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日本が変わる:政権交代、戸惑う霞が関(その2止) アニメ殿堂「中止当確」

 <世の中ナビ NEWS NAVIGATOR>

 <1面からつづく>

 ◇基金事業--農水省あきらめ、厚労省「存続を」

 ◇国家戦略局--「実権はく奪」恐れる財務省

 民主党が減額補正を考えている09年度補正予算には、「国立メディア芸術総合センター」の建設補助金117億円や、46基金の4・3兆円が盛り込まれている。同党幹部はこれらの大半を執行停止することにより「政権交代で税金の使い道が具体的に変わったという姿を国民に見せる」と鼻息が荒い。

 「アニメの殿堂」と揶揄(やゆ)され続けたメディアセンターは、アニメ、マンガ、映画などのメディア芸術の拠点整備を求める声に応えて文化庁が計画を進めてきた。しかし、マンガ好きの麻生太郎首相とイメージが重なったため、民主党の鳩山由紀夫代表が「巨大国営マンガ喫茶の建設」と皮肉るなど、「ムダの象徴」に祭り上げられた。

 民主党幹部は「アニメの殿堂は止めることに意味がある」と指摘し、財務省幹部も「中止が当確の事業」と語る。

 46基金のうち、民主党が見直しの対象として明示しているのは、農地の貸手に補助金を支給する「農地集積事業」(3000億円)や、失業者を支援する「緊急人材育成・就職支援事業」(7000億円)だ。農地集積事業について農水省内ではすでに「民主党がはっきり『やめる』と言った以上、もはや引っ込みがつかないだろう」とあきらめムードが漂う。

 一方、緊急人材育成・就職支援事業について厚生労働省幹部は「雇用は依然、厳しい。やめていい事業ではない」と反論する。基金からは、すでに支援金の給付が始まっているが、民主党は運営する中央職業能力開発協会が厚労省などからの天下り団体であることを理由に見直しを要求している。

 基金の多くは、国からの補助金をもとに都道府県が事業主体になるため、一度作った基金の取り崩しには、都道府県議会の承認が必要となる。総務省によると、国からの補助金が地方に渡される前なら、承認なしでも取りやめは可能だが、地域振興につながるとして地方が期待を寄せる事業もあり、一方的な中止は反発を招く恐れがある。補正予算の大幅削減は、景気にも冷や水を浴びせかねず、財務省幹部は「事業をやめたらどんな影響があるかを、データなどで示していく」と民主党の理解を得たい考えだ。

 予算編成の進め方も、民主党政権では大きく変化する。

 小泉内閣以降の予算編成は、まず経済財政諮問会議で大枠の方針を決め、財務省が概算要求基準(シーリング)を示し、それに基づいて(1)各省庁が8月末までに概算要求を提出(2)9月から財務省が査定を開始(3)12月下旬までに財務省原案、政府案の決定--という段取りで進められてきた。

 しかし、民主党は「官僚依存政治」から脱却する切り札として「国家戦略局」の新設を目指している。重要閣僚や官民のスタッフで構成する同局は、予算編成の基本方針のほか、外交方針についても論議し、首相を補佐する。

 民主党はマニフェスト(政権公約)に盛り込んだ、子ども手当の支給や高速道路無料化などの財源16兆8000億円(13年度)を、特別会計を含めた国の総予算207兆円の全面組み替えによって捻出(ねんしゅつ)するとしている。こうした作業は国家戦略局と、その下の「行政刷新会議」が担う。来年度予算概算要求の組み直しや、09年度補正予算の一部執行停止に向けた2次補正予算案の作成が初仕事になる。

 予算編成のあり方を大きく変える可能性があるだけに、霞が関はその人事の行方に目を凝らしている。

 財務省は国家戦略局に予算編成の実権を奪われ、事務的な査定だけ押し付けられることを警戒している。このため同局に対しては「要請があれば考える」(幹部)とエース級の投入を検討している。一方、経済産業省は「経済成長戦略を描けるのは経産省。民主党と対立点が少ないのも強み」と売り込みを狙う。同局に入れなければ、予算編成の骨格を決める作業に加われず、省としての存在価値低下につながるとの危機感が霞が関にはある。

 ただ、国家戦略局で予算編成の基本方針を策定した後の具体的な段取りは明らかではない。財務省はどの程度かかわるのか。政治主導の調整機関として民主党が打ち出している「閣僚委員会」はどのような方法で運営されるのか。そもそも概算要求を白紙に戻した後、年末までに予算編成を終えることができるのか。

 民主党幹部は「10年度予算の編成に向けて時間との勝負になる」と語る。民主党が掲げる国の総予算207兆円の全面組み替えは「概算要求の修正では果たせない。ゼロベースで見直すしかない」とされ、民主党内には「9月中旬以降に政権が発足すると、年末までに編成作業が間に合わないのではないか」との懸念がある。

 こうした状況を踏まえてか、党内には「300議席あるのだから急ぐ必要はない。2、3年かけて徐々に変えていくだけでも、自民党は崩壊し、霞が関も変わる」との声も出始めた。

 鳩山氏は31日の記者会見で、今後の予算編成について「ゼロから、といういい方が正しいかどうかは分からないが、根本的に見直していく努力をする必要がある」と改めて意欲を示した。【平地修、高塚保、近藤大介】

毎日新聞 2009年9月1日 東京朝刊

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