◇約束の行方
(4)言葉
衆院が解散された7月21日、麻生首相は自民党の両院議員懇談会の冒頭、「私の発言や、ぶれたと言われる言葉が、国民に不安、不信を与え、自民党の支持率低下につながった」と語った。
前回総選挙から4年。国会議員が、発した言葉によって批判を浴び、信頼を失う例が少なくない。福田首相の「あなたとは違うんです」、松岡農水相の「ナントカ還元水」、柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」、中山国交相の「日教組が強いところは学力が低い」……(肩書はいずれも発言当時)。
県内では自民・久間章生氏(2区から立候補予定)が07年7月、原爆投下に関連して「しょうがない」と発言したとして、防衛相を辞任した。久間氏は今年、新年の後援会便りで「しょうがない発言の真意」とする記事に4ページのうちの1ページを割いて経緯を説明した。「原爆投下はしょうがないとは一言も言っていないのに、本当に言葉というのは怖いと思いました」とした。
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【ぶれる】(1)正常な位置からずれる(2)写真をとる瞬間にカメラが動く(3)態度、考え方、方針などがあれこれと揺れ動く(小学館「デジタル大辞泉」より)
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民主前職の高木義明氏(1区から立候補予定)は4年前の総選挙で「ヤミ献金、迂回献金疑惑問題にフタをする自民党の体質を糾弾し、政治不信の解消を図る」と掲げた。今年3月、西松建設の巨額献金事件に絡み、当時の民主代表、小沢一郎氏の公設秘書が逮捕されると、高木氏は「捜査には政治的意図がある」と訴えて、民主党内の結束を呼び掛けた。
小沢氏は会見で「潔白」を訴えたが、朝日新聞が同月に実施した世論調査では、その説明について「不十分」とする意見が86%を占めた。高木氏は、小沢氏の会見やその後に党が設けた第三者委員会の調査をもって「出来る限りの説明は尽くされた」とする。
自民前職の谷川弥一氏(3区から立候補予定)は昨年9月22日、いったんは次期総選挙に不出馬の意向を固めた。「頑張っても評価されず、嫌気がした」。翌日には、それを翻した。
「自民党の支持母体は、小泉構造改革でどこにもなくなり、当選するには一から組織を作り直さないといけない。そのことは大変イバラの道だ、もうイヤだ」と、谷川氏は思ったという。だが、久間氏から「決めるのは選挙民だ、おまえが決めていかん。やるだけやって、そしていらんと言われたら、そん時やめてよかやっか」と説得され、考えを改めたとしている。
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政治家は言葉で有権者と様々な約束を交わす。有権者は言葉で政治家を信じ、一票を託す。約束の行方は、総選挙の熱気の中だけでなく、次の任期にわたって問われなければならない。
■4年間の国会での主な発言
〈注〉()内数字は前任期中に発言した本会議・委員会の数。1回の本会議・委員会で複数の発言があっても1と数えた。
【自民】
冨岡勉氏(1区)(27)
09年4月、決算行政監視委第三分科会で被爆者対策について「被爆地に対するいま一歩の踏み込んだいろいろな政策が必要ではないか」などと質問。
改正臓器移植法の「脳死は人の死」を前提とするA案の発議者として09年5〜7月に答弁。同年6月の参院本会議で提出者代表として趣旨説明
久間章生氏(2区)(93)
06年1月、本会議の代表質問で「今年9月には自民党総裁選が行われる。我々は小泉総理・総裁の改革の志と決断力を引き継ぐ立派な総裁を選出しなければならない」。
その他に防衛庁長官、防衛相として答弁や説明に立った。防衛相を辞した年7月以降は質問なし。国会議員が政府に書面で質問する「質問主意書」は県内選出の前職で最多の7回提出。
谷川弥一氏(3区)(11)
06年5月、農林水産委で諫早湾干拓事業について「諫干が原因でノリが色落ちしたとか生育が悪くなったとか盛んに批判され苦労し、工期も延びた。ところが、ここ2年ぐらいは大豊作だ。諫干が原因だったら豊作になるわけがない」。
同委で「世界貿易機関(WTO)で交渉して、こっちの立場をわかってもらえなかったら(農林漁業が)つぶれる。私の所の五島は全国平均では全産業の5%しかない一次産業が26%ある」などと質問。
北村誠吾氏(4区)(47)
06年11月、安全保障委で佐世保市の前畑弾薬庫で前月にあった火災にからんで「米軍がみずからスプリンクラーの設置、安全策のために具体的に対策を講じるべきだ」などと質問。
この他に防衛副大臣として答弁に立つ。
【民主】
高木義明氏(1区)(18)
09年2月、予算委第五分科会で原爆症の新しい認定基準について「被曝線量を考慮してというのはいかがなものか」。
06年2月、国土交通委で「整備新幹線は税金のばらまきだという意見が散見されるが、必ずしもそうは思わない。西九州ルートにしてもたいへんな課題も残っているが着々と進めていくべきだ」など。
この他に船舶や海運、海賊対策、港湾などについて質問。
山田正彦氏(3区)(33)
07年6月、内閣委で「急激にここに来てパチンコホールの倒産が起こってきたのは何が原因か」。
07年5月、農林水産委でカネミ油症事件について「厚労省に責任がありながら放置してきて、ようやく仮払いだけは少しだけという態度で本当に問題は解決できない」などと質問。
この他に主要作物の生産農家への交付金支給制度導入を盛り込んだ民主の「農政改革基本法案」では提出者代表として06年3月の本会議で趣旨説明。
(この項終わり。遠藤雄司、枝松佑樹、波多野陽、大隈崇が担当しました)