≪特別寄稿≫私の政治哲学−祖父・一郎に学んだ「友愛」という戦いの旗印:鳩山由紀夫(民主党代表)(4)

Voice2009年8月31日(月)18:01

← 前のページ   1 | 2 | 3 | 4 |  5   次のページ→

地域主権国家の確立

 私は、代表選挙の立候補演説において「私が最も力を入れたい政策」は「中央集権国家である現在の国のかたちを『地域主権の国』に変革」することだといった。同様の主張は、13年前の旧民主党結党宣言にも書いた。「小さな中央政府・国会と、大きな権限をもった効率的な地方政府による『地方分権・地域主権国家』」を実現し、「そのもとで、市民参加・地域共助型の充実した福祉と、将来にツケを回さない財政・医療・年金制度を両立させていく」のだと。

 クーデンホフ・カレルギーの「友愛革命」(『全体主義国家対人間』第12章)のなかにこういう一節がある。

「友愛主義の政治的必須条件は連邦組織であって、それは実に、個人から国家をつくり上げる有機的方法なのである。人間から宇宙に至る道は同心円を通じて導かれる。すなわち人間が家族をつくり、家族が自治体(コミューン)をつくり、自治体が郡(カントン)をつくり、郡が州(ステイト)をつくり、州が大陸をつくり、大陸が地球をつくり、地球が太陽系をつくり、太陽系が宇宙をつくり出すのである」

 カレルギーがここで言っているのは、いまの言葉で言えば「補完性の原理」ということだろう。それは「友愛」の論理から導かれる現代的政策表現ということができる。

 経済のグローバル化は避けられない時代の現実だ。しかし、経済的統合が進むEUでは、一方でローカル化ともいうべき流れも顕著である。ベルギーの連邦化やチェコとスロバキアの分離独立などはその象徴である。グローバル化する経済環境のなかで、伝統や文化の基盤としての国あるいは地域の独自性をどう維持していくか。それはEUのみならず、これからの日本にとっても大きな課題である。

 グローバル化とローカル化という二つの背反する時代の要請への回答として、EUはマーストリヒト条約やヨーロッパ地方自治憲章において「補完性の原理」を掲げた。補完性の原理は、今日では、たんに基礎自治体優先の原則というだけでなく、国家と超国家機関との関係にまで援用される原則となっている。こうした視点から、補完性の原理を解釈すると以下のようになる。

 個人でできることは、個人で解決する。個人で解決できないことは、家庭が助ける。家庭で解決できないことは、地域社会やNPOが助ける。これらのレベルで解決できないときに初めて行政がかかわることになる。そして基礎自治体で処理できることは、すべて基礎自治体でやる。基礎自治体ができないことだけを広域自治体がやる。広域自治体でもできないこと、たとえば外交、防衛、マクロ経済政策の決定など、を中央政府が担当する。そして次の段階として、通貨の発行権など国家主権の一部も、EUのような国際機構に移譲する……。

 補完性の原理は、実際の分権政策としては、基礎自治体重視の分権政策ということになる。われわれが、友愛の現代化を模索するとき、必然的に補完性の原理に立脚した「地域主権国家」の確立に行き着く。

 道州制の是非を含む今後の日本の地方制度改革においては、伝統や文化の基盤としての自治体の規模はどうあるべきか、住民による自治が有効に機能する自治体の規模はどうあるべきか、という視点を忘れてはならない。

 私は民主党代表選挙の際の演説でこう語った。

「国の役割を、外交・防衛、財政・金融、資源・エネルギー、環境等に限定し、生活に密着したことは権限、財源、人材を『基礎的自治体』に移譲し、その地域の判断と責任において決断し、実行できる仕組みに変革します。国の補助金は廃止し、地方に自主財源として一括交付します。すなわち国と地域の関係を現在の実質上下関係から並列の関係、役割分担の関係へと変えていきます。この変革により、国全体の効率を高め、地域の実情に応じたきめの細かい、生活者の立場に立った行政に変革します」

