きょうの社説 2009年9月1日

◎北陸選出議員へ 党派超え新幹線でスクラムを
 衆院選で議席を得た北陸3県関係の国会議員に求めたいのは、党派を超え、北陸新幹線 の推進に向けてスクラムを組むことだ。民主党の鳩山由紀夫代表は選挙期間中、金沢での街頭演説で、14年度末の北陸新幹線金沢開業について「新幹線が来なくなるような話はない。安心してほしい」と述べ、新幹線整備を推進する考えを強調した。この約束を確実に果たしてもらうためにも、北陸選出の民主、自民両党関係者が党利党略ではなく、地域の利益を最優先して、互いに協力し合う必要がある。

 民主党は福井延伸について、明確な態度を示していない。岡田克也幹事長は7月、富山 市で行った会見で、公共事業などの歳出見直しに関連して整備新幹線も例外にしない考えを示し、関係者に衝撃を与えた。福井県の小選挙区で自民党が3議席を独占したのは、「民主党政権になれば、福井延伸はない」とするネガティブキャンペーンが影響したとの見方もあり、岡田発言が尾を引いた可能性が指摘されている。

 民主党圧勝の全国情勢のなか、北陸3県で自民党が意外なほど健闘したのは、少なから ぬ数の有権者が民主党に票を投じれば、新幹線開業が遅れると危惧したからではないか。ほどなく誕生する民主党政権下で、北陸新幹線の整備を遅らせないために、北陸3県は、より一層の連携強化が求められる。

 今選挙では、北陸3県関係の国会議員が多数当選した。民主党は小選挙区で3氏が当選 、比例では4氏が復活当選したほか、比例単独で2氏の計9氏が議席を得た。自民党は小選挙区で6氏が当選、比例では3氏が復活当選し、民主党と同数の9氏が議席を確保した。北陸の声を国政に届ける議員が増えたのは心強い。

 民主党は公共事業の拡大には慎重な態度を示してきたが、北陸にとって新幹線は死活的 に重要である。地元に利益をもたらす事業であり、他の公共事業と同一に扱ってほしくない。新幹線を無駄な公共事業の代名詞のように言う不勉強な中央のマスコミや議員などに、新幹線の有用性を訴えていくのも北陸選出議員の役目である。

◎消費者庁発足 政権移行の混乱避けたい
 1日に発足する消費者庁は、省庁の縦割りを排し、消費者行政を一元化する重要な役割 と責任を担っている。産業振興や業界育成だけでなく、消費者本位の行政へと霞が関の発想を変える大きな意義を持つが、気がかりなのは、衆院選の結果を受け、自公政権から民主党を中心とする政権へと代わる政治の移行期間に船出することである。

 民主党は初代長官に官僚OBが起用された段階から「官僚主導人事」と反発し、政権を 取れば組織運営を含めて見直す方針を示していた。消費者庁は今年5月に与野党の修正協議を経て設置関連法が成立しており、難産の末にできた仕組みや機能が十分に発揮できるよう導いていくのが次期政権の責任である。政権交代に伴う混乱はできるだけ避けたい。

 消費者庁は家庭用機器の事故や食品偽装、冷凍ギョーザ事件などで役所が十分に対応で きなかった反省を踏まえて設置された。消費者行政に関する情報を集約し、農林水産、経済産業など担当各省へ勧告する権限を持つ。定員は200人で、有識者による監視機関「消費者委員会」も同時に設立される。

 当初は10月の発足を目指していたが、麻生太郎首相が6月に前倒しを指示し、大慌て で準備が進められた。総選挙を控え、消費者重視の姿勢を訴える狙いだったが、全国共通のホットラインの完全稼働が11月以降にずれ込んだほか、地方の相談窓口となる消費生活センターも十分に整っていない。見切り発車の側面は否めず、走りながら態勢を整えることになる。

 民主党は幹部人事のほか、庁舎施設となる民間ビルに関しても、年間8億円を超える高 額賃料を理由に既存庁舎への移転を検討する方針である。「消費者重視」は民主党の基本スローガンの一つであり、幹部人事の「脱官僚」も譲れぬ線かもしれない。

 だが、一からすべてをひっくり返すような見直しなら混乱必至であり、消費者行政の「 司令塔」が出足からつまずくことにもなりかねない。消費者庁を当初の理念通りに機能させることは民主党政権の今後を占う試金石にもなろう。