円で、2003年3月1日が発行日です。
「北朝鮮「対日潜入工作」」
共著  別冊宝島宝島 038  宝島社刊  1200円(税別)

 私が担当したのは、「生物・化学兵器の原料流出のみを警戒せよ!」です。何だか変なタイトルですが、もう北朝鮮の兵器は脅威ではない。エンジンのかからない戦車、飛ばない戦闘機(飛ばせないパイロット)、潜航せきない潜水艦の数を数えて怖がっててもしかたがない。しかし生物・化学兵器だけは怖い。これに対する警戒は必要と書いたら、このようなタイトルになりました。
 原稿を書いたのが02年の7月、本が出たのが8月、そして9月から小泉訪朝と拉致事件被害者の帰国と、日本で北朝鮮関連のことで大騒動になりました。そのためか、何度かこの本が増刷され、こんど宝島文庫にもなるそうです。
 北朝鮮は怖くなければ北朝鮮ではない。怖い北朝鮮が大好きという方には、この本は絶対のお勧めです。金正日の危険度を知る上では面白い本です。
「裸の自衛隊」  
神浦元彰 監修   宝島文庫社   ¥533(税別)

歴史的な名著として話題になった自衛隊本。ベストセラーの初版から9年たっての文庫本なのに、初版〔文庫〕で10万部を刷ったという驚異の本。この「裸の自衛隊〔文庫〕」では、記事中以外に、「INTRODUCTIN」と「あとがき」を担当しています。他の著名な執筆者の鋭い取材や分析には、軍事の専門家でない方が、むしろ自衛隊を正確に見ていると脱帽しました。自衛隊の本当の姿を知りたい人にはお勧めです。現職や元自衛官には圧倒的な人気でしたが、防衛庁高官や自衛隊の偉さんたちにはヒンシュクをかいました。
「北朝鮮最後の謀略」
神浦元彰 著   二見書房   ¥825(税別)

 神浦所長が最初に挑戦した「軍事小説」。本当はこれで直木賞を狙っていたが、候補どころか話題にもなりませんでした。〔もちろん冗談〕 小説の話しの内容は、ロシアの犯罪組織から核爆弾を密かに買った北朝鮮の指導者が、横須賀港に寄港している米原子力空母の船底に核爆弾を仕掛け、関東一帯を「チェルノブイリにする」という計画が発覚。それを阻止すべき自衛隊の特殊部隊が投入された。北朝鮮軍工作員指揮官の許少佐の謀略に翻弄される日本。その間にも、核爆弾は改装された貨物船で東京湾に運ばれ、水中から原子力空母の船底にセットされた。(裏話・この小説はアメリカの高官が、「北朝鮮が1〜2発の核爆弾を持っていても、1万発以上の核弾頭を持っているアメリカの脅威にはならない」と言った事に頭にきて書いたのがもともとの動機です)
「北朝鮮「最終戦争」」
神浦元彰 著   二見文庫   ¥495(税別)

北朝鮮がテポドンを発射実験して、日本政府やマスコミのあまりの動揺ぶりに「ビビルな日本、北朝鮮は怖くない」と、科学的な軍事分析してみせた本がこれ。内容はノンフィクションですが、軍事常識や理論を勉強するには最適の本です。各所に具体例を挙げながら、理論的な説明をしておきました。この本は一部の朝鮮半島の専門家には高い評価をして頂きましたが、「北朝鮮が攻めてくる」と危機感を煽ってなんぼの人には敵視されました。しかし北朝鮮がいくら全体主義の国でも、国民の大多数が飢えているのに、大きな戦争を始める余裕はないでしょう。(裏話・この本で言いたいのは、本当に怖いのは北朝鮮ではなく、その背後にいる中国で、その将来の日中関係によっては、深刻な事態になると警告をしたかった。新たな冷戦を生まないために、中国と日本と米国が軍事対立をしないことが大事)
「アジア有事 七つの戦争」
神浦元彰 他(共著)   二見書房   \1748(税別)

 「何か面白い本を書こうよ」と、軍事評論家の野木恵一さんと話していたら、これからのアジアの10年間を、軍事情勢から分析し予測してみようと企画したのがこの本。そしていつもすごい記事を書くなと関心をしていた、河津幸英〔軍事研究誌 論説委員〕さんと、航空ジャーナリストの石川潤一さんにも加わって頂いて、4人の共著で出版しました。
 本当は4人で酒でも飲みながら、ワイワイガヤガヤとやりながら、進行していこうとぐらいに考えていました。ところが、野木さんは昔から酒を飲まないことを知っていましたが、河津さんも酒を飲みませんでした。石川さんもほんの付き合い程度しか酒を飲まないと聞いて大ショック。大酒飲みの私としては、極めてまじめに企画から、執筆まで真剣に取り組んだ本です。出版後にA新聞社の有名軍事編集委員から電話を頂き、よく書けているとお褒めの言葉を頂きました。4人が大酒のみだったら、どんな本が出来たのでしょうか。
「日本の最も危険な日」
神浦元彰著  青春出版社  絶版  発行1978年6月  

 22年前の本です。「神浦さん、将来、大物になる人は20代で本を出しています。書いてみませんか」と、私が29歳の春に青春出版社編集部の行本さん(当時、現在は文化創作出版社)に言われ、中高生を読者対象にして、わかりやすく軍事常識の解説書を書いたのがこれ。日本や日本周辺で考えられる軍事問題を99項目とりあげて解説をしました。たとえば、「なぜ中国は台湾を攻めないのか」「小さな地域紛争(人種、宗教、国境など)から、人類を滅ぼす全面核戦争までの戦争分類法」「米ソ、戦略核兵器の種類と核戦略」「北海道脅威論のいい加減さ」「開発中の精密誘導兵器の恐怖」などなど、いろいろな項目で書きました。たしか30歳の7月の誕生日にぎりぎり間に合ったと記憶しています。この本を出したのを機会に、テレビなどマスコミに軍事問題で出るようになりました。そのころ週刊ポストで最も若い記者だった二木啓孝氏(現、日刊ゲンダイの編集部長)と、この本が縁で知り合い、同じ年ということで仲良くなり今も付き合っています。私の肩書きの「軍事ジャーナリスト」というのも、二木氏が20代で軍事評論家はないだろうと命名しました。この本で私の本格的な軍事人生(取材・研究・発表)が始まったようなものです。それが今、私の書斎の本箱を見たら、なんと1冊もないんです。びっくりしました。私と同じ頃に青春出版社から「天中殺」の本が出て、歴史的なほど爆発的に売れました。そして日本中で占いブームが起きたときは驚きました。まだ藤本義一氏が日本テレビで11PMの司会をやていた頃の話です。その11PMにも何度か出演させて頂きました。
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