 身近な基礎自治体に財源と権限を大幅に移譲し、サービスと負担の関係が見えやすいものとすることによって、初めて地域の自主性、自己責任、自己決定能力が生まれる。それはまた地域の経済活動を活力あるものにし、個性的で魅力に富んだ美しい日本列島を創る道でもある。

「地域主権国家」の確立こそは、とりもなおさず「友愛」の現代的政策表現であり、これからの時代の政治目標にふさわしいものだ。

← 前のページ   1 | 2 | 3 | 4 |  5   次のページ→

 2009年9月号のポイント
8月30日、日本の歴史は変わるか。鳩山由紀夫・民主党代表は、党人派の首領だった祖父・一郎元総理から学んだ政治信条を吐露する。≪現在、特設サイト「Voice+」で公開中≫ 特集は“アジア10大危機!「60年の平和」が壊れる日”。経済危機の混乱に紛れ、東アジアで密かに進む歴史的大変動。これから急浮上する深刻な脅威を、10人のプロが詳しく読み解く。

Voice最新号目次 / Voice最新号詳細 / Voice年間購読申し込み / Voiceバックナンバー / Voice書評 / PHP研究所 / 特設サイト『Voice+』
Voice最新号
 
 
  • ソーシャルブックマークに追加:
  • gooブックマークに追加
  • Yahoo!ブックマークに追加
  • はてなブックマークに追加
  • Buzzurlに追加
  • livedoorクリップに追加
  • FC2ブックマークに追加
  • newsingに追加
  • イザ!に追加
  • deliciousに追加
この記事について ブログを書く

過去1時間で最も読まれた政治ニュース

政治ニュースで話題になったコトバ

PAC 山岡賢次 8都県市 鳩山由紀夫 民主党 亀井静香 鳩山 公明 自民党 太田 小沢 農林水産省 細田博之 熊本市 国会 衆院 自民 公明党 麻生 社民党 横浜市 米軍 自民 麻生太郎 東京 横浜 韓国 北朝鮮 日本

注目のトップニュース
官僚は早くも「民主党詣で」
「日本の素晴らしい日」と英紙
「麻生と書くととんでもない事」
東国原氏「あのとき自民が…」
麻生氏秘書、北朝鮮と極秘接触か
中3少年が中1少女を買春容疑
元ストーンズの死因、再調査へ
注目の政治ニュース
「日本の素晴らしい日」と英紙
官僚は早くも「民主党詣で」
消費者庁の長官人事に民主反発
「麻生と書くととんでもない事」
「友愛」は戦闘的、鳩山氏論文
東国原氏「あのとき自民が…」
写真ギャラリー
写真ギャラリー
揺れる政治
ついに政権交代
gooニュースオリジナル企画
公示:8月18日(火) 投票:8月30日(日)
立候補者名簿/海外から見るニッポン/みんなの意見/政党・選挙ニュース

gooニュース編集スタッフが気になるニュースや編集現場のようすをつぶやきます。
今週のトピックス
gooランキング
教えて!goo 人気のQ&A (政治)
2009 衆議院選挙予想の立て方
第1位の質問
どぶ板選挙
第2位の質問
野田聖子さんを辞めさせるにはどうしたらいいですか?
第3位の質問
おすすめメルマガ
最新ニュースを、メルマガでお届け
 
おすすめコンテンツ
goo旅行
国内旅行のクチコミ情報をチェック
goo住宅・不動産
気になるあの路線・駅の家賃相場は
goo天気
生まれた日の天気・気温を見てみよう
goo自動車&バイク
新車ニュース&コンパニオン画像
gooダイエット
痩せる方法100種類
goo求人&転職
起業家インタビュー好評連載中
goo進学&資格
三日坊主も安心!まずは体験講座
gooヘルスケア
家庭の医学 病気検索
gooのお知らせ
夏休み特集キッズgoo夏休みの宿題、ラストスパートは“キッズgoo夏休み特集”を参考に
新型インフルエンザ特集gooヘルスケア“新型インフルエンザ”に関するニュースやQ&Aを特集
gooニュースサービス説明