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政権交代@石川

自民王国の落日<上> 結束乱れて迷走

2009年09月01日

 ◇ 乏しい危機感、県議の動き鈍く◇

 「先人が築いた地盤を継承できなかったことは、恥じる思いです」――。31日未明、3区での敗北が決まった北村茂男氏は選挙事務所でつぶやいた。比例区で復活当選を遂げた喜びはなく、居並ぶ県議たちの顔もこわばっていた。

 県議14人のうち13人を自民党が占める3区。中選挙区時代から他党に議席を譲ったことのない「王国」で初めて屈辱を味わった。

 地元の輪島市以外では個人後援会が弱い北村氏は、自民党の地域支部が頼りだ。しかし、7月中旬に実質的な選挙戦に突入しても、県議たちの動きは鈍かった。

 最大の有権者を抱える七尾市。公示直前に地元選対会議が開かれ、和田内幸三県議、武元文平市長ら約40人が集まった。だが担当の割り振りや戦術の説明はなく、ある参加者は「これで勝てるのか」と心配になったと話す。

 公示後、対立候補の近藤和也氏優位を伝える情勢記事にようやく危機感を抱いた陣営は、市議約20人によるローラー作戦を指示。しかし、中選挙区時代の国会議員の系列や、市長選での対立関係から五つの会派に分かれる保守系の市議らはまとまらない。

 「『頑張ろう』といってもなかなか動かない。氷の固まりにお湯を2、3滴かけているようだ」(自民市議)。悪い予感は現実となり、七尾市で北村氏は4千票以上の大差をつけられた。

 同市に根を張る瓦力・前衆院議員=比例北陸信越ブロック、引退=は、北村氏と近い森喜朗元首相と反目していた。「当選が決まった後、瓦さんが『おー、よかった』と言ってくれた」。選挙から一夜明けた31日未明、近藤氏は明かした。「瓦氏は近藤氏を事実上、支持した」と考える関係者は多い。

 ◇ 苦渋の中傷キャンペーン展開 ◇

 「石川で実質的に勝利したことは大きい」

 1区で敗れた馳浩氏=比例区で復活当選=の選対事務長・下沢佳充県議は、今回の結果を「全国的傾向から考えれば勝利」と表現する。

 元プロレスラーの高い知名度で、1区に多いとされる無党派層も引きつける馳氏。だが今回、陣営は個人的魅力のアピールに加え、民主党や相手候補を攻撃するネガティブキャンペーンに力を入れた。

 選挙戦最終日の29日、金沢市の香林坊一帯で、馳氏の候補者ビラが二つ折りにして配布された。その中に「民主党=日教組に日本は任せられない」と題した政党パンフが挟み込まれていた。

 民主党を支持する日教組が「過激な性教育」を行っているなどとして、「日本の教育は崩壊する」と訴えた内容。党本部が送ってきた。

 馳氏の側近は「配るか止めるか正直意見が分かれた。露骨な批判はイメージと合わない」としつつ、「馳自身は批判をしておらず、クリーンなイメージは保てた」と話す。

 だが、パンフを受け取った側は当惑を隠せない。自民党支持の男性は「ここまでやったら逆効果。民主党が自民をおとしめるためにやったのかと勘ぐったくらいだ」。

 麻生首相は31日、ネガティブキャンペーンについて「一概に良かったとも悪かったとも言えない。それで当選した人もいる」と語った。

     ◆     ◆

 政権交代が実現した歴史的な総選挙。自民、民主それぞれの戦いを振り返る。

